日本基礎心理学会公開シンポジウム・平成19年度文部科学省科学研究費補助金(研究成果公開促進費)「研究成果公開発表(B)」補助事業

あなたのは信じられるか

学が明らかにするえの世界の

「こころ」ってなんだろう? ―心理学が解き明かす心のしくみー
【日時】2007年10月13日(土)(午後2時から6時まで) 【会場】東京大学本郷キャンパス法文2号館1番大教室

北岡 明佳(立命館大学 文学部 心理学専攻email

2007/10/5より


動きの錯視

下の2つの図形を使って、パソコン上で高速回転するように見える動画を作るには?


こうかな?

「青い目の女の子の運動残効2」

この動画では「目」が時計回りに2秒間回転、2秒間静止を繰り返している。静止している時、目は時計回りに回転して見える。両目の中間に視線を置いている時は目の内側が回転して見え、さらに周辺視で見ると目は全部回転して見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (March 1)

運動残効の標準的デモ


答え

「蛇のフィギュアスケート」

円盤が高速で回転しているように見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (February 22)


下の図形を高速回転するように見える動画を作るには?

+


「高速どんぐるりん」

どんぐりの輪が高速に回転して見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (February 16)


オバケ (motion lines)

Apparent movement with speed lines (motion lines)

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (March 2)


「瞬間移動2」

瞬間的に移動したように見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 ( February 16)

これは岡部望氏(アニメーター)のいうところの「本当のオバケ」のテクニック


以下、静止画が動いて見える錯視

「蛇の回転」

蛇の円盤が勝手に回転して見える。

Copyright A.Kitaoka 2003 (September 2, 2003)


「てんとう虫の回転」

てんとう虫のリングが回転して見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (March 7)


「灌漑2」

流れのように動いて見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2005 (October 28)


「ぶどうジュース」

でっぱりが動いて見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (March 20)


(北岡による勝手な)
最適化型フレーザーウィルコックス錯視の最新の分類

(VSS DemoNight 2007)


参考 北岡明佳著 「だまされる視覚 錯視の楽しみ方」


Type I

「タイムトンネルショー」

リングが回転して見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (February 24)


Type III

「扉の拡大」

扉が拡大するように見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (April 13)


「2つの輪」

内側のリングは縮小して見え、外側のリングは拡大して見える(最適化型フレーザー・ウィルコックス錯視)。中心を見ながら図に目を近づけたり遠ざけたりすると、リングがお互いに反対方向に回転して見える(回転オオウチ錯視)。また、中心を見ながら図に目を近づけると内側のリングが赤味を増し、目を遠ざけると外側のリングが赤味を増す。1つの図で3つも錯視が楽しめるおトクな錯視デザイン。

Copyright A.Kitaoka 2005 (April 1)


「踊るハート達」

ハートが動いて見える。めがねをかけている人は、めがねを動かすとよく見えるかもしれない。離れたところから見ると、明るくなった時のハートは白のランダムドットより手前に見え、暗くなった時のハートは奥に見える人が過半数と予想される。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (December 20)

文献

Kitaoka, A. and Ashida, H. (2007) A variant of the anomalous motion illusion based upon contrast and visual latency. Perception, 36, 1019-1035. new!

Kitaoka, A, Kuriki, I. and Ashida, H. (2006) The center-of-gravity model of chromostereopsis. Ritsumeikan Journal of Human Sciences, 11, 59-64. PDF

配布物  「踊るハート達」 (MS-Word ファイル)

「踊るハート」の説明


「秋の沼」

中の正方形領域が動いて見える。

Copyright A.Kitaoka 2000, 2003, 2007


「神経回路」

中心を見ながら目を近づけたり遠ざけたりすると環状の星の配列がお互いの反対方向に回転して見える。

Copyright A.Kitaoka 2000
(c)北岡明佳 2002 「トリックアイズ」 (カンゼン刊)

Yジャンクションの錯視

縞模様コードの錯視

配布物  北岡明佳 (2005) 目の冒険・錯視の話⑤ 自分で作って「傾く」「動く」 朝日新聞, 2005年7月31日発行 be on Sunday, p7.


