ギャンブリング*ゲーミング学会
第5回シンポジウム
2008年5月17日(土)
大阪商業大学 本館6階 大会議室にて

目の錯覚はなぜおもしろいのか?

錯視のエンターテインメント性はどこから来るのか?


北岡 明佳(立命館大学 文学部 心理学専攻email

2008/5/9より


空間の錯視

「屋島のおばけ坂」

手前は下り坂、奥は上り坂に見えるが、手前も上り坂である。屋島ドライブウェイ(香川県高松市)にある有名なおばけ坂である。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (May 7)
撮影日は、2008年5月6日(月)

坂道錯視のページ(對梨成一氏のホームページ)

屋島ドライブウェイのホームページ

cf. Bressan, P., Garlaschelli, L. and Barracano, M. (2003) Antigravity hills are visual illusions. Psychological Science, 14, 441-449.




上り坂、下り坂、上り坂ぢゃないんだよ。



上から見ると、下り坂の向こうに緩やかな上り坂が見えるが、これも下り坂。


実測地と説明については、ニュートンムック別冊「錯視 完全図解」の138~139ページの「おばけ坂 上り坂が下り坂に!?」(對梨成一氏協力)をご覧下さい。 


 北岡による縦断勾配錯視の説明
<2008年5月12日>

知覚された水平線の位置に対して、道の消失点が上に来る(上り坂と知覚)か下に来るか(下り坂と知覚)の違いによるものでは?



上り坂と思ったら(左図)、実は下り坂(右図)。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (May 12)



手前の坂は下り坂と思ったら(左図)、実は上り坂(右図)。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (May 12)


あるいは、他に手がかりがなければ、凹状に勾配が変化するところでは、デフォルトで近坂が下り、遠坂が上りに知覚されるのかもしれない。その説に合わせると、凸状に勾配が変化するところでは、他に手がかりがなければ、デフォルトで近坂が上り、遠坂が下りに知覚されるのかもしれない



そういう説明は既にあるかもね。見つけたら教えて下さい。


動きの錯視

「踊るハート達」

ハートが動いて見える。めがねをかけている人は、めがねを動かすとよく見えるかもしれない。離れたところから見ると、明るくなった時のハートは白のランダムドットより手前に見え、暗くなった時のハートは奥に見える人が過半数と予想される。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (December 20)

文献

Kitaoka, A. and Ashida, H. (2007) A variant of the anomalous motion illusion based upon contrast and visual latency. Perception, 36, 1019-1035.

Kitaoka, A, Kuriki, I. and Ashida, H. (2006) The center-of-gravity model of chromostereopsis. Ritsumeikan Journal of Human Sciences, 11, 59-64. PDF



モノクロでOK


配布物
「踊るハート達」 (MS-Word ファイル)
北岡明佳 (2006) 色が強くなる錯視 A・F・Tジャーナル, 31 (Summer), pp. 01.

「踊るハート」の説明


「蛇の回転」

蛇の円盤が勝手に回転して見える。

Copyright A.Kitaoka 2003 (September 2, 2003)

(配布物)


「タイムトンネルショー」

リングが回転して見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (February 24)


「ジグザグ虫」

上から一番目と三番目のブロックは右に、二番目と四番目は左に動いて見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (April 16)


(北岡による勝手な)
最適化型フレーザーウィルコックス錯視の最新の分類

(VSS DemoNight 2007)


参考 北岡明佳著 「だまされる視覚 錯視の楽しみ方」


蛇の回転と年齢が指摘されています。よろしければ、調査にご協力下さい。

この錯視が見えなかった方へ。個人差ですので、心配しないで下さい。錯視が見えた方がたぶん面白いのですが、仕方ないです。私にも、言われている通りに見えない錯視があります。どうぞ、他の見える錯視を楽しんで下さい。



<以下、錯覚ニュース9より>


 


