since September 23, 2007


 


 北岡が講義している情報処理心理学 I において、2007年10月12日(金)、受講生の皆様に協力して頂いて、「『蛇の回転』の錯視は若いほどよく見える」という仮説を調べるために、「蛇の回転」錯視が見えるかどうかを調査した。図はA4版の用紙に印刷したものを配布した(エプソン写真用紙使用)。

 前回や前々回(仙台育英高校の皆様と尼崎市にての調査)の図示の様式に従うと、結果は下図の通りであった。87名のご協力を頂いた。そのうち、19歳の方は15名、20歳は36名、21歳は23名、22歳は9名、23歳は3名、43歳の方が1名であった。


評定値3は「よく動いて見える」、2は「動いて見える」、1は「わずかに動いて見える」、0は「動いて見えない」である。



 今回も年齢の幅が狭いので19歳から23歳までをプールするとともに、43歳の方のデータをはずして、評定値の割合を示したのが下図である。「蛇の回転」がよく動いて見えると報告した人が4分の3以上であった。今回は、この錯視は見えないと報告した人はいなかった。


評定値3は「よく動いて見える」、2は「動いて見える」、1は「わずかに動いて見える」、0は「動いて見えない」である。



 前回の仙台育英高校の皆様にお願いした時は 2% の方に錯視が起きなかったが、仮に若い人に錯視が起きない確率が2%だとしても、87人中0人となる確率は低くない(17%くらい?)ので、「大学生はすべてこの錯視が見える」と結論することはできない。錯視が見えない人はいなかった、という点を除けば、前回の仙台育英高校の皆様との違いは特に認められなかった。すなわち、「蛇の回転」錯視の見え方は、大学生と高校生では差がないようであった。すなわち、若い人には「蛇の回転」の錯視量が多い人が多かった。

 この錯視が見えなかった方へ(今回はいなかったけど)。講義でも申しました通り、個人差ですので、心配しないで下さい。錯視が見えた方がたぶん面白いのですが、仕方ないです。私にも、言われている通りに見えない錯視があります。どうぞ、他の見える錯視を楽しんで下さい。


 今回のデータ(大学生の皆様)に、前回のデータ(仙台育英高校の皆様)、前々回のデータ(尼崎の高齢者の皆様)、前々々回のデータ(難波市民センターの皆様)、前々々々回のデータ(放送大学面接講義の皆様)を込みにすると、下図のようになった。若い人のデータで「よく動いて見える」と回答した人が多かったのと、高齢者に「動いて見えない」という回答が少なくなかったことから、「蛇の回転」錯視と年齢の相関係数は r = -.46 と絶対値が大きく、この相関は統計学的に有意(p < .01)であった。「若いとみんな見えて、トシを取ると見えなくなる」という関係にあるわけではないが、サンプル数が十分あると無視できない強さで逆相関が現れる(しかも、その年齢に関係した性質の強弱は生活の質にはまったく影響がない)ということが、ほぼ確実になった。何を意味しているんだか・・・

 情報処理心理学 I の受講生の皆様、ご協力ありがとうございました。なぜこの錯視と年齢の間に逆相関があるのかをうまく説明できる自信がある、という受講生がいましたら、北岡までご連絡下さい。視力説は今回も数人の方が唱えてくれましたが(署名式にしておけば成績に斟酌できたなあ・・・)、講義で説明致します通り、あまり有力とは言えないです。 <2007年10月17日>


 の講の予 


2007年10月27日 東北学院大学 「錯覚の心理学」 東北学院大学教養学部特別講演会
2007年12月1日 立教大学 「錯視と芸術」 RARC公開講演会
2008年2月2日 東京大学(数理研究科) タイトル未定 非線形数理東京フォーラム・東大COE共催 「人と自然の数理」・イリュージョンの世界
2008年2月10日か11日 S市博物館 タイトル未定 催事名称未定
2008年2月18日 東京大学(医学部) 「錯視と脳」 医学共通講義Ⅲ 機能生物学入門
2008年3月4日 場所未定(首都圏) タイトル未定 立体映像産業推進協議会(立体協)
2008年5月17日 大阪商業大学 タイトル未定 ギャンブリング・ゲーミング学会

(写真は、仁和寺)


目にも不思議なけしごむのページのアクセス数が、10月8日22時頃に1000件を超えた。これまでに1日平均100件のアクセスというわけで、他の新造ページから比較するとたいへんよくアクセスされている。この錯覚ニュース7のページよりハイペースである。グーグルで「けしごむ」で検索すると24位であった(10月9日には15位)。1位はシードの消しゴム博物館。 <2007年10月8日>

トリック・アイズ ブレイン2 や トリック・アイズ デザイン のページも見て下さいよう。


 


 立命館大学衣笠キャンパスで行なわれた大学模擬講義において、2007年10月4日(木)、仙台育英学園高等学校2年生(16~17歳)の皆様を対象に、「心理学について」というタイトルで講演を行なった。その際、受講者の皆様に協力して頂いて、「『蛇の回転』の錯視は若いほどよく見える」という仮説を調べるために、「蛇の回転」錯視が見えるかどうかを伺った。図は通常通りとし、A4版の用紙に印刷したものを配布した(エプソン写真用紙使用)。

 前回(尼崎市にての調査)の図示の様式に従うと、結果は下図の通りであった。84名のご協力を頂いた。そのうち、16歳の方が43名、17歳の方が40名であった。64歳の方のデータがあるが、これは引率の先生であろう。


評定値3は「よく動いて見える」、2は「動いて見える」、1は「わずかに動いて見える」、0は「動いて見えない」である。



 今回は年齢の幅が狭いので16歳と17歳はプールするとともに、64歳の方のデータをはずして、評定値の割合を示したのが下図である。「蛇の回転」がよく動いて見えると報告した人が4分の3以上であった。これまでの例では、「蛇の回転」がよく動いて見えると報告した人は5割以下であったから、平均すると高校生の「蛇の回転」の錯視量は成人よりも多い可能性がある。