「サクラソウの畑」

背景の市松模様はすべて正方形だが、波打って見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2002


運動視を司る領域と考えられる MT+ 野 (この図ではMT/V5)

from: Logothetis, N.K. (1999). Vision: a window on consciousness. Scientific American (November), 281, 44-51.


色の錯視

「レモン色の渦巻きとクリーム色の渦巻き」

渦巻きにはレモン色のとクリーム色のと2種類あるように見えるが、どちらも同じ黄色(R255, G255, B0)である。

Copyright A.Kitaoka 2005 (May 22)


「水色と黄緑の渦巻き」

水色の螺旋と黄緑の螺旋があるように見えるが、どちらも同じ色(r = 0, g = 255, b = 150)である。この色の錯視はモニエ・シェベル錯視に近いと思うが、彼らの理論には合わないのかもしれない。

Copyright A.Kitaoka 2003


「緑の渦巻き」

黄緑の螺旋と青緑の螺旋があるように見えるが、どちらも同じ緑である。

Copyright A.Kitaoka 2002
(c)北岡明佳 2002 「トリックアイズ」 (カンゼン刊)


「赤の渦巻き」

赤紫がかった赤い螺旋とオレンジ色がっかった赤い螺旋があるように見えるが、どちらも同じ赤である。

Copyright A.Kitaoka 2002
(c)北岡明佳 2002 「トリックアイズ」 (カンゼン刊)


「ムンカー錯視」

上の列にはオレンジ色と赤紫色の赤があるように見えるが、同じ色である。下の列は黄緑と青緑の2色があるように見えるが同じ色である。ホワイト効果の色相版である。

ムンカー錯視


「小家族」

左の鳩も右の鳩も同じ色なのだが、左の方は黄味がかって見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (March 12)


「武田信玄」

薄い黄色と濃い青色の渦巻きがあるように見えるが、左半分は白(R=255, G=255, B=255)と黒(R=0, G=0, B=0)であるのに対し、右半分は黄(R=255, G=255, B=0)と青(R=0, G=0, B=255)である。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (March 12)

「風林火山」

「武田信玄」の白黒黄青と同じであるが、この図では違いがはっきりわかる。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (March 12)


「水色と黄緑色のハートの絨毯」

水色のハートと黄緑色のハートがあるように見えるが、どちらも同じ色である。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (January 10)

cf. Dungeon illusion: Bressan, P. (2001) Explaining lightness illusions. Perception, 30, 1031-1046.


「水色と黄緑色のハートの絨毯(部分)」

水色のハートと黄緑色のハートがあるように見えるが、どちらも同じ色である。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (January 10)

cf. Dungeon illusion: Bressan, P. (2001) Explaining lightness illusions. Perception, 30, 1031-1046.


「四色の犬」

上から1番目と3番目の列の犬は2種類、2番目と4番目の列の犬も2種類いるように見えるが、それぞれ同じ色である。色の土牢錯視である。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (January 5)

参考  北岡明佳著 「トリック・アイズ デザイン」


「犬」

赤い犬は2種類、緑の犬も2種類いるように見えるが、それぞれ同じ赤と緑である。色の土牢錯視である。
別バージョン  別バージョン2

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (January 5)

土牢錯視(dungeon illusion)(Bressan, 2001)とは?

左の「牢屋」の灰色のダイヤモンド形は右のよりも明るく見えるが、物理的には同じ明るさである。

Bressan, P. (2001) Explaining lightness illusions. Perception, 30, 1031-1046.


色の土牢錯視とは?