 立命館大学衣笠キャンパス・以学館5号教室において、付属校である(北海道の)立命館大学慶祥中学校1年生のご一行様に、北岡は「立命館で錯覚を研究する」というタイトルで大学模擬講義(講演のこと)をした(2008年3月5日(水))が、その時の生徒さん(および引率の先生)に協力して頂いて、「『蛇の回転』の錯視は若いほどよく見える」という仮説を調べるために、「蛇の回転」錯視がどの程度見えるかを調査した。図はA4版の用紙に印刷したものを配布した(キヤノン・普通紙・両面厚口に、FUJI XEROX DocuPrint C3540に対して最適化したバージョンを印刷)。

 これまでの図示の様式に従うと、結果は下図の通りであった。183名のご協力を頂いた。この調査では、中学1年生向けの模擬講義のため、年齢は12歳と13歳に集中した。成人6人は引率の先生あるいはコーディネート担当の事務職員と考えられる。「蛇の回転」錯視と年齢の相関係数は、 r = .00 で、「蛇の回転」錯視の強さと年齢との間には、今回の調査では相関はなかった。年齢層が偏っていたので、当然の結果とも言える。


評定値3は「よく動いて見える」、2は「動いて見える」、1は「わずかに動いて見える」、0は「動いて見えない」である。



 評定値の割合を示したのが下図である。成人のデータをはずし、中学1年生のデータのみの度数分布図である。大学生や高校生だけで調べたデータと比較すると、大体同じ傾向である。すなわち、4分の3程度が「よく動いて見え」、少数ながら「動いて見えない」人がいた。今回の標本の大きさは177と大きいことと、生徒さんが大変協力的であったことを考えると、このデータの信頼性は高いと考えられる。すなわち、若い人でもこの錯視が起きない人が少数いることがわかっていたが、その割合は2%程度(50人に1人)であることが、強く示唆された。

 一方、過去のデータでは、60歳以上の高齢者では20%程度(5人に1人)であった。だからと言って、この錯視の見えと老化の間には関係があるとは言えない。現時点で言えることは、この錯視が見えない人は若年層から一定の割合で存在し、年齢が上がるとともにその割合は増加するが、高齢者でもこの錯視が見えない人は少数派のままにとどまる、という性質があるということである。また、この錯視が見えない人から、何らかの問題が報告されたことはないという事実も強調しておく必要がある。これに関連して、いわゆる色覚異常の方でこの錯視が見えない方が、色覚異常とこの錯視に何らかの関連性があるのではないかと示唆して下さったことがあったが、それはこの錯視が見えない人が年齢とともに増加することとは矛盾する(色覚異常は生得的な特性と考えられるので)。


評定値3は「よく動いて見える」、2は「動いて見える」、1は「わずかに動いて見える」、0は「動いて見えない」である。


 この錯視が見えなかった方へ。個人差ですので、心配しないで下さい。錯視が見えた方がたぶん面白いのですが、仕方ないです。私にも、言われている通りに見えない錯視があります。どうぞ、他の見える錯視を楽しんで下さい。


 今回のデータに、全回のデータ(東京大学医学部の皆様)、全々回のデータ(静岡科学館る・く・るの来場者の皆様)、前々々回のデータ(「非線形数理東京フォーラム」の来場者の皆様)、前々々々回のデータ(立命館大学の情報処理心理学 I の受講生の皆様)、前々々々々回のデータ(仙台育英高校の皆様)、前々々々々々回のデータ(尼崎の高齢者の皆様)、前々々々々々々回のデータ(難波市民センターの皆様)、前々々々々々々々回のデータ(放送大学面接講義の皆様)を込みにすると、下図のようになった。若い人のデータで「よく動いて見える」と回答した人が多かったのと、高齢者に「動いて見えない」という回答が少なくなかったことから、「蛇の回転」錯視と年齢の相関係数は r = -.40 と絶対値がやや大きく、この相関は統計学的に有意(p < .01)であった。「若いとみんな見えて、トシを取ると見えなくなる」という関係にあるわけではないが、サンプル数が十分あると無視できない強さで逆相関が現れる(しかも、その年齢に関係した性質の強弱は生活の質にはまったく影響がない)。何を意味しているんだか・・・ 少なくとも、通常想定される老化(調節力低下や白内障など)とは関係がない。

