甲南女子大学人間科学部・心理学講演会 2006年6月20日(火)

北岡 明佳(立命館大学文学部)

2006/6/16より


要旨  この10年ほどで錯視研究は大いに進歩した。従来錯視と言えば形の錯視のことであったが、明るさの錯視や色の錯視だけでなく、動きの錯視などの研究も大きく進歩した。これらの状況を概観する。


「タイムトンネルショー」

リングが回転して見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (February 24)


●錯視とは視覚性の錯覚のことであり、錯覚とは実在する対象の真の特性とは異なる知覚のことである。

●錯視には、形の錯視(幾何学的錯視)、明るさの錯視、色の錯視、運動視の錯視などがある。

錯視全般の分類(ウェブページ)   錯視のカタログ(ウェブページ)


1. 幾何学的錯視(形の錯視)


幾何学的錯視(形の錯視)(プリント)


「トリビアの泉」(2006年6月14日)のネタ

ジャストロー錯視(今井省吾先生画)


「錯視の科学ハンドブック」より


ジャストロー錯視(Jastrow illusion)・・・同じ大きさの弧を図のように並べると,弧の中心の側に置いた図形がより大きく見える。Robinson(1972 / 1998)によれば実際にはヴントの図形であり、ジャストローのオリジナルの図形は片側がしぼんだ形をしている(Jastrow, 1891)(口絵80)。そのため、ヴントの大きさ錯視(Wundt’s area illusion)、あるいはヴント・ジャストロー錯視(Wundt-Jasrow illusion)という表現が試みられたが、錯視の名称は単純なものが好まれるため、定着しなかった。なお、Robinson(1972 / 1998)は引用文献としてMüller-Lyer(1889)を示しているが、彼はヴントを引用していないし、ヴントの錯視の論文は1898年刊なので、ジャストロー錯視はミュラー・リヤーの作と考えてよい。この混乱の原因は、Titchener(1901)が166ページのFig.48でジャストローの台形錯視(口絵79)とジャストロー錯視とを並べて、前者をミュラー・リヤーの図形、後者をヴントの図形としたことによると思われる。前者はMüller-Lyer(1889)にはなく、Wundt(1898)には載っているので、これは単なるティチェナーの取り違えであろう。

錯視の科学ハンドブック」より


「トリビアの泉」(2006年5月17日)のネタ

 

杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー
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ーナマ杏ーナマ杏ーナマ杏ーナマ杏ーナマ杏
ーナマ杏ーナマ杏ーナマ杏ーナマ杏ーナマ杏

杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー
杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー

(詠み人知らず)



アロマ企画アロマ企画アロマ企画アロマ企画
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画企マロア画企マロア画企マロア画企マロア
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アロマ企画アロマ企画アロマ企画アロマ企画
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(詠み人知らず)



コニア画コニア画コニア画コニア画コニア画コニア画
コニア画コニア画コニア画コニア画コニア画コニア画

画アニコ画アニコ画アニコ画アニコ画アニコ画アニコ
画アニコ画アニコ画アニコ画アニコ画アニコ画アニコ

コニア画コニア画コニア画コニア画コニア画コニア画
コニア画コニア画コニア画コニア画コニア画コニア画

(詠み人知らず)



金正日アフロ金正日アフロ金正日アフロ
金正日アフロ金正日アフロ金正日アフロ

ロフア日正金ロフア日正金ロフア日正金
ロフア日正金ロフア日正金ロフア日正金

金正日アフロ金正日アフロ金正日アフロ
金正日アフロ金正日アフロ金正日アフロ

(詠み人知らず)



科研交付科研交付科研交付科研交付科研交付
科研交付科研交付科研交付科研交付科研交付

付交研科付交研科付交研科付交研科付交研科
付交研科付交研科付交研科付交研科付交研科

科研交付科研交付科研交付科研交付科研交付
科研交付科研交付科研交付科研交付科研交付

(北岡作)




新井先生のページ(文字列が傾いて見える錯視のおそらく最初の研究レポートを含む)

小原未紗 (2005) 文字列が傾いて見える錯視における水平成分の役割 立命館大学文学部(心理学専攻)2005年度卒業論文



ポップル錯視

Popple, A. V. and Levi, D. M. (2000) A new illusion demonstrates long-range processing. Vision Research, 40, 2545-2549.

Popple, A. V. and Sagi, D. (2000) A Fraser illusion without local cues? Vision Research, 40, 873-878.