評定値3は「よく動いて見える」、2は「動いて見える」、1は「わずかに動いて見える」、0は「動いて見えない」である。



 一方で、2人の方が、この錯視は見えないと報告した。割合としては2%で、これまで錯視が起こらない人は5%程度と見積もっていたから、それよりは少ない。しかしながら、「この錯視が起こらなくなる原因は年齢が高いことである」という仮説は棄却された。

 この錯視が見えなかった方へ。講義でも申しました通り、個人差ですので、心配しないで下さい。錯視が見えた方がたぶん面白いのですが、仕方ないです。私にも、言われている通りに見えない錯視があります。どうぞ、他の見える錯視を楽しんで下さい。


 今回のデータ(高校生の皆様)に、前回のデータ(尼崎の高齢者の皆様)、前々回のデータ(難波市民センターの皆様)、前々々回のデータ(放送大学面接講義の皆様)を込みにすると、下図のようになった。今回のデータで「よく動いて見える」と回答した人が多かったのと、高齢者に「動いて見えない」という回答が少なくなかったことから、「蛇の回転」錯視と年齢の相関係数は -.43 と高く、この相関は統計学的に有意(p < .01)であった。

 仙台育英学園高等学校の皆様、ご協力ありがとうございました。立命館大学は皆様をお待ちしております。皆様が大学生としていらっしゃるまでには、10月にもクーラーのスイッチを入れられるよう努力致します。 <2007年10月4日>


東北学院大学教養学部特別講演会のお知らせ

東北学院大学教養学部特別講演会 「錯覚の心理学」 (北岡の講演) が、来たる10月27日(土)、東北学院大学泉キャンパス 1号館4階大会議室(仙台市泉区天神沢2-1-1)において開催されます(14:30~15:30)。当日は、教養学部オープンキャンパス、ならびに泉キャンパス祭が開催されます。 <2007年9月29日>


 


 尼崎市高齢者生きがい促進協会(尼崎市立総合老人福祉センター)の総合学習教室「温故知新」において、2007年9月20日(木)、高齢者(60歳以上)の皆様を対象に、「錯覚の心理学」というタイトルで講演を行なった。その際、受講者の皆様に協力して頂いて、「『蛇の回転』の錯視は高齢になると見えなくなる」という仮説を調べるために、「蛇の回転」錯視が見えるかどうかを伺うとともに、年齢の情報も頂いた。用いた図はA3版の用紙に印刷したもので、いつも使用するA4版の図よりは大きかった。

 結果は下図の通りで、56人中12人(21%)の方には「蛇の回転」は見えないという結果が得られた。これまで、若い人を中心にデータを集めると、「蛇の回転」錯視が見えない人は5%程度であったので、年齢が高くなると「蛇の回転」錯視が見えない人が多くなるということが確認された。


評定値3は「よく動いて見える」、2は「動いて見える」、1は「わずかに動いて見える」、0は「動いて見えない」である。


 しかしながら、この被験者集合の中では、年齢が高いほど「蛇の回転」が見えにくくなるという傾向は認められなかった。たとえば、最高齢の方は88歳であったが、「よく動いて見える」と報告した。「動いて見えない」と報告した人がより高齢側に偏っているという傾向も、特になかった。

 ここで、2006年10月21日に平成18年度なんば市民セミナー・なるほど納得!おもしろ雑学講座の受講者と市民センター内の他の受講者で行なったデータ(こちらです)を、今回のデータと込みにしたものが下図である。本当は測定条件が違うので一緒にできないのであるが、参考図ということで示しておきたい。この図からは、60歳までは「蛇の回転」錯視が見えない人はいないのに対して、60歳を超えると5人に1人が見えなくなる、ということがわかる。しかし、加齢とともに量的低下があるとは言えなかった。

 実際には60歳未満でも「蛇の回転」錯視が起きないと報告する人はいる。しかし、その頻度は少なく、私の経験上は「20人に1人」程度である。今回の60歳以上の「5人に1人」が安定した数値であるなら、60歳を境に「蛇の回転」錯視が起きない人が4倍となるということである。しかし、それ以外の人には影響が少ない、というデータでもある。一体、60歳というラインに何があるのだろうか。事実が明らかになるにつれて、謎は深まった。

 最後に、ご協力頂きました尼崎市の受講者の皆様に厚くお礼申し上げます。大変貴重なデータとなりました。なお、「蛇の回転」が動いて見えなかった皆様に申し上げますが、何かの努力によってその錯視が見えるようになったという話はあまり聞きませんし(成功例はありますが、そこまでやらなくても・・・)、その錯視が見えないことによる不利などは考えられませんので、他の見える錯視をお楽しみ頂ければと思います。
 末筆ながら、皆様のますますのご活躍と、ご学問の発展をお祈り申し上げております。残暑が続きますが、どうぞご自愛下さい。
立命館大学文学部 北岡 明佳

<2007年9月23日(日)>


錯覚ニュース6 (2007年6月~2007年9月) ニュートン別冊「錯視 完全図解」発売など

錯覚ニュース5 (2007年1月~2007年5月) 日本認知心理学会・独創賞受賞など

錯覚ニュース4 (2006年6月~2006年12月) ロレアル色の科学と芸術賞受賞など

錯覚ニュース3 (2006年1月~2006年5月) トリビアの泉で文字列傾斜錯視など

錯覚ニュース2 (2005年4月~2005年12月) 東大駒場博物館で錯覚展など

錯覚ニュース1 (2002年~2005年3月) 錯視の科学ハンドブック発売など





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