 立命館慶祥中学校1年生の皆様、ご協力ありがとうございました。また、『蛇の回転』の錯視が見えないと報告してくれた4名の皆様、模擬講義では肩身の狭い思いをさせて申し訳なかったですが、ありがとうございました。貴重なデータとなります。4名の皆様はこの錯視が見えなくておもしろくないとは思いますが、練習によって見えるようになることは多分ありませんし(輝度の高いディスプレーで見ると見えることがあるらしいですが)、この錯視が見えないことで何か不都合があるわけではありませんので、これからはどうぞ別の見える錯視を楽しんで下さい。 <2008年3月6日>


これなら見える?
(すべて正方形か長方形でできているが、カープが感じられる) 



ギャンブリング*ゲーミング学会 第5回シンポジウムにおける調査結果は、錯覚ニュース10に掲載いたします。


「マクドナルド」

黄色のバーが左右に動いて見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2005 (November 3)


「ガンガゼ 2」

ガクガクして見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (March 12)


「秘密基地」

渦巻きの軌道に沿って何かが駆け抜けるように見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (January 4)


「顔ガクガク錯視いろいろ」

顔がガクガクして見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (May 10)


床屋のポールの錯視(barberpole illusion)


色の錯視

「レモン色の渦巻きとクリーム色の渦巻き」

渦巻きにはレモン色のとクリーム色のと2種類あるように見えるが、どちらも同じ黄色(R255, G255, B0)である。

Copyright A.Kitaoka 2005 (May 22)


「水色と黄緑の渦巻き」

水色の螺旋と黄緑の螺旋があるように見えるが、どちらも同じ色(r = 0, g = 255, b = 150)である。この色の錯視はモニエ・シェベル錯視に近いと思うが、彼らの理論には合わないのかもしれない。

Copyright A.Kitaoka 2003


「緑の渦巻き」

黄緑の螺旋と青緑の螺旋があるように見えるが、どちらも同じ緑である。

Copyright A.Kitaoka 2002
(c)北岡明佳 2002 「トリックアイズ」 (カンゼン刊)


「赤の渦巻き」

赤紫がかった赤い螺旋とオレンジ色がっかった赤い螺旋があるように見えるが、どちらも同じ赤である。

Copyright A.Kitaoka 2002
(c)北岡明佳 2002 「トリックアイズ」 (カンゼン刊)


「青と黄の渦巻き・昼と夜」

左の青と黄の渦巻きは鮮やかに見えるが、右のはダルに(鮮やかさが少なく)見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (January 8)


「ムンカー錯視」

上の列にはオレンジ色と赤紫色の赤があるように見えるが、同じ色である。下の列は黄緑と青緑の2色があるように見えるが同じ色である。ホワイト効果の色相版である。

ムンカー錯視


「小家族」

左の鳩も右の鳩も同じ色なのだが、左の方は黄味がかって見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (March 12)


「四色の犬」

上から1番目と3番目の列の犬は2種類、2番目と4番目の列の犬も2種類いるように見えるが、それぞれ同じ色である。色の土牢錯視である。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (January 5)

参考  北岡明佳著 「トリック・アイズ デザイン」


「犬」

赤い犬は2種類、緑の犬も2種類いるように見えるが、それぞれ同じ赤と緑である。色の土牢錯視である。
別バージョン  別バージョン2

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (January 5)

土牢錯視(dungeon illusion)(Bressan, 2001)とは?

左の「牢屋」の灰色のダイヤモンド形は右のよりも明るく見えるが、物理的には同じ明るさである。

Bressan, P. (2001) Explaining lightness illusions. Perception, 30, 1031-1046.


色の土牢錯視とは?