(小原さんの作品というか実験結果による文字列が傾いて見える錯視群は、彼女が査読論文として仕上げる可能性がある関係で、ここには掲載していませんが、錯視量の多いものがいっぱいあります)

「オランダ高層ビル高層階広がり錯視」

寸胴のはずなのに、ビルの上の方に行くほど広く見える。

2005年3月31日
Copyright Stephen G. Murray 2005 (March 31, 2005)

イギリス人Steveによる。ロッテルダムにて。

北岡明佳のコメント: この錯視を基本図形にすると下図の通り。垂直な棒が、左から、右・左・右・左・右に少し傾いて見える。(動く錯視も入っているなあ)


「膨らみの錯視」

市松模様の床が膨らんでこちらにせり出しているように見えるが、物理的にはすべて正方形で描かれており、感じられる丸みは錯視である。

Copyright A.Kitaoka 1998



「クッション」

すべて長方形か正方形でできているが、丸みや立体感が感じられる。

Copyright A.Kitaoka 1998
(c)北岡明佳 2002 「トリックアイズ」 (カンゼン刊)


「旗」

すべて正方形でできているが、はためいて見える。

Copyright A.Kitaoka 1998
(c)北岡明佳 2002 「トリックアイズ」 (カンゼン刊)


「アトランティス」

すべて正方形でできているが、膨らんで見える。動きの錯視もある。

Copyright Akiyoshi.Kitaoka 2006 (February 24)


「カメ」

垂直・水平のエッジが傾いて見える。

Copyright A.Kitaoka 1999


「月明かりに照らされた生まれたばかりのカメ」

垂直・水平に描かれたカメの境界が傾いて見える(縁飾りエッジの錯視)*。また、カメの集団が波打って動いて見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (June 17)

*Kitaoka, A., Pinna, B., and Brelstaff, G. (2004). Contrast polarities determine the direction of Café Wall tilts. Perception, 33, 11-20.

ダリの作品みたいにタイトルが長くなってしまった。


「亀の回回回回回回転」

図で6つある「回」という字は、紫と黄の要素図形を正方形状に配列してあるのだが、ひずんで見える(縁飾りエッジの錯視)*。また、回という字が動いて見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (June 20)

*Kitaoka, A., Pinna, B., and Brelstaff, G. (2004). Contrast polarities determine the direction of Café Wall tilts. Perception, 33, 11-20.

カメというよりワタリガニ?


縁飾りエッジの錯視


新しい幾何学的錯視が多く載っている論文・書籍

Kitaoka, A. (1998). Apparent contraction of edge angles. Perception, 27, 1209-1219.

Kitaoka, A., Pinna, B., and Brelstaff, G. (2001). New variations of spiral illusions. Perception, 30, 637-646.

Kitaoka, A., Pinna, B., and Brelstaff, G. (2004). Contrast polarities determine the direction of Café Wall tilts. Perception, 33, 11-20.

北岡明佳 (2005) トリック・アイズ グラフィックス 東京:カンゼン 

北岡明佳 (印刷中) 錯視の楽しみ方 京都:化学同人 (2007年1月刊行予定)


2. 明るさの錯視


明るさの錯視(プリント)


ホワイト効果

White, M. (1979) A new effect on perceived lightness. Perception, 8, 413-416.


One of Gilchrist's illusions

Articulated surrounds enhance simultanous brightness contrast. The inner square in the left image appears to be lighter than the one in the right image.

Gilchrist, A., Kossyfidis, C., Bonato, F., Agostini, T., Cataliotti, J., Li, X., Spehar, B., Annan, V., and Economou, E. (1999) An anchoring theory of lightness perception. Psychological Review, 106, 795-834.

Gilchrist, A. and Annan, V. Jr. (2002) Articulation effects in lightness:Historical background and theoretical implications. Perception, 31, 141-150.

One of my lecture pages demonstrating this illusion (in Japanese)


One of Adelson's illusions

Although gray diamonds are identical, there appear to be light-gray ones and dark-gray ones.

Adelson, E. H. (1993) Perceptual organization and the judgment of brightness. Science, 262, 2042-2044..

Adelson, E. H. (2000) Lightness perception and lightness illusions. In M. Gazzaniga (Ed.), The New Cognitive Neurosciences, 2nd ed. Cambridge, MA: MIT Press. (pp. 339-351)

Professor Adelson's page


Logvinenko illusion

Although gray diamonds are identical, there appear to be light-gray ones and dark-gray ones.

Logvinenko, A. D. (1999) Lightness induction revisited. Perception, 28, 803-816.


