街角錯視 5
日常生活で見られる錯視を収集してみました。
2010年8月29日より
「ディーゼルカー接近錯視」
2両編成のディーゼルカーが駅構内に進入してくるように見える。2012年9月30日、いわき駅にて撮影。
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2012 (October 1)
「建勲神社の錯視」
建勲神社の鳥居が見えるが、ずいぶん遠くに見える。そんなに遠いはずはないのだが・・・
(建勲大徳寺交差点から撮影。地図で見ると建勲神社まで200メートル程度なのだが)
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2012 (August 16)
これが答えだ!
建勲神社は船岡山にあり、ご神体は織田信長である。
「田園のミュラー・リヤー錯視外向図形」
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2012 (July 14)
「エスカレーター上昇錯視」
エスカレーターの写真であって動画でないのに、エスカレーターが上っていくように見える(戻って見えることもある)。北岡ゼミの原由香里さんの卒業論文(2011)より。京都駅にて撮影。斜塔錯視も意図している。
Copyright Yukari Hara 2011
(uploaded April 12, 2012)
原由香里 (2011) 京都駅ビルにおける風景錯視 2011年度立命館大学文学部卒業論文
下記の錯視の仲間と思うが、錯視の方向が反対だ。
「21世紀の滝の錯視」
ぼんやり眺めていると、白線の縞模様が下がっていくように見える。
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2012 (February 24)
2001年の作品のリメークでもある。
「阿久根市商店街のシャッターアートの一つ」
Photo Akio Kineri 2011
おもしろい
「名古屋の歩道の『畑の畝』錯視」
平べったい歩道なのに畑の畝のように上下に波打って見える。名古屋市の中岡秀彦様発見・撮影。北岡には波の凸の方向に動いて見える錯視も見える。
Copyright Hidehiko Nakaoka 2011
その近くのスカイルでの講演のページはこちら
北岡明佳 (2011) 錯視―脳はだまされる (朝日カルチャーセンター名古屋 栄教室・2011年9月18日(日) 13:00-15:00) 発表に使用したウェブページ
「骸骨の雪渓」
室堂(立山)にて。右下はみくりが池。
Copyright Aliyoshi Kitaoka 2011 (August 22)
みくりが池
(2011年8月13日撮影)
「とんがり帽子をかぶったとんがり鼻の人」
本当は火の灯った蝋燭なのだが、顔のように見える。千葉大学大学院工学研究科博士課程(デザイン心理学研究室所属)菱沼隆氏制作。ただし、アルチンボルド作品のようなことを意図していたわけではなかったとのことである。
Copyright Takashi Hishinuma 2011
2011年8月7日、日比野先生より掲載のOKを頂いた。
下図より
「久留米大学附設高等学校・中学校の中庭のカフェウォール錯視」
平行線が交互に傾いて見える。
Copyright Atsushi Yoshikawa 2011 (June 24)
吉川敦校長より
壁でないのにカフェウォール錯視
下記の現象(両眼視差に依存しない両眼立体視風の知覚現象)にいろいろな事実がわかりつつあります! <2011年3月20日> new!
兵庫県明石市の馬場啓利様から、「本年初め頃に、ふとしたことから一般放送(スイスアルプス風景のハイビジョン放送や NHKの歌謡ショウなど)を特殊な眼鏡を使用することではなく、普段使用中の眼鏡を目の位置から離してゆくと立体的に見ることを発見しました。(スイスアルプスなどの風景は見事に立体的に見えました。歌謡ショウでは客席に座っている客が雛壇に座って見えました。特徴的に言えることはハイビジョンカメラで撮影したもので顕著に立体的に見えことです) 理論的な理由がわかりません。想像するに、騙し絵のお面で顔の表面を見ているつもりが、見る角度を変えて行き横から見る位置に近づくと実は裏側から見ていたことを発見する例がありますが、今回の例はこのようなことかと思いつつご意見をうかがわせて頂くと幸いだなと思いながら、メイルをさせていただくことにしました。」 との電子メールを頂きました。 確かにそう見える! 下の写真で試されたい。 <2010年8月29日>
「馬場効果」
メガネを離して見ると立体的に見える。左のグラフィックスも手前に浮き出て見えることから重なりの要因は貢献しているようだ。
Copyright Aliyoshi Kitaoka 2010 (August 29)
2010年8月24日、スイスにて北岡が撮影。レッチベルク線の車内より。写りこみの修正あり。
さらに馬場様より <2010年8月30日>
先般お届けした事象の他にも次のような点に気づいていますので、追加してお届けいたします。
1)テレビでは、画像の前に字幕が放映(ニュース、歌番組での歌詞・・・)されますが、これも浮き上がって見えます。CMなどでは映像とCG画像を合成したもので、やはり3Dに見えるものがあります。