左の「牢屋」のダイヤモンド形はオレンジ色に、右のは少し紫がかった赤に見えるが、物理的には同じ色である。

引用文献は調査中(ないかもしれない)

色の土牢錯視は雰囲気はムンカー錯視だが、普通に色の同化で説明することも可能だし、ゲシュタルト要因を考えて色の対比というのもあるのかもしれない。

次の犬年は11年後か・・・


「ぐるぐる 6」

それぞれの同心円の内側の4つのリングは同じ色であるが、違う色に囲まれると異なって見える。画面から離れてみた方が効果が大きい。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (January 15)


「酒井の色の対比」

上の正方形の列は同じ灰色に見えるが、左の5つの正方形と右の5つの正方形を入れ換えて下の列に並べてみると、かなり違っていることがわかる。一番下の2つの正方形は外に出してみたところで、左の緑の正方形は右上の5つの正方形と同じで、右のピンクの正方形は左上の5つの正方形と同じである。誘導背景の色に最大の彩度を用いないことがポイントであった。

酒井香澄(「Landの二色法による色再現とBelseyの仮説検証」立命館大学文学部哲学科心理学専攻2002年度卒業論文)の発見をベースにしている。


明るさの錯視

「ロボット」

左の円が右の円よりも明るく見えるが、物理的には同じ明るさである。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2005 (December 10)


ログヴィネンコ錯視

明るいひし形の列と暗いひし型の列が交互に並んでいるように見えるが、同じ明るさである。

Although gray diamonds are identical, there appear to be light-gray ones and dark-gray ones.

Logvinenko, A. D. (1999) Lightness induction revisited. Perception, 28, 803-816.


有名な、エーデルソン先生のチェッカーシャドー錯視


「光る菊」

菊の花の中心が光って見える。

Copyright Akiyoshi.Kitaoka 2005 (April 5)


形の錯視

「クッション」

すべて長方形か正方形でできているが、丸みや立体感が感じられる。

Copyright A.Kitaoka 1998

市松模様錯視


「水路」

平行な水路が交互に傾いて見える(上から左・右・左・右)。水も左右に動いて見える。

Copyright A.Kitaoka 2005 (February 15)


「箱入り娘 3」

左の人は右の人よりもスマートに見えるが、両者はまったく同じ形で同じ大きさの絵である。この錯視は、左の人が描かれている平行四辺形と右の人が描かれている平行四辺形は同じ形で同じ大きさであるという錯視(シェパード錯視)に同化した(キャプチャされた)ものと考えられる。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (April 23)

シェパード錯視(Shepard illusion or table-top illusion):

Shepard, R. N. (1990) Mind sights: original visual illusions, ambiguities, and other anomalies, with a commentary on the play of mind in perception and art. New York: Freeman. (R.N.シェパード著、鈴木光太郎・芳賀康朗訳 (1993) 視覚のトリック:だまし絵が語る「見る」しくみ 東京:新曜社)


文字列が傾いて見える錯視いろいろ


新井先生のページ(文字列が傾いて見える錯視のおそらく最初の研究レポートを含む)

小原未紗 (2005) 文字列が傾いて見える錯視における水平成分の役割 立命館大学文学部(心理学専攻)2005年度卒業論文




ポップル錯視

Popple, A. V. and Levi, D. M. (2000) A new illusion demonstrates long-range processing. Vision Research, 40, 2545-2549.

Popple, A. V. and Sagi, D. (2000) A Fraser illusion without local cues? Vision Research, 40, 873-878


「タイガース螺旋」

黒い太線は同心円であるが、右に回って中心に向かう渦巻きのように見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2003
redrawn on July 14, 2006


「渦巻きワープ」

同心円が左に回転して中心に向かう渦巻きに見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (June 29)

交差角45度のツェルナー錯視

The spiral illusion of the Zöllner illusion:

Kitaoka, A., Pinna, B., and Brelstaff, G. (2001). New variations of spiral illusions. Perception, 30, 637-646.


「赤いホース」

赤い同心円が右に回転して中心に向かう渦巻きに見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (June 26)

The spiral illusion of the Fraser illusion (Fraser spiral):

Fraser, J. (1908) A new visual illusion of direction. British Journal of Psychology, 2, 307-320.

The Fraser illusion of this type:

Skillen, J., Whitaker, D., Popple, A., and McGraw, P. V. (2002) The importance of spatial scale in determining illusions of orientation. Vision Research, 42, 2447-2455.


