錯視のサイエンスとアート
第9回 ロレアル 色の科学と芸術賞 金賞受賞講演
泉ガーデンギャラリー・2006年12月1日(金)
受賞の錯覚ニュース 錯四季 口紅
2006/11/23より English
1.1 動きの錯視
「タイムトンネルショー」
リングが回転して見える。
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (February 24)
「ブラウン運動」(リメーク版)
うごめいて見える。
Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (September 6)
高校生のみなさんへ: 本当のブラウン運動(Brownian motion)はこんなのではありません。
「秋の沼2」
中の領域が動いて見える。垂直・水平のエッジが傾いて見える。
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2003 (corrected April 12, 2006)
「軟質磁石」
青色の棒も黄色の棒も長方形であるが、歪んで見える。
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2005 (June 18)
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リバーストファイはアンスティス先生のホームページなどを参照されたい。
1.2 色の錯視
「レモン色の渦巻きとクリーム色の渦巻き」
渦巻きにはレモン色のとクリーム色のと2種類あるように見えるが、どちらも同じ黄色(R255, G255, B0)である。
Copyright A.Kitaoka 2005 (May 22)
「4つの水槽」
4つの「水槽」のうち2つずつは物理的に同じ色である。どのペアとどのペアか?
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (May 1)
「酒井の色の対比」
上の正方形の列は同じ灰色に見えるが、左の5つの正方形と右の5つの正方形を入れ換えて下の列に並べてみると、かなり違っていることがわかる。一番下の2つの正方形は外に出してみたところで、左の緑の正方形は右上の5つの正方形と同じで、右のピンクの正方形は左上の5つの正方形と同じである。誘導背景の色に最大の彩度を用いないことがポイントであった。
酒井香澄(「Landの二色法による色再現とBelseyの仮説検証」立命館大学文学部哲学科心理学専攻2002年度卒業論文)の発見をベースにしている。
1.3 明るさの錯視
「朝日」
光が差し込んでくるように見える。
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2005 (April 5)
正方形は4つとも同じ明るさである。
「スウェーデンの光」
白丸に青い光が点滅するように見える。
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2005 (April 25)
スウェーデンには行ったことがないので、この作品は単に国旗からのイメージです。
この錯視の明るさの部分は、きらめき格子錯視(scintillating grid illusion)です。
Schrauf, M., Lingelbach, B., Wist, E.R. (1997) The
scintillating grid illusion. Vision Research, 37, 1033-1038.
1.4 形の錯視(幾何学的錯視)
「月明かりに照らされた生まれたばかりのカメ」
垂直・水平に描かれたカメの境界が傾いて見える(縁飾りエッジの錯視)*。また、カメの集団が波打って動いて見える。
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (June 17)
*Kitaoka, A., Pinna, B., and Brelstaff, G. (2004). Contrast polarities determine the direction of Café Wall tilts. Perception, 33, 11-20.
ダリの作品みたいにタイトルが長くなってしまった。
「渦巻きの詰め合わせ」
同心円のリングが渦巻きに見える。ついでに回転して見える。
Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (June 13)
「錯視発見!科研費交付」
「錯視発見!」文字列は右上がりに、「科研費交付」文字列は右下がりに見える。
Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (July 22)
1.5 いわゆる3Dも錯視の仲間と言えないこともない
「秋の沼の波3D」
平行法でも交差法でも図が波打って見える。
Copyright Akiyoshi.Kitaoka 2006 (August 22)
ところで、立命館大学衣笠キャンパス
「立命館湖」
立命館大学衣笠キャンパスが水没したように見える。
Copyright A.Kitaoka 2004 (August 14)
ここが水没するようでは京都市街全域水没で~す。もちろん大阪も、神戸も。
金閣
京都市北区にある。立命館大学より徒歩10分、バスで2つ目。
応募作品
① 錯視デザイン集「錯四季」
② 錯視デザイン集「口紅」
③ 色が動く錯視におよぼす効果を調べた論文
"The effect of color on the optimized Fraser-Wilcox illusion"
(ワードファイル、75MB と巨大なので注意)
以下、論文の要点
「蛇の回転」
蛇の円盤が勝手に回転して見える。
Copyright A.Kitaoka 2003 (September 2, 2003)
基本錯視を説明した論文(最適化型フレーザー・ウィルコックス錯視)(PDF)
(北岡による勝手な)
最適化型フレーザーウィルコックス錯視の最新の分類
以下、最適化型フレーザー・ウィルコックス錯視 Type I で説明
黒→灰色、白→灰色
黒→灰色
白→灰色
黒→灰色 の代わりに 黒→マゼンタ(赤と青の合成色)
結論1 暗から明への錯視は、赤あるいは青に置き換えると錯視量が増すようである。
白→灰色 の代わりに 黄→緑
結論2 明から暗への錯視は、黄あるいは緑に置き換えると錯視量が増すようである。
黒→灰色 の代わりに 黒→マゼンタ(赤と青の合成色)
白→灰色 の代わりに 黄→緑
結論3 暗から明への錯視を赤あるいは青に置き換え、明から暗への錯視を黄あるいは緑に置き換えると、錯視量が大いに増すようである。
まとめ
錯視デザインは、色の科学と芸術の発展に貢献できる!