「エイの詰め合わせ」

エイは正方形で描かれているが、形がゆがんで見える(ずれたグラデーションの錯視)*。そのほか、暗いエイの目は明るく見え、明るいエイの目は暗く見えるが、同じ輝度のグラデーションである。また、灰色の垂直・水平線が場所によって明るく見えたり暗く見えたりする明るさの錯視(ログヴィネンコ錯視?)も含まれている。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (June 12)

*Kitaoka, A. (1998). Apparent contraction of edge angles. Perception, 27, 1209-1219.


錯視的階段状ゲルプ効果


3. 色の錯視


色の錯視(プリント)


ロレアル講演2005


色の錯視3


水彩効果(water color effect)

Pinna, Brelstaff and Spillmann, 2001; Pinna, Werner and Spillmann, 2003


「水彩効果の拡大」

本当は白なのに淡いオレンジ色のように水彩効果のかかった領域が拡大して見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (April 12)


4. 静止画が動いて見える錯視


静止画が動いて見える錯視の分類(ウェブページ)


「蛇の回転」

蛇の円盤が勝手に回転して見える。

Copyright A.Kitaoka 2003 (September 2, 2003)

蛇の回転のページ
蛇の回転・錯視量増強版
 蛇の回転・フリッカーによる錯視量増強版
蛇の回転・いろいろ

基本錯視を説明した論文(最適化型フレーザー・ウィルコックス錯視)(PDF)


「蛇の拡大」

蛇のディスクが拡大して見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (May 25)


「蛇の回転」には見えない人が少数いる。

VSSでの調査

放送大学面接授業での調査


最適化型フレーザーウィルコックス錯視の分類


最適化型フレーザー・ウィルコックス錯視 Type I


「オバケ」

「目」が拡大して見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (February 25)

拡大・縮小錯視4


「ぎんなん」

ぎんなんのリングが回転して見える。

Copyright A.Kitaoka 2004 (6/25)


「桃の回転2」

桃のリングが回転して見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (February 17)


「エンドウマメの蛋白質」

マメが動いて見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (February 21)


「蛇の回回回回回回転」

図で6つある「回」という字は、青と黄の要素図形を正方形状に配列してあるのだが、ひずんで見える(ずれたエッジの錯視)*。また、回という字が動いて見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (June 13)

*Kitaoka, A., Pinna, B., and Brelstaff, G. (2004). Contrast polarities determine the direction of Café Wall tilts. Perception, 33, 11-20.


最適化型フレーザー・ウィルコックス錯視 Type IIa


「蛇の回転・三次元風」

ディスクがひとりでに回転して見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (May 30)


「虫君」

虫が左右に動いて見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (May 25)


「カレイ」

中央部分が右に動いて見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (May 1)


「コンピュータワーム」

虫が動いて見える。

Copyright A.Kitaoka 2005 (April 19)


「雷さん」

太鼓のリングが時計回りに回転して見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (May 22)


「レモンの回転」

何もせずながめているだけでリングが回転して見える。一方、まばたきをするとそれとは反対方向に回転して見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2005 (November 6)


中心ドリフト錯視


「八重桜」

八重桜が拡大して見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (April 29)

サクラ2


「回遊」

内側の魚は時計回りに、外側の魚は反時計回りに回転して見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (April 28)


「サクラの回転」

(リメーク版)

サクラの花びらのリングが回転して見える。外側は反時計回り、内側は時計回りである。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2005 (1/26)


その他の動く錯視


「ブルートレイン」

上半分は右に、下半分は左にゆっくり動いて見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (March 21)

動く錯視4


「保護色」

中の領域が動いて見える。

Copyright A.Kitaoka 2004 (7/16)


「雨」

中の雨が動いて見える。

Copyright A.Kitaoka 2005 (July 2)

2000年作品のリメーク


「桃の回転」

桃のリングが回転して見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (February 17)


仮現運動(apparent movement)

A circle appears to move to and fro.


The eye appears to shift laterally.


Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (March 21)

Decrease in apparent movement

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (March 21)

Apparent movement with speed lines (motion lines)

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (March 2)


「高速どんぐるりん」

どんぐりの輪が高速に回転して見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (February 16)

普通の「どんぐるりん」↓

+



「蛇のフィギュアスケート」

円盤が高速で回転しているように見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (February 22)


「ルーレット」

リングが回転して見える。回転方向は一定ではなく、時々切り替わる。2枚の画像でできている。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (February 4)


「床屋の乱立・アニメ版」

各リングが回転して見える。回転方向は一定ではなく、時々切り替わる。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (January 13)


まとめ

錯視研究は、20世紀末から21世紀初頭にかけて、IT革命の余波によって、中興の時代を迎えている。錯視研究がどこへ行くのか誰にもわからないが、それは皆さんの双肩にかかっているのかもしれない。


立命館大学


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