から

東北大学情報科学研究科・2008年1月9(水)10:30-12:00
坪川宏先生ご企画

北岡 明佳(立命館大学 文学部 心理学専攻email

2008/1/5より


錯視(visual illusion)とは視覚性の錯覚のことであり、錯覚(illusion)とは実在する対象の真の特性とは異なる知覚のことである。


このように、錯視の定義は簡単なのだが・・・


本日のメニュー

「『顔ガクガク錯視』はさかさま顔では弱い」

左図を見ると、4つ目で口が2つの女性というよりは、観察者の目が落ちつかないかのように、図がガクガクして見える。 すみませーん、この錯視、名前はありますか? 知っている方は文献を教えて下さい。 →北岡にメールする  この「顔ガクガク」錯視は、さかさま顔では弱い(右図)ので、顔特有の錯視であろう。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (December 10)

上下で目の大きさが違って見えるのは、ジャストロー錯視。なお、上下で口の大きさが違って見える錯視は、ジャストロー錯視とは言いにくい。 サッチャー錯視のページはこちら


さらに分析:
 「顔ガクガク錯視」は目だけでは起こらないようであるが、口を正しい位置につければ起こるようである。さらに顔の輪郭をつけると錯視量が増大するようである(下図参照)。


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「顔ガクガク錯視」については、double vision と呼んでいる充実したサイトがあるという報告がありました(Sさん、ありがとう)。double vision あるいは diplopia は日本語では複視と訳され、ものが二重に見える病気のことです。

しかし、顔ガクガク錯視は病気ではないので、複視ではありません。複視ではなく、複視的錯視(illusion of double vision)とか呼ぶのなら、OKと思います。複視的錯視は、オオウチ錯視や蛇の回転などと同様の静止画が動いて見える錯視の一種です。

といずれにしましても、だれが最初にこの現象を発見したのかを知りたいので、さらに情報を求めます。よろしくお願い致します。 <2008年1月12日>

オオウチ錯視

「蛇の回転」(一部)


「サッチャー錯視のイラスト版」

左の図は笑顔の女性を描いたイラストをさかさまにしたもので、右の図は左の図の目と口をそれぞれ上下反転させたものである。右の図を見るとあまり奇妙な感じは受けないが、図をさかさまにして見る(下図)と、かなり奇妙な顔になっていることがわかる。この錯視はサッチャー錯視と呼ばれ、Peter Thompson先生が1980年(サッチャーが首相になった次の年)に発表した。Peterは自分自身の顔でもやっているが、ヒゲまでさかさまにするのは反則では(笑)。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (January 7)

文献(2007年11月、北岡の調査による)

Arnheim, R. (1954) Art and visual perception: A psychology of the eye. Berkeley: University of California Press.

Bartlett, J. C. and Searcy, J. (1993) Inversion and configuration of faces. Cognitive Psychology, 25, 281-316.

Bertin, E. and Bhatt, R. S. (2004) The Thatcher illusion and face processing in infancy. Developmental Science, 7, 431–436.

Boutsen, L. and Humphreys, G. W. (2002) Face context interferes with local part processing in a prosopagnosic patient. Neuropsychologia, 40, 2305-2313.

Boutsen, L. and Humphreys, G. W. (2003) The effect of inversion on the encoding of normal and "thatcherized" faces. Quarterly Journal of Experimental Psychology A, 56, 955-975.

Boutsen, L., Humphreys, G. W., Praamstra, P., and Warbrick T. (2006) Comparing neural correlates of configural processing in faces and objects: an ERP study of the Thatcher illusion. Neuroimage, 32, 352-367.

Carbon, C. C., Schweinberger, S. R., Kaufmann, J. M., and Leder H. (2005) The Thatcher illusion seen by the brain: an event-related brain potentials study. Cognitive Brain Research, 24, 544-555.

Carey, S. and Diamond, R. (1977) From piecemeal to configurational representation of faces. Science, 195 (4275,) 312-314.

Diamond, R. and Carey, S. (1986) Why faces are and are not special: An effect of expertise. Journal of Experimental Psychology: General, 115, 107-117.

Edmonds, A. J. and Lewis, M. B. (2007) The effect of rotation on configural encoding in a face-matching task. Perception, 36, 446-460.

Ellis, H. D. (1975) Recognising faces. British Journal of Psychology, 66, 409-426.

Farah, M. J., Tanaka, J. W., and Drain, H. M. (1995) What causes the face inversion effect? Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 21, 628-634.