「渦巻きの詰め合わせ」

同心円のリングが渦巻きに見える。ついでに回転して見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (June 13)


< 幾何学的錯視(形の錯視) >

ミュラー・リヤー錯視

同じ長さの線分の両端に矢羽を付けた場合、内向きに付けると線分は短く見え(上図),外向きに付けると線分は長く見える(下図)。錯視量が非常に多い大きさの錯視である。

(この画像をクリックすると、ミュラー・リヤー錯視の高解像度ファイルがダウンロードできるサイトに跳びます)

エビングハウス錯視
同じ大きさの円でも、小さい円に囲まれると大きく見え(左)、大きい円に囲まれると小さく見える。

エビングハウスの大きさの錯視、あるいはティチェナー錯視ともいう。

new!
デルブーフ錯視・外円の過小視 円の内側に、少し小さい円を描くと、小さく見える。

new!

錯視のカタログのページ

幾何学的錯視(形の錯視)のカタログ(配布物)


顔の錯視

「ウォラストン錯視・クリスマス2007版」

左の顔はこちらを見ているように見えるが、右の顔は向かって右の方向を見ているように見える。しかし、絵としては、両者とも同じ目である。この錯視を視線方向の錯視(Wollaston, 1824)という。なお、原画は若いお兄さん

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (December 21)

Wollaston, W. H. (1824) On the apparent direction of eye in a portrait. Philosophical Transactions of the Royal Society of London, B114, 247-256. (下記山口先生の解説から孫引き)

山口真美 (2006) 乳児に視線はどう見えるのか? 心理学ワールド, 34(特集・視線とコミュニケーション), 5-8.


「上下方向のウォラストン錯視・改良版」

左の顔の目はこちらを見ているように見えるが、右の顔の目はやや上の方向を見ているように見える。しかし、絵としては、両者とも同じ目である。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (December 26)


「視線方向が変わって見えない画像変換」

顔画像を横長・縦長あるいは平行四辺形の形に変換しても、視線方向はあまり変わって見えない。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (December 19)

「視線方向が変わって見える画像変換」

顔画像を平行四辺形以外の形(たとえば台形)に変換すると、視線方向はその奥行き手がかり示す方向に変わって見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (December 19)

(下辺が上辺より短い台形の場合は例外かも)


「さかさま顔の過大視」

上下の顔の大きさは同じであるが、下の方が大きく見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (February 16)

cf. 上視野の過大視、サッチャー錯視




さかさま顔を上に置いても

さかさま顔が大きく見える。


だまし絵

「立命館湖」

立命館大学衣笠キャンパスが水没したように見える。

Copyright A.Kitaoka 2004 (August 14)

ここが水没するようでは京都市街全域水没で~す。もちろん大阪も、神戸も。

実際の風景



北岡の主張: 錯視デザインとだまし絵(あるいはトリックアート)は、アートしては同種で1)、サイエンスとしては別種である2)


1) 錯視デザインとだまし絵は、作品の目的は視覚のメカニズム自体を表現することである。

2) だまし絵は(狭義の)錯視を使っていない!


だまし絵の解説が出た。 <2007年7月13日>

北岡明佳 (2007) だまし絵のつくり方教室 現代のエスプリ(仁平義明(編)「嘘の臨床・嘘の現場」), 481(2007年8月号), 141-155.


1. うかし絵 (陰影による立体感と空間知覚 Shape and space perception from shading and shadowing) → 「トリックアート」によく使われている。

「隠されたジャストローの台形錯視」

上の図の台形が下の図の台形よりも大きく見える(ジャストローの台形錯視)がこれにすぐには気づかないのは、影が物体の空間位置の知覚に及ぼす効果のデモンストレーション(影の位置が違うだけなのだが上図では球が浮いて見える)に注意が取られてしまうためであろう。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (June 29)


2. むりな絵 (不可能図形 impossible figure)

「心的回転実験用不可能図形」

2004/5/8

ペンローズの三角形(Penrose's triangle)

「昼と夜の柱」

面の向きが変わり、図と地も入れ替わる不可能図形である。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (April 24)


3. かえし絵 (反転図形 reversible or ambiguous figure)

