京都工芸繊維大学・大学院・講演
2008年7月8日(火)16:10-17:40


錯視
A variety of color illusions

北 岡  明 佳 立命館大学文学部心理学専攻

Since July 5, 2008


錯視(visual illusion)とは、視覚性の錯覚のことである。「目の錯覚」と呼んでもOKであるが、錯視の多くはすべては目ではなく脳で起こると考えられる。また、錯視と言う場合は、錯覚のうち比較的低次なものを指すことが多い。


錯視 (本日のメニュー)
 1. 色の対比
 2. 色の同化
 3. 彩度対比
 4. ムンカー錯視
 5. 色の土牢錯視
 6. 遠隔色対比・遠隔色同化
 7. 「第3の」強力な色相の錯視
 8. 色のフィリング・イン
 9. 図地分離による色の錯視
10. 色収差による錯視
11. 主観色
12. 色の残像

 1. 色の対比 (Color contrast)

色の対比

ある領域が別の色の領域で囲まれると、そこに囲んだ色の反対色が誘導される現象。灰色領域が青で囲まれると黄が誘導され(左図)、同じ灰色領域が黄で囲まれると青が誘導される(右図)。


「強化型色対比」

正方形の色は a = d と b = c のように見えるが、物理的な色は b = d である。

by Akiyoshi Kitaoka 2005 (May 27)

ただの色対比にあらず。上下の正方形を取ると、錯視量が減る(下図)。

Piersの論文1)に刺激されて作成。

1) Howe, P. D. L. (2005) White's effect: Removing the junctions but preserving the strength of the illusion. Perception, 34, 557 - 564.

もし先行研究で同じものがあるのを発見されましたら、ご一報下さい。直ちに修正します。 北岡にメールする


"Color contrast: Miscellaneous 2007 YR"

(a)-(g) The central square in the left half appears to be more reddish or less yellowish than that in the right one, though they are identical in color. (a)-(d) are the new demonstrations. (e) is the standard type. (f) is known (I guess). (g) is the enhanced color contrast I presented before. (h) is chromatic White's effect, where the central square in the left half might appear to be more yellowish or less reddish than that in the right one. 

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (February 6)


"Color contrast: Miscellaneous 2007 GB"

(a)-(g) The central square in the left half appears to be more bluish or less greenish than that in the right one, though they are identical in color. (a)-(d) are the new demonstrations. (e) is the standard type. (f) is known (I guess). (g) is the enhanced color contrast I presented before. (h) is chromatic White's effect, where the central square in the left half might appear to be more greenish or less bluish than that in the right one. 

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (February 6)


"Color contrast: Miscellaneous 2007 YB"

(a)-(g) The central gray square in the left half appears to be more bluish or less yellowish than that in the right one, though they are identical in color. (a)-(d) are the new demonstrations. (e) is the standard type. (f) is known (I guess). (g) is the enhanced color contrast I presented before. (h) is chromatic White's effect, where the central gray square in the left half might appear to be more yellowish or less bluish than that in the right one. 

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (February 6)


"Brightness contrast: Miscellaneous 2007"

(a)-(k) The central square in the left half appears to be darker than that in the right one, though they are identical in luminance. (a)-(h) are the new demonstrations. (i) is the standard type. (j) is known (I guess). (k) is the enhanced brightness contrast I presented before. (l) is White's effect, where the central square in the left half appears to be brighter or lighter than that in the right one. 

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (February 5)


誘導部分が分節化(articulation)していると、明るさ対比の効果は大きい(Gilchrist and Annan, 2002)。


分節化は色の錯視には有効でないかもしれない


これでもダメな感じ。


栗木一郎先生のデモ  元のページ(NTT CS基礎研究所)  そのコピー(アクセスできない場合に使用) 


最初に作った作品「ドラゴン」・・・錯視量が少ない↓

左の大きい正方形の中心の小さい正方形は緑色に見えるが、下の列の左の黒(r = 50, g = 50, b = 50)と同じである。一方、右の大きい正方形の中心の小さい正方形は紫色に見えるが、下の列の右の灰色(r = 80, g = 80, b = 80)と同じである。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2005 (October 13)


「緑のタヌキ」と「ピンクの正方形」・・・色の恒常性の一種?色の対比の一種?

中央の灰色が緑に見える。こういう深い緑はモニターでは出せないはずだったのだが・・・

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2005 (October 14)

中心の小さい正方形はピンクに見えるが、実際には灰色(のグラデーション)である。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2005 (October 14)


「レッド錯視 2」

9つの小さい正方形の色は左下の灰色のグラデーションなのだが、赤みがかって見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (March 2)

そのように見えない人は、しばらく眺めていると見えてくるようになるかもしれない。


「青緑色錯視」

9つの小さい正方形の色は左下の灰色のグラデーションなのだが、青緑がかって見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (March 2)

そのように見えない人は、しばらく眺めていると見えてくるようになるかもしれない。


キルシュマンの法則(色の対比の法則) (2009年3月5日修正、Graham and Brown (1965) からの抄訳)
(1)誘導領域(取り囲む領域)と比較してテスト領域(ターゲット領域)が小さければ小さいほど、色の対比は大きい。

(2)色の対比は2つの領域が離れていても起こる。しかし、離れれば離れるほど対比の効果は減少する。

(3)色の対比の量は誘導領域の面積によって異なる。

(4)色の対比は、明るさの対比がないか少ないところで最大となる。 (第3法則と呼ばれる)

(5)明るさが同じならば、色の対比は誘導する色の飽和度(彩度)に影響される。


---(以下、講演時の文面)

キルシュマンの法則(色の対比の法則)
1. 誘導領域に比較して検査領域が小さいほど色の対比は大きい。

2. 色の対比は誘導領域と検査領域が離れていても生じるが、その間隔が大きくなるほど効