Goldstein, A. G. (1965) Learning of inverted and normally oriented faces in children and adults. Psychonomic Science, 3, 447-448.

Leder, H., Candrian, G., Huber, O., and Bruce, V. (2001) Configural features in the context of upright and inverted faces. Perception, 30, 73-83.

Lewis, M. B. (2001) The Lady's not for turning: Rotation of the Thatcher illusion. Perception, 30, 769-774.

Lewis, M. B. (2003) Thatcher's children: Development and the Thatcher illusion. Perception, 32, 1415-1421.

Lewis, M. B. and Johnston, R. A. (1997) The Thatcher illusion as a test of configural disruption. Perception, 26, 225-227.

Lobmaier, J. S. and Mast, F. W. (2007) The Thatcher illusion: Rotating the viewer instead of the picture. Perception, 36, 537-546.

Milivojevic, B., Clapp, W. C., Johnson, B. W., and Corballis, M. C. (2003) Turn that frown upside down: ERP effects of thatcherization of misorientated faces. Psychophysiology, 40, 967-978.

Murray, J. E., Yong, E., and Rhodes, G. (2000) Revisiting the perception of upside-down faces. Psychological Science, 11, 492–496.

Parks, T. E. (1983) Letters to the Editor. Perception, 12, 88.

Parks, T. E., Coss, R. G., and Coss, C. S. (1985) Thatcher and the Cheshire cat: context and the processing of facial features. Perception, 14, 747-754.

Rakover, S. S. (1999) Thompson's Margaret Thatcher illusion: when inversion fails. Perception, 28, 1227-1230.

Rakover, S. S. and Teucher, B. (1997) Facial inversion effects: parts and whole relationship. Perception & Psychophysics, 59, 752-761.

Rhodes, G., Brake, S., and Atkinson, A. P. (1993) What's lost in inverted faces? Cognition, 47, 25-57.

Rock, I. (1974) The perception of disoriented figures. Scientific American, 230, 78-85.

Rock, I. (1988) On Thompson's inverted-face phenomenon (Research Note). Perception, 17, 815-817.

Rouse, H., Donnelly, N., Hadwin, J. A., and Brown, T. (2004) Do children with autism perceive second-order relational features? The case of the Thatcher illusion. Journal of Child Psychology and Psychiatry, 45, 1246–1257.

Sjoberg, W. and Windes, J. (1992) Recognition times for rotated normal and "Thatcher" faces. Perceptual and Motor Skills, 75, 1176-1178.

Stürzel, F. and Spillmann, L. (2000) Thatcher illusion: Dependence on angle of rotation. Perception, 29, 937-942.

Tanaka, J. W. and Farah, M. J. (1993) Parts and wholes in face recognition. Quarterly Journal of Experimental Psychology A., 46, 225-245.

Thompson, P. (1980) Margaret Thatcher: a new illusion. Perception, 9, 483-484.

Valentine, T. (1988) Upside-down faces: A review of the effect of inversion upon face recognition. British Journal of Psychology, 79, 471-491.

Valentine, T. and Bruce, V. (1988) What's up? The Margaret Thatcher illusion revisited. Perception, 14, 515-516.

Yin, R. K. (1969) Looking at upside-down faces. Journal of Experimental Psychology, 81, 141-145.


「『顔ガクガク錯視』はさかさま顔では弱い 2」

左図を見ると、4つ目で口が2つの女性というよりは、観察者の目が落ちつかないかのように、図がガクガクして見える。 すみませーん、この錯視、名前はありますか? 知っている方は文献を教えて下さい。 →北岡にメールする  この「顔ガクガク」錯視は、さかさま顔では弱い(右図)ので、顔特有の錯視であろう。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (December 26; remaked January 5, 2008)


「『顔ガクガク錯視』はさかさま顔では弱い 3」

左図を見ると、4つ目で口が2つの男性というよりは、観察者の目が落ちつかないかのように、図がガクガクして見える。 すみませーん、この錯視、名前はありますか? 知っている方は文献を教えて下さい。 →北岡にメールする  この「顔ガクガク」錯視は、さかさま顔では弱い(右図)ので、顔特有の錯視であろう。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (January 6, 2008)


「『顔ガクガク錯視』と『手足ガクガク錯視』」

4つ目で口が2つの女性というよりは、観察者の目が落ちつかないかのように、図がガクガクして見える。 すみませーん、この錯視、名前はありますか? 知っている方は文献を教えて下さい。 →北岡にメールする  ところで、手と足の数を増やすとガクガクするように見えなくもないが、顔ガクガク錯視ほどの効果はないなあ・・・