左の「牢屋」のダイヤモンド形はオレンジ色に、右のは少し紫がかった赤に見えるが、物理的には同じ色である。

引用文献は調査中(ないかもしれない)

色の土牢錯視は雰囲気はムンカー錯視だが、普通に色の同化で説明することも可能だし、ゲシュタルト要因を考えて色の対比というのもあるのかもしれない。

次の犬年は11年後か・・・


「ぐるぐる 6」

それぞれの同心円の内側の4つのリングは同じ色であるが、違う色に囲まれると異なって見える。画面から離れてみた方が効果が大きい。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (January 15)


形の錯視

「クッション」

すべて長方形か正方形でできているが、丸みや立体感が感じられる。

Copyright A.Kitaoka 1998

市松模様錯視


「カメの回転」

カメの集団が回転して見える。そのほか、左右に動いて見える錯視や、垂直・水平に並んだエッジが傾いて見える錯視もある。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (June 19)

縁飾りエッジの錯視


「箱入り娘」

(箱に入っているように見えるという意見があり、「箱入らず娘」改め)

正式名称は 「蛇の回転入りシェパード錯視」)

左の人は右の人よりもスマートに見えるが、両者はまったく同じ形で同じ大きさの絵である。この錯視は、左の人が描かれている平行四辺形と右の人が描かれている平行四辺形は同じ形で同じ大きさであるという錯視(シェパード錯視)に同化した(キャプチャされた)ものと考えられる。そのほか、左の人は本を見ているように見えることがあるが、右の人はこちらを見ているように見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (June 20)

シェパード錯視(Shepard illusion or table-top illusion):

Shepard, R. N. (1990) Mind sights: original visual illusions, ambiguities, and other anomalies, with a commentary on the play of mind in perception and art. New York: Freeman. (R.N.シェパード著、鈴木光太郎・芳賀康朗訳 (1993) 視覚のトリック:だまし絵が語る「見る」しくみ 東京:新曜社)


「立命館心理学傾き錯視」

「立命館」文字列は右下がりに見え、「心理学」文字列は右上がりに見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (August 7)


「安全工学傾き錯視」

「安全工学」文字列は右上がりに見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (April 15)

少し動いて見えるような気も・・・


「科研交付傾き錯視」

「科研交付」文字列は右下がりに見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (July 30)

科研とは日本学術振興会(文部科学省)の科学研究費補助金の略で、ひらめき☆ときめきサイエンスはこの補助金による研究の社会還元事業である。「科研交付科研交付科研交付」と書くと右に下がっていくことが補助金の額が年々減っていくということを暗示しているかどうかは、今のところ定かでない。


新井先生のページ(文字列が傾いて見える錯視のおそらく最初の研究レポートを含む)

小原未紗 (2005) 文字列が傾いて見える錯視における水平成分の役割 立命館大学文学部(心理学専攻)2005年度卒業論文




ポップル錯視

Popple, A. V. and Levi, D. M. (2000) A new illusion demonstrates long-range processing. Vision Research, 40, 2545-2549.

Popple, A. V. and Sagi, D. (2000) A Fraser illusion without local cues? Vision Research, 40, 873-878


「タイガース螺旋」

黒い太線は同心円であるが、右に回って中心に向かう渦巻きのように見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2003
redrawn on July 14, 2006


「渦巻きの詰め合わせ」

同心円のリングが渦巻きに見える。ついでに回転して見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (June 13)


「さかさま顔の過大視」

上下の顔の大きさは同じであるが、下の方が大きく見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (February 16)

cf. 上視野の過大視、サッチャー錯視


「顔ジャストロー錯視」

同じ大きさの顔であるが、下の方が大きく見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (August 4)


だまし絵


北岡の主張:
 錯視デザインとだまし絵(あるいはトリックアート)は、アートしては同種で1)、サイエンスとしては別種である2)

1) 錯視デザインとだまし絵は、作品の目的は視覚のメカニズム自体を表現することである。
2) だまし絵は錯視を使っていない!

だまし絵の解説が出た。 <2007年7月13日>

北岡明佳 (2007) だまし絵のつくり方教室 現代のエスプリ(仁平義明(編)「嘘の臨床・嘘の現場」), 481(2007年8月号), 141-155.


