「ストレスと錯視は関係がある」という流言の研究
since April 29, 2011
「ストレス耐性がある人ほどゆっくり動いて見える不思議な画像」というタイトルのウェブページが、私の作品を引用なしで無断使用するとともに、非科学的な主張をしております。ストレス耐性と錯視の間に何か関係があるという科学的根拠は知られておりません。
<2011年4月25日> (2011年4月25日にトップページに掲載した文面)
経過
2011年4月24日(日) 21:39 Y様より、下記のメールを拝受。 (以下、許可を得て掲載)
ネット上で北岡教授の錯視画像で錯覚が起きる人はストレスに弱いとする噂が広まってましたのでメールさせて頂きました。
以前、爆笑問題さんの番組で先生自身が
「錯視が起きるか否かは性格や知能に関係しない」旨を発言されてましたので、
おそらくデマだとは思うのですが確信がありません。
下記サイトにある「錯視が起きない=ストレス耐性が高い」を支持するような論文はあるのでしょうか?
http://www.marshu.com/collection-self-test-stress.php
2011年4月24日(日) 21:09 G様より、下記のメールを拝受。
今、ネット上で広まっている錯視に関するニュースがございます。
「ストレス耐性がある人ほどゆっくり動いて見える不思議な画像」
http://www.oshiete-kun.net/archives/2011/04/post_1066.html
http://www.marshu.com/collection-self-test-stress.php
こちらの画像は北岡先生のHPで拝見したことがある図ですが、
北岡先生のお名前がございません。
これらは先生の許可を得て掲載されたものでしょうか?
また、以前、色彩学会で先生のお話を伺ったことがありますが、
ストレスで動きが変わるというお話はなかったように記憶しております。
そういう事例があるのでしょうか?
これらほぼ同着の2通のメールに共通して示された marshu.com には、4月25日に確認したところでは、下記の3つの錯視デザインが掲載されていた。下記の画像はそのサイトからダウンロードしたもので、ファイル名もそのままとした。なお、そのページのアップロード日時はそのページには掲載されていないので、いつから公開されているのかはわからなかった。
Moving stress test: picture #1: "Flowers" rotate in opposite direction of a flower next to it.
Moving stress test: Picture #2: Clearly, three rotating cylinders in this picture.
stress test Picture #3: An odd wave effect is in the picture below.
これらはそれぞれ北岡による下記作品である。北岡が、「最新作 2」あるいは "The latest illusion 2" というページに3作品並び(marsh.comと順番は異なる)で掲載しているものである。いずれも2004年制作で、現在の北岡の表記法では、最適化型フレーザー・ウィルコックス錯視・タイプIIa を応用した作品である。日本語のわかりやすい解説書は こちら か こちら。

「ローラー」
ローラーが回転しているように見える。
Copyright A.Kitaoka 2004 (April 20, 2004)
子供のころ、洗濯機にはこんなのがついていた。(年齢がバレる)

「どんぐらこっこ」
どんぐりが波打って見える。
Copyright A.Kitaoka 2004 (April 19, 2004)
どんぐりころころとはいかないなあ・・・

「ブラウン運動」
うごめいて見える。
Copyright A.Kitaoka 2004 (April 17, 2004)
高校生のみなさんへ: 本当のブラウン運動(Brownian motion)はこんなのではありません。
G様のメールにあった oshiete-kun.net は marsh.net からの引用であることを明示している。フォルダ名から判断すると2011年4月に転載したようである。
2011年4月26日(火) 16:08 G様より、下記の2通目のメールを拝受。
ちょっと気になり、いつからこの話題があるのか探ったら、
2007年2月には既に存在していることがわかりました。
http://eyes-have.blogspot.com/2007/02/stress-test-optical-illusion.html
(Friday, February 02, 2007)
他にもどこかの学校で教えているらしい記述があったりとか、
dk(デンマーク)ドメインでの記述が見受けられたりとかで、
想像以上に広範囲にわたって「一般常識」となっているようです。
このブログページは2007年2月2日にアップロードと明示している。ページのタイトルは "The Eyes Have It: Stress
Test / Optical Illusion"。上記3作品を横幅320ピクセルに縮小して掲載している。marsh.com は北岡のオリジナルと同じ大きさの画像を用いているので、marsh.com
が2007年には先行して存在していたか、あるいはさらに古い別のサイトが存在する可能性を示唆する。
2011年4月28日(木) 13:24 K様より、「東京ナイロンガールズ」というブログスタイルのウェブマガジンのトピックス ストレスコントロール力が分る!? 目の錯覚を利用したストレス耐性テストにおいて、marsh.com 掲載の上記作品を北岡に連絡なく紹介したことのお詫びと下記コメントを附記することでの掲載継続要望を受け、承諾。
「紹介した画像は錯視研究 北岡明佳さんの作品です。記事公開時に誤りがあったことをお詫びして訂正させていただきます。また、ストレス耐性と錯視の関係に科学的根拠は知られていないとのこと。記事は「Marshu.com(http://www.marshu.com/collection-self-test-stress.php)」からの転載ですが、信じるか信じないかはあなた次第です。」
日本国内における marsh.com の影響力の大きさがわかるとともに、marsh.com のページの公開は比較的最近であると推定できる。
2011年4月30日(土) 23:58 G様より、3通目のメールを拝受。本ページと同様のページを立ち上げられたとのこと。そのページの情報として、G様は北岡の作品が大量にコピーされた「ストレステスト」のページ(http://cbgonline.us/stressed.html)を発見されたとのことで、それを確認。
本ページの英語版も作らなくては・・・
2011年5月1日(日) 22:20 G様より、4通目のメールを拝受。2004年にその話題は既に知られていたとのこと。バッハ先生のページ(“Rotating Snake” Illusion)に記述があるとのこと。
ホントだ。バッハ先生は「そんなんあるわけないやん」とストレス・錯視相関説のサイトにリンクを張っていないが、流言の広がりを抑制する科学者らしい態度である。バッハ先生のその“Rotating
Snake” Illusion のページは2004年1月3日に作成となっている。もっとも、最終アップデートは2010年8月22日となっているから、バッハ先生に聞いてみないことには2004年にその話題は既に知られていたとは断言できない。もし2004年1月3日にその話題は既に知られていたとすると、上記3作品は2004年4月17日、19日、20日の作品であるから、それ以前の「蛇の回転」(2003年9月2日作成)などが使われていたことになる。
バッハ先生よりお返事あり。バッハ先生が最初にこの話を知ったのは、マレーシアの数学・理科の教員からのメールで、2005年4月9日のことだったそうである。というわけで、2005年まで遡った。
<2011年5月2日>
2011年5月2日(月) このネタを北岡ゼミ(心理学演習I II O0クラス)で紹介した。卒論生がアイデア欠乏症の場合、このネタは卒論で使える。上記作品の錯視量を測定して、同じ人にストレス測定の質問紙を実施し、両者の相関係数を計算するだけでできあがり!





2012年2月5日(日) 「アルコールと錯視の関係」の流言に触発されてか、この流言がフェースブックで復活が確認された。 【ストレスたまってますか?】 (18:25)
2012年2月6日 10:15 発信者から主張を訂正するとの意思の表明を確認。「ストレス耐性がある人ほどゆっくり動いて見える不思議な画像」http://www.oshiete-kun.net/archives/2011/04/post_1066.html からの転載とのことであった。このサイトの閉鎖のさせ方がわからない。