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (December 29)


「横方向の顔ガクガク錯視」

4つ目で口が2つの顔というよりは、観察者の目が落ちつかないかのように、図が横方向にガクガクして見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (December 26)

さかさまにすると錯視量が少ないようなので、これも顔の錯視と考えられる。


「横顔の顔ガクガク錯視」

目と口が多い顔というよりは、観察者の目が落ちつかないかのように、図が縦方向にガクガクして見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (December 28)


「横顔の顔ガクガク錯視 2」

目と口が多い顔というよりは、観察者の目が落ちつかないかのように、図が縦方向にガクガクして見える。口が開いている方が錯視量が多いようだ。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (January 5)


「顔ガクガク錯視は目と口の両方が開いている時に最大」

目と口が多い顔というよりは、観察者の目が落ちつかないかのように、図が縦方向にガクガクして見える。目と口が両方に開いている顔の錯視量が多いようだ。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (January 5)



目と口の両方とも開いていないと、顔ガクガク錯視は相対的に弱い。


「顔ガクガク錯視の視線効果」

観察者の方に画像の目の視線が向いている時に、顔ガクガク効果が大きい・・・ような気がする。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (January 5)

ステレオグラムにもなるなあ・・・


元の画像

「画像のブレによる顔ガクガク錯視」

顔画像をブレさせると(正確には2枚のずれた静止画を透過率50%で合成)、目と口が多い顔というよりは、観察者の目が落ちつかないかのように、図がガクガクして見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (January 5)



 ブレによるガクガク錯視は顔画像でなくてもできる(下図参照)。ただし、どんな画像でもできるわけではない。

元の画像


オマケ・・・面白山駅にて(2007年10月)




 顔の見えない身体画像でも、ブレによるガクガク錯視はある。ただし、顔のある画像よりは効果が弱く見える(下図参照)。

元の画像



 ブラーによるこの種の錯視については既に論文があると思うので、調査中です。


「マクドナルド」

黄色のバーが左右に動いて見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2005 (November 3)


「顔ガクガク錯視では目はガクガクしていない?」

黄色の斜めのバーは、図が網膜上で上下にスリップすると左右に動いて見える(作品「マクドナルド」)。この動く錯視と顔ガクガク錯視はあまり相関していないようである。つまり、顔ガクガク錯視の原因は緩やかな微小眼球運動ではない、という可能性が示唆される。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (January 5)


「ピンボケ」

内側のぼやけた市松模様が動いて見える。

Copyright A.Kitaoka 2001


「顔ガクガク錯視とピンボケ」

円形領域内は、図が網膜上でスリップした方向に動いて見える(作品「ピンポケ」)。この動く錯視と顔ガクガク錯視は相関しているような、いないような・・・。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (January 5)

円形領域が上下に動いて見えやすければ、相関あり(顔刺激に眼球運動が誘発されていることになるから)。


「顔ガクガク錯視とピンボケ 2」

円形領域内は、図が網膜上でスリップした方向に動いて見える(作品「ピンポケ」)。この動く錯視と顔ガクガク錯視は相関しているような、いないような・・・。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (January 5)

円形領域が左右に動いて見えやすければ、相関あり(顔刺激に眼球運動が誘発されていることになるから)。


「顔ガクガク錯視と踊るハート達」

ハートは、図が網膜上でスリップした方向に動いて見える(作品「踊るハート達」)。この動く錯視と顔ガクガク錯視は明らかに相関していない。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (January 5)

文献

Kitaoka, A. and Ashida, H. (2007) A variant of the anomalous motion illusion based upon contrast and visual latency. Perception, 36, 1019-1035.

Kitaoka, A, Kuriki, I. and Ashida, H. (2006) The center-of-gravity model of chromostereopsis. Ritsumeikan Journal of Human Sciences, 11, 59-64. PDF


配布物
「踊るハート達」 (MS-Word ファイル)

「顔ガクガク錯視と蛇の回転」

眼球運動を抑制して「蛇の回転」を止めた状態でも顔ガクガク錯視が起きるのなら、顔ガクガク錯視は眼球運動よりも先に脳で起きている可能性を支持する。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (January 5)


(北岡による勝手な)
最適化型フレーザーウィルコックス錯視の最新の分類

(VSS DemoNight 2007)


参考 「だまされる視覚 錯視の楽しみ方」 ニュートン別冊「錯視 完全図解」


Murakami, I., Kitaoka, A. and Ashida, H. (2006) A positive correlation between fixation instability and the strength of illusory motion in a static display. Vision Research, 46, 2421-2431.