古典的な例

「メールボックス」

メールボックスの見えとして、右上から見たもの、右下から見たもの、左上から見たもの、左下から見たものの4つの見えが入れ替わる。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (April 21)

図が左右に拡大して見える錯視もある。

「ルビンの盃・光沢とメガネ付き」

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (April 24)

フィッシュガール(三輪みわ)

シルエット錯視(茅原伸幸)

「マリリンシュタイン」(Marylin Monroe-Einstein hybrid image)(Aude Oliva)


4. さかさ絵 (Upside-down figure)

「おねえさんと怪人」

和洋を問わず昔から人気のある顔の逆さ絵である。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (April 7)

この図は動画です。しばらくお待ち下さい。


5. かくし絵 (Hidden figure)


「十字隠し電球」

右の図に左の図のような十字形が隠れているが、気づくのに時間がかかる。「よい連続の要因」というゲシュタルト心理学の法則を用いた隠し絵。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (April 25)






「クイズ式隠し絵」

この種のクイズは結合探索課題タイプの隠し絵です。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (April 29)


だまし絵的、錯視的扱いの視覚現象

ステレオグラム

「秋の沼の波3D」

平行法でも交差法でも図が波打って見える。

Copyright Akiyoshi.Kitaoka 2006 (August 22)


仮現運動


1フレーム 200ms

「仮現運動・その3」

1回あたりの回転角が小さくなると(この動画では22.5º)、回転が優位になり、往復運動は見えにくくなる(北岡は500msの方は往復運動優位である)。回転は自動的に反転して見えるとともに、好きな方向に転換させることもできる。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (July 26)


1フレーム 500ms


注意の関係した「錯視」

変化の見落とし(change blindness)















「変わったのはどこ?」

2枚の画像が切り替わるたびに、1箇所だけ変化する。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (May 24)




ステレオフューズすれば一発でわかる(該当部分が視野闘争する)。




それでもわからない人向けの動画


「不変化」の見落とし







「変わらないのはどこ?」

Only one image does not change. Which is it?

2枚の画像が切り替わるたびに、8つのうち1つだけ変化しない。それはどこ?

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (May 26)










ブランクなしならすぐわかる。
No change is readily detected without blank.



●錯視とは視覚性の錯覚のことであり、錯覚とは実在する対象の真の特性とは異なる知覚のことである。

●錯視には、形の錯視(幾何学的錯視)、明るさの錯視、色の錯視、運動視の錯視などがある。だまし絵なども錯視に含められることがある。

●生存の役には立たないと思われる現象ほど錯視と呼ばれやすい。

●錯視は、錯視量が多いほど「美しい」。しかし、その科学的根拠は不明である。

錯視全般の分類(ウェブページ)   錯視のカタログ(ウェブページ)  北岡の錯視本(ウェブページ)


ニュートン編集室(編)・北岡明佳(監修) (2007) Newton別冊 脳はなぜだまされるのか? 錯視 完全図解 ニュートンプレス

「蛇の回転」を含む最近の錯視まで網羅して、わかりやすく図解しています。

(2007年10月1日発行 定価:2,415円(税込) ISBN 978-4-315-51803-0) アマゾンのページ


「2 明るさと色の錯視」のキューブの図は、Purves先生の図です。

「3 あらわれたり消えたりする錯視」の図は、きらめき格子錯視(scintillating grid illusion)(Schrauf, Lingelbach and Wist, 1997)の基本図形です(北岡作画)。

Schrauf, M., Lingelbach, B. and Wist, E.R. (1997) The scintillating grid illusion. Vision Research, 37, 1033-1038.

「5」と「6」の図は、ニュートン編集室のデザインです。


 

まとめ

錯視のエンターテインメント性は、錯覚そのものの性質にある。すなわち、対象の「真の性質」と知覚の不一致に気づくことに、エンターテインメント性がある。しかし、それがどうしてエンターテインメント性を生じさせるのかは不明である。

ご清聴ありがとうございました。



北岡の顔
(見るほどのものではない)

京都の風景
(観光の参考に)

立命館の風景
(受験するなら立命館)


 北岡明佳の錯視のページ