2)活版印刷されたカレンダー(山や畑の風景、街角風景)などでも同じ方法で3Dに見えます。
3)目の前に見えている景色も同様な方法で見てみると、より立体的に強調されて見えます。
市販の3Dテレビや、一般の3Dの解説では人間は2つの目を持っているので、立体的に見るには2つの角度からの映像を別々の目で見て脳の中で合成する必要があると解説されそのために色々な技術開発がされています。
ところが、わたしの発見(?)では普通の1枚の映像を提案の方法で見ると3Dに見えることです。眼鏡を遠ざけて行くと光学的に映像に歪みが起きて、その映像を脳が判断するときに立体的に判断しているのではないでしょうか。そこで、これは騙し絵の錯覚の現象に違いないと思ったわけです。これは、立体的にものを見るには2つの視点から見た映像を提供する必要があると言う常識を覆すので学問的(光学的解析、錯覚の脳の研究など)にも面白いことかと思いました。
さらに馬場様より <2010年8月31日>
本件の追加情報ですが、片方の目だけでこの方法を実施しましても、まったく同じような立体的画像を見ることが出来ます。(これは、いよいよ脳の錯覚現象ですね)
北岡のコメント さらにその効果には両眼加重がある。 <2010年8月31日>
上記に関連して、東京都板橋区の飯塚晃太郎様より下記のコメントを頂きました。 <2010年9月1日>
この状況と同一の現象かは判断できませんが、学生時代に地理の教科書で山が写っている写真を見ていたとき、片目でも立体感のある絵として見える事に気づきました。具体的には、片目で見るたびに奥行きの情報が付加されたように感じられ、両目に戻すと何も感じられなくなる、という感覚を持ちました。当時はその方面の知識はなかったので、「写真は片目で見た方がリアリティがあるな」と感じていました。
しかし、当時それを先生に伝えてもそうは思わないと言われ、結局そのままになってしまいました。現在の知識で考えつく内容としては、これは光学的にそう見えるのではなく、知覚に基づく現象ではないかと思います。
ここからは仮定の話になりますが、片目での映像入力のみの状態で奥行きを識別するしくみがあり、立体認識の精度を高めるために使われているのではないかと考えています。
これを両目で見直すと平坦に戻って見えますが、片目ずつの視界で奥行きを取得できていても、合成する過程でこの情報は処理されないか、単に捨てられるのではないか、と。
両目からの入力が維持されている間は、統合できない情報は立体として認識しない仕組みがあるのではないかと考えています。(視界の保証のためか、負荷をかけない仕組みかはわかりませんが)
一方、現実の視界を片目で見た場合は平板に見えます。こちらは一般的な見え方と特に変わりがないと思います。
その違いは写真が全体的にピントが合っていること、写真を見る際には全てを注視していることに関連するのではないかと感じていますが、より適切な説明があるかもしれません。
以上が仮定です。
今のところ「そう見える」という意見を身の回りで聞いたことがないため、せめてもう一人ぐらいはそういう経験がある方がいると安心できますが…。
ただし、少なくとも、「写真を片目で見た時の立体感」という知覚は存在するのではないかと考えています。
根拠を示さずに専門家の方に自説を主張することは勇気がいりますが、この現象に説明がつけられることを望んでいます。
では、よろしくお願いします。
P.S.
このあたりはもしかすると3Dテレビの問題に関連するかもしれません。
余談となりますが、私は人間が視界をチラ見しただけで物体の連続性を判断できることが未だに驚異です。人間以外の生物も確実にそうなのかはわかりませんが、おそらく視界を頼りにモノを捕えることのできる生物は識別できるものと思います。特に、静止した物体の境界をほぼ正しく知覚できることについては本当に不思議なことだと感じます。
光学的な入力だけではなく、情報処理と一体となっている視覚と、その仕組みを解き明かしたり、または楽しんだり親しんだりもする錯視という研究については興味が尽きません。
北岡のコメント 単眼で写真やテレビを見るとリアルな奥行きが感じられるようになる、ということは3Dの研究者には広く知られています。何という名称で呼ばれているのかは知りませんので、9月4日の三次元映像シンポジウム(北九州市)で皆さんに聞いてきます。なお、馬場様のご指摘はめがねを遠ざけると立体感が増すという現象ですので異なります。飯塚様の仮説は「片目ずつの視界で奥行きを取得できていても、それが両目の視界で立体として識別されるまでに、処理されないか単に捨てられるのではないか」ですが、私は逆に「単眼の奥行き手がかりからリアルな奥行き知覚が生じるメカニズムを視覚系は本来備えているが、両眼を使って平面である写真やディスプレーを見たときはその機能が能動的に抑制され、実際の平面に対応して平板に見える。飯塚様ご指摘の単眼効果や馬場様ご指摘のメガネ効果は、その『平面を平板に見ようとする能動的機能』が減退したため、元々備わっている『単眼手がかりからのリアルな奥行き知覚』が現れたものと考える」 です。飯塚様の仮説の一部分「(奥行き情報が)単に捨てられるのではないか」は同じことを想定しているのかもしれません。書き割り効果(cardboard cut-out phenomenon)※ との関連も興味深いところです。 <2010年9月1日>