Backus, B. T. and Oruç, I, (2005) Illusory motion from change over time in the response to contrast and luminance. Journal of Vision, 5, 1055-1069. to get PDF

Conway, R. B., Kitaoka, A., Yazdanbakhsh, A., Pack, C. C., and Livingstone, M. S. (2005) Neural basis for a powerful static motion illusion. Journal of Neuroscience, 25, 5651-5656.


「蛇の回転」

蛇の円盤が勝手に回転して見える。

Copyright A.Kitaoka 2003 (September 2, 2003)


「蛇の回転」錯視と年齢の関係の調査
「蛇の回転」の錯視量は年齢に逆相関するか? の調査研究

「蛇の回転」の錯視量は年齢に逆相関するか? の調査研究(高齢者のデータ)

「蛇の回転」の錯視量は年齢に逆相関するか? の調査研究(高校生のデータ)


「蛇の回転」の錯視量は年齢に逆相関するか? の調査研究(大学生のデータ)

運動視を司る領域と考えられる MT+ 野 (この図ではMT/V5)

from: Logothetis, N.K. (1999). Vision: a window on consciousness. Scientific American (November), 281, 44-51.


静止画が動いて見える錯視 (anomalous motion illusion)の文献

Kitaoka, A. and Ashida, H. (2003) Phenomenal characteristics of the peripheral drift illusion. VISION, 15, 261-262.PDF

Kitaoka, A. (2003) The frame of reference in anomalous motion illusions and ergonomics of human fallacy. Ritsumeikan Journal of Human Sciences, 6, 77-80.PDF

Ashida, H., Sakurai, K. and Kitaoka, A. (2005) A new variant of the Ouchi illusion reveals Fourier-component-based processing. Perception, 34, 381-390. PDF

Conway, R. B., Kitaoka, A., Yazdanbakhsh, A., Pack, C. C., and Livingstone, M. S. (2005) Neural basis for a powerful static motion illusion. Journal of Neuroscience, 25, 5651-5656. PDF

Murakami, I., Kitaoka, A. and Ashida, H. (2006) A positive correlation between fixation instability and the strength of illusory motion in a static display. Vision Research, 46, 2421-2431. PDF

Kitaoka, A. (2006) Configurational coincidence among six phenomena: A comment on van Lier and Csathó (2006). Perception, 35, 799-806. PDF animations

Kitaoka, A. and Ashida, H. (2007) A variant of the anomalous motion illusion based upon contrast and visual latency. Perception, 36, 1019-1035. PDF


「床屋の乱立」

各リングが回転して見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2005 (October 7)


まばたきおよびフリッカーによる回転錯視・仮現運動風タイプ


   

Image: 100 ms                                          blank: 100 ms

時計回りにも、反時計回りにもリングが回転して見える。時々回転方向が反転する。その方向は注意によっても変えられる。これらの点は、仮現運動と性質が同じである。


「蛇のフリッカー回転」

リングが回転しているようにみえるが、2枚の静止画を交替に出しているだけである。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (February 4)


   
(Background = 0 cd/m2, rings at the blank = 57 cd/m2)


ブランクの縞模様相当部位に "motion streak" あるいは「オバケ」が付いているバージョン

 


「おばけ」(motion line)

Apparent movement with speed lines (motion lines)

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (March 2)


「瞬間移動2」

瞬間的に移動したように見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 ( February 16)

これは岡部望氏(アニメーター)のいうところの「本当のオバケ」のテクニック


「高速どんぐるりん」

どんぐりの輪が高速に回転して見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (February 16)

普通の「どんぐるりん」↓

+



「蛇のフィギュアスケート」

円盤が高速で回転しているように見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (February 22)



「ウォラストン錯視(クリスマス2007版)」

左の顔はこちらを見ているように見えるが、右の顔は向かって右の方向を見ているように見える。しかし、絵としては、両者とも同じ目である。この錯視を視線方向の錯視(Wollaston, 1824)という。なお、原画は若いお兄さん

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (December 21)

Wollaston, W. H. (1824) On the apparent direction of eye in a portrait. Philosophical Transactions of the Royal Society of London, B114, 247-256. (下記山口先生の解説から孫引き)

山口真美 (2006) 乳児に視線はどう見えるのか? 心理学ワールド, 34(特集・視線とコミュニケーション), 5-8.




