坂道錯視 9
上り坂が下りに見えたり、下り坂が上りに見えたりする坂、あるいはその錯視のこと。これらの錯視は、俗に、おばけ坂、幽霊坂あるいはミステリー坂という(例:カナダにある「磁石の丘」、Wikipedia)。学術的には、縦断勾配錯視という(今井省吾 (1971) 道路の縦断勾配の錯視 東京都立大学人文学報, 83, 13-28)。坂道錯視は、さらに、左右方向の傾き錯視も含む。実例はたくさんありそうであまりない。 <坂道錯視の写真募集中>
2013年2月17日より
種子島の「南種子町河内(みなみたねまち かわち)の錯視の坂」の実地調査
調査日:2013年2月3日(日) 調査員:北岡明佳と對梨成一 研究資金:科研費、R-GIRO
南種子町河内の坂
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2013 (February 24) 撮影日は、2013年2月3日(日)、以下同様
手前の坂は急な下り坂(3.5度)、奥の幅が狭くなっている坂は緩い下り坂(0.8度)であるが、奥の下り坂が上り坂に見える。写真では手前の坂まで上りに見えることがあるが、現地ではそのようなことは感じなかった。
右側の旧道に入ってすぐ、手前の坂は下り坂に見えるが、緩い上り坂である(0.8度)。奥の坂は急な上り坂(3.5度)であるが、左側の新道の傾斜がさらに急である(4.5度)ためか、あまり急勾配に見えない。
手前の坂は急な下り坂(3.5度)、奥の幅が狭くなっている坂は緩い下り坂(0.8度)であるが、奥の下り坂が上り坂に見える。写真では手前の坂まで上りに見えることがあるが、現地ではそのようなことは感じなかった。
緩い下り坂(0.8度)が上り坂に見える。
地元の人に話を聞いたところ、ここが錯視のスポットであることは特に有名ではないということであった。
今回の立命館大学の調査につながった唯一の情報源(大木田敏明さん)を通してわかったことは、この錯視の坂の発見となるきっかけを作ったのは大ア佳寿美さんである。2010年か2011年の頃、雨の日に高校にバイクで通学途中に、この地点で「雨水が逆流している」ことに気づいた。佳寿美さんは不思議でならず、それを父親の大ア寿徳さんに伝えたところ、寿徳さんは早速現場を訪れた。一級土木施工監理技術者である寿徳さんは、先の坂の勾配と手前の坂の勾配が違うだけで、両方とも下り坂である事を確認した1)。その後、寿徳さんが所要で大木田さんの別宅に来たときに、大木田さんが「中種子町のゆうれい坂を、誰も知らないから、撮影し動画にしてUPするんだ」という話をしたところ、「娘が見つけた坂が南種子にもある」と教えた。そこで、大木田さんは寿徳さんの案内で現場に行き、それが錯視の坂であることを確認した。後日、大木田さんは、別の友人のクルマで一緒に来て、ギアをニュートラルにするとみかけの上り坂をクルマが上っていく様子を撮影し、その動画をウェブページで公開した。ちなみに、立命館大学の北岡と對梨がこの坂を知ったのは、2012年12月のことである。 <2013年3月2日>
1) 「具体的には、車で坂を上がって行って(注:下の写真の向こうから来た)、旧道に入って手前の下りに見える坂で アクセルを緩めたところ、スピードが緩んだので、これは下りではなく、同じく上り坂である事を確信して途中で車を止め、ニュートラルにしたら、バックした」 とのことである。 <2013年3月5日>
旧道入り口。旧道入ったところは下り坂にしか見えません!
現場から数百メートルのところにあるホテル
星がきれい。食事がおいしい。お酒がおいしい。お風呂は温泉。たいへんよい。
坂道錯視研究者御用達のホテルといったところなのだが、そういう利用は初めてのようだった。
種子島宇宙センターから見た「ジャンボ尾崎おっさんとチンパンジーの顔」
2014年9月2日修正 伊藤文人先生ありがとうございます。
坂道錯視8 (種子島、中種子町納官深久保の錯視の坂)
坂道錯視7 (熊本県天草郡苓北町志岐山の木山弾正無念坂とお京坂)
坂道錯視6 (京都府南丹市美山町田歌の坂上りの川)
坂道錯視5 (福岡県遠賀郡岡垣町内浦のゆうれい坂)
坂道錯視4 (福岡県久留米市田主丸の坂上りの水)
坂道錯視3 (青森県三戸郡階上町の後戻り坂)
坂道錯視2 (岩手県花巻市東和町のミステリー坂)
坂道錯視1 (いろいろ)