1. うかし絵 (陰影による立体感と空間知覚 Shape and space perception from shading and shadowing) → 「トリックアート」によく使われている。

「隠されたジャストローの台形錯視」

上の図の台形が下の図の台形よりも大きく見える(ジャストローの台形錯視)がこれにすぐには気づかないのは、影が物体の空間位置の知覚に及ぼす効果のデモンストレーション(影の位置が違うだけなのだが上図では球が浮いて見える)に注意が取られてしまうためであろう。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (June 29)


2. むりな絵 (不可能図形 impossible figure)

「心的回転実験用不可能図形」

2004/5/8


3. かえし絵 (反転図形 reversible or ambiguous figure)

古典的な例

「メールボックス」

メールボックスの見えとして、右上から見たもの、右下から見たもの、左上から見たもの、左下から見たものの4つの見えが入れ替わる。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (April 21)

図が左右に拡大して見える錯視もある。

「ルビンの盃・光沢とメガネ付き」

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (April 24)

フィッシュガール(三輪みわ)

シルエット錯視(茅原伸幸)

「マリリンシュタイン」(Marylin Monroe-Einstein hybrid image)(Aude Oliva)


4. さかさ絵 (Upside-down figure)

「おねえさんと怪人」

和洋を問わず昔から人気のある顔の逆さ絵である。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (April 7)

この図は動画です。しばらくお待ち下さい。


5. (写真による)トロンプルイユ (Trompe l'oeil)

「立命館湖」

立命館大学衣笠キャンパスが水没したように見える。

Copyright A.Kitaoka 2004 (August 14)

ここが水没するようでは京都市街全域水没で~す。もちろん大阪も、神戸も。

実際の風景



だまし絵的、錯視的扱いの視覚現象

仮現運動


1フレーム 200ms

「仮現運動・その3」

1回あたりの回転角が小さくなると(この動画では22.5º)、回転が優位になり、往復運動は見えにくくなる(北岡は500msの方は往復運動優位である)。回転は自動的に反転して見えるとともに、好きな方向に転換させることもできる。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (July 26)


1フレーム 500ms


変化の見落とし








「変わったのはどこ?」

2枚の画像が切り替わるたびに、1箇所だけ変化する。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (May 24)




ステレオフューズすれば一発でわかる(該当部分が視野闘争する)。




それでもわからない人向けの動画




なお、変化するところが見つけやすいのではない(下のアニメを参照)。


●錯視とは視覚性の錯覚のことであり、錯覚とは実在する対象の真の特性とは異なる知覚のことである。

●錯視には、形の錯視(幾何学的錯視)、明るさの錯視、色の錯視、運動視の錯視などがある。だまし絵なども錯視に含められることがある。

●生存の役には立たないと思われる現象ほど錯視と呼ばれやすい。

●錯視は、錯視量が多いほど「美しい」。しかし、その科学的根拠は不明である。

錯視全般の分類(ウェブページ)   錯視のカタログ(ウェブページ)  北岡の錯視本(ウェブページ)


錯視研究は心理学である。 

心理学早分かり表(配布プリント)  心理学の推薦教科書(講義のホームページ) 心理学の推薦教科書一覧(ワードファイル・4MB)





作品を作ろう

動く錯視デザインのモト (マイクロソフト・ワード形式)

動く錯視デザインの作品例 (マイクロソフト・ワード形式)


デザインのいじり方

1. モノを動かすには ・・・ そのモノをマウスの左ボタンでクリックして押さえたまま、マウスを動かす(ドラッグという) 

2. 同じモノを増やすには ・・・ そのモノをクリックしてから、上にあるメニューバーの 「編集」 → 「コピー」 → 「編集」 → 「ペースト」

3. モノを回転させたり反転させたりするには ・・・ そのモノをクリックしてから、下にある図形描画バーの 「図形の調整」 → 「回転・反転」 → やりたいものを選ぶ


ファイルの保存の仕方

上にあるメニューバーの 「ファイル」 → 「名前を付けて保存」 → 適切な名前を付けて、「保存」ボタンを押す (保存先は 「デスクトップ」 にしておくとわかりやすい)


ニュートン編集室(編)・北岡明佳(監修) (2007) Newton別冊 脳はなぜだまされるのか? 錯視 完全図解 ニュートンプレス

「蛇の回転」を含む最近の錯視まで網羅して、わかりやすく図解しています。

(2007年10月1日発行 定価:2,415円(税込) ISBN 978-4-315-51803-0) アマゾンのページ


ご清聴、ありがとうございました。


    


     


北岡の錯視本いろいろ


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