「ウォラストン錯視の顔倒立効果」

ウォラストン錯視図をさかさまにしても効果は失われない。違いと言えば、左右の画像で目が同じであることに気づきやすいことがある。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (December 21)


「安藤新樹先生の充血錯視のイラスト版」

輝度に誘導された視線方向のずれ効果(luminance-induced gaze shift)あるいは充血錯視(bloodshot illusion)(Ando, 2002)。白目の部分を暗くすると、暗くした方向に視線がずれて見える。3つの図は赤い部分を除いて同一であるが、左の図は向かって左方向を、中央の図は正面を、右の図は向かって右方向を人物が見ているように見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (December 15)

Ando, S. (2002). Luminance-induced shift in the apparent direction of gaze. Perception, 31, 657-674.


「目の輪郭による視線方向の錯視」

3つの図は、目の(上まぶたの)輪郭を除いて同一であるが、左の図は向かって左方向を、中央の図は正面を、右の図は向かって右方向を人物が見ているように見える。視線の方向は、顔における黒目の位置ではなく、目の輪郭の中の位置の情報が重要であることがわかる。(ん、あたりまえか?)

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (December 17)


「プルキンエ・サンソン像による視線方向の錯視」

3つの図は、プルキンエ・サンソン像(Purkinje-Sanson image)(黒目の中で強く光っているところ)を除いて同一であるが、左の図は向かって左方向を、中央の図は正面を、右の図は向かって右方向を人物が見ているように見える傾向がある。プルキンエ・サンソン像の方向に、みかけの視線方向が寄る現象である。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (December 17)

絵描きや漫画家は自明のごとく知っている現象で、錯視というほどでもないかもしれない。


「上下方向のウォラストン錯視」

左の顔の目はこちらを見ているように見えるが、右の顔の目はやや上の方向を見ているように見える。しかし、絵としては、両者とも同じ目である。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (December 26)

だんだん、どこが錯視なんだか・・・という気がしてきた。


「上下方向のウォラストン錯視 2」

左の顔の目はこちらを見ているように見えるが、右の顔の目はやや下の方向を見ているように見える。しかし、絵としては、両者とも同じ目である。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (December 26)

「上下方向のウォラストン錯視の顔倒立効果」

上下方向のウォラストン錯視図をさかさまにすると、効果が弱くなるようである。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (January 6)


「サッチャー化した視線方向の錯視」

目は絵としては同じで左右でさかさまになっているだけなのだが、左の顔の目はこちらを向いて見え、右の顔の目は下を向いて見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (November 16)

サッチャー錯視のページはこちら


「視線方向が変わって見えない画像変換」

顔画像を横長・縦長あるいは平行四辺形の形に変換しても、視線方向はあまり変わって見えない。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (December 19)

「視線方向が変わって見える画像変換」

顔画像を平行四辺形以外の形(たとえば台形)に変換すると、視線方向はその奥行き手がかり示す方向に変わって見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (December 19)

(下辺が上辺より短い台形の場合は例外かも)


「瞳孔の位置による視線方向の錯視」

上の顔はこちらを見ているように見えるが、下の顔は向かって右よりを見ているように見える。2つの顔の違いは、黒目の中の瞳孔の位置だけである。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (January 6)

「瞳孔の位置による視線方向の錯視」は画像がかなり大きくないとほとんどわからない。


1. うかし絵 (陰影による立体感と空間知覚 Shape and space perception from shading and shadowing) → 「トリックアート」によく使われている。

「隠されたジャストローの台形錯視」

上の図の台形が下の図の台形よりも大きく見える(ジャストローの台形錯視)がこれにすぐには気づかないのは、影が物体の空間位置の知覚に及ぼす効果のデモンストレーション(影の位置が違うだけなのだが上図では球が浮いて見える)に注意が取られてしまうためであろう。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (June 29)


2. むりな絵 (不可能図形 impossible figure)

「心的回転実験用不可能図形」

2004/5/8

ペンローズの三角形(Penrose's triangle)

「昼と夜の柱」

面の向きが変わり、図と地も入れ替わる不可能図形である。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (April 24)


3. かえし絵 (反転図形 reversible or ambiguous figure)

古典的な例

「メールボックス」

メールボックスの見えとして、右上から見たもの、右下から見たもの、左上から見たもの、左下から見たものの4つの見えが入れ替わる。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (April 21)

図が左右に拡大して見える錯視もある。

「ルビンの盃・光沢とメガネ付き」

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (April 24)

フィッシュガール(三輪みわ)

シルエット錯視(茅原伸幸)

「マリリンシュタイン」(Marylin Monroe-Einstein hybrid image)(Aude Oliva)


4. さかさ絵 (upside-down figure)

「おねえさんと怪人」

和洋を問わず昔から人気のある顔の逆さ絵である。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (April 7)

この図は動画です。しばらくお待ち下さい。


5. かくし絵 (hidden figure)


「十字隠し電球」

右の図に左の図のような十字形が隠れているが、気づくのに時間がかかる。「よい連続の要因」というゲシュタルト心理学の法則を用いた隠し絵。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (April 25)






「クイズ式隠し絵」

この種のクイズは結合探索課題タイプの隠し絵です。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (April 29)


6. 狭義のだまし絵(トロンプルイユ)(trompe l'oeil)

「衣笠キャンパス湖」

立命館大学衣笠キャンパスが水没したように見える。

Copyright A.Kitaoka 2004 (August 14)



実際の風景



だまし絵の解説

北岡明佳 (2007) だまし絵のつくり方教室 現代のエスプリ(仁平義明(編)「嘘の臨床・嘘の現場」), 481(2007年8月号), 141-155.


「さかさま顔の過大視」

上下の顔の大きさは同じであるが、下の方が大きく見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (February 16)

cf. 上視野の過大視、サッチャー錯視


「目の大きさ錯視」

左右の画像では目は同じである。しかし、左の画像では右目が左目よりも長く、右の画像では左目が右目よりも長く見える(両目は実際には同じ長さである)。左の画像では両目が水平に並んでいるように見えるが、右の画像では左目が右目よりも高い位置にあるように見える錯視もある。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (January 7)

(日本男児を描いて欲しい、というご要望にお応え致しました。ちょっと違う?)


「顔下方過大視錯視」

目を上下に並べると、下の方が大きく見える。目の形による幾何学的錯視(ジャストロー錯視など)もあるが、それだけではないように見える。口にもそのような効果があるように見える。顔の輪郭によるポンゾ錯視とか?

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (January 7)


右の顔は手塚治虫のマンガによく出てくる変な顔の男に似ている。手塚先生に一歩近づいた。


ポンゾ錯視



幾何学的錯視(形の錯視)のカタログ


この図で上の方が大きく見えればポンゾ錯視かも。左図が手塚治虫のマンガに出てくる変な顔のようには見えないのは、サッチャー錯視


「スリムな人の背丈の過大視」

すべての人物の上半身の高さは同じであるが、右にいくほど、すなわちスリムな方ほど、背が高く見える。逆に言えば、太った人は実際より背が低く見える。なんということだああ。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (December 17)



実はこの錯視は「頭の高さの錯視」として、私は顔の錯視と考えていたのであるが、顔知覚に特有ではなく、一般的な幾何学的錯視であることがわかった(下図)。

「楕円の長軸の過大視」

すべての円と楕円の高さは同じであるが、右にいくほど、つぶれた楕円ほど、長軸が長く見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (December 17)


「会議室のおねえさん」

5つの人物の大きさは同じであるが、左から大・小・大・小・大に見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (December 23)

注: 普通の幾何学的錯視(形の錯視)です。顔特有の錯視ではありません。


●錯視とは視覚性の錯覚のことであり、錯覚とは実在する対象の真の特性とは異なる知覚のことである。

●錯視には、形の錯視(幾何学的錯視)、明るさの錯視、色の錯視、運動視の錯視などがある。だまし絵なども錯視に含められることがある。

●生存の役には立たないと思われる現象ほど錯視と呼ばれやすい。

●錯視は、錯視量が多いほど「美しい」。しかし、その科学的根拠は不明である。

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ニュートン編集室(編)・北岡明佳(監修) (2007) Newton別冊 脳はなぜだまされるのか? 錯視 完全図解 ニュートンプレス

「蛇の回転」を含む最近の錯視まで網羅して、わかりやすく図解しています。

(2007年10月1日発行 定価:2,415円(税込) ISBN 978-4-315-51803-0) アマゾンのページ


    


     


北岡の錯視本いろいろ


 

まとめ

錯視も視覚の情報処理の結果の一つには違いない。しかし、その全貌を捉えるのは、なかなか大変である。

 
ご清聴ありがとうございました。


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