※3D映像がリアルな立体感を伴わず、複数の平面が奥行き方向に重なったものに見えてしまうこと。舞台などの「書き割り」に感じが似ている。
北岡のコメント 2 YPS2010と三次元映像シンポジウムで聞いた限りでは、「馬場効果」は誰も知りませんでした。単眼で写真やテレビを見るとリアルな奥行きが感じられるようになる、ということについては羽倉弘之先生が「1分くらい見ているとそうなる」と講演の中でおっしゃって、みんな「そうだよね」と頷いておりましたが、「何効果と呼ばれているのか」については聞き忘れました。 <2010年9月6日>
「馬場効果」を応用した「カンタン3Dフィルター」なるものが販売されていました(価格13,800円)。TANOSeY研究所が発売元で、ヤフーショッピングストアから購入できます。ということはこの現象は既に知られているというわけで、2011年3月12日(土)に立命館大学において行なわれました3Dフォーラムで展示されましたので発売元に伺ってみたところ、現象名は知らないとのことでした。では発売元の発見かと聞いてみたところ、アメリカに類似の特許があり、そちらが先だとのことでした。特許まで調べる技能が北岡にはないので、とりあえずこの現象のオリジナル探しは先送り。
発売元の説明によると、「なぜメガネなしで立体映像が見えるのか?この3D 立体映像化ディスプレイフィルターは特殊プリズムフレネルレンズを使い、レンティキュラ方式により映像を立体化させる方法を採っています。ディスプレイの前にこの特殊なフィルターを置くことで、右目と左目に異なる視野の映像を提示します。その結果画像が立体的に見えます。」 とありますが、「右目と左目に異なる視野の映像を提示」と言っても画面内の対象間に両眼視差は付かないので、両眼立体視の説明にはなっていません。これは「馬場効果」と考えられますので、単眼(片目)でも見えると思います。3Dフォーラムの時はあわただしくて確かめる余裕はありませんでしたが。
<2011年3月19日> new!
発売元から下記コメントを頂きました。少なくとも発売元(田野瀬裕次様)は自力でこの現象を発見していることがわかりました。 <2011年3月20日>
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北岡先生のHPに弊社商品のコメントを掲載いただきましてありがとうございます。
先生としては3D現象の名称および研究論文を知りたいとのことですが、私としても
試作を繰り返すという実験を通してこの現象を見つけたわけでして、実用新案登録は
したものの物理学会にこの発見についての論文を提出するには至っておりません。
そこで、ご興味のおありの類似のアメリカの特許の出願番号をお伝えしたいと思います。
この、特許はプリズムメガネをテレビ画面側に装着すれば立体的に見えるという特許
なのですが、実用面で画像がゆがんでしまうという点で実用化されなかったのだと思います。
その点を偶然ですが克服した形になったのが弊社の実用新案であり、その結果商品化が
可能になったというわけです。
私が今回の発明に至る経緯は
http://tanosey.at.webry.info/
に載っておりますので、ご一読いただければと思います。
尚、アメリカの特許の公表番号及び出願番号は
公表番号: 特表平9-505158
出願番号: 特願平7-515178
です。これは
http://www.ipdl.inpit.go.jp/homepg.ipdl
で検索できます。(ここ数日はメンテナンス中で使用できませんが。)
発明というのは研究と違いまして偶然性が発明に至るということが往々にありまして
理論がついていかないというケースが往々にしてあるものです。
その理論付けを北岡先生のような方に行っていただけるのは有難いことだと思っております。
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カンタン3Dフィルターを購入。 <2011年3月22日> new!
右側から見ると見えない。
正面から見るとなるほど3Dっぽく見える。片目で見ても3Dっぽく見えた。ただし、両眼で見た方が効果が大きかった。「馬場効果」ですね、これは。「田野瀬・馬場効果」と呼ぶべきか。
3Dフォーラムの羽倉弘之先生より、覗き眼鏡(眼鏡絵・覗きからくり)と関係があるのではないかとの指摘あり。そうなのかもしれない。眼鏡絵はレンズを使うので、まさにそれだったのかもしれない。 <2011年3月23日>
「敬学館地階の錯視」
立命館大学衣笠キャンパス敬学館はこちらの地図の20番の建物です。
廊下の突き当たりの壁にある照明のところに凸状のオブジェがあるように見えるが、そのようなものはない。
Copyright Aliyoshi Kitaoka 2011 (February 2)
この距離からでも凸状に見える。
照明の当たり具合で凸状に見えただけで、実際はこの空間は半分の円筒の形状である。
「高松市美術館の錯視」
網膜像としては、右のこちらに凸の隅の高さは左の奥まった隅の高さの2倍程度に見える(上図)が、実際には2倍以上(2.67倍)ある(下図)。
Copyright Aliyoshi Kitaoka 2011 (January 20)
リチャード・グレゴリー先生風のネタであるが、ミュラー・リヤー錯視というよりは、回廊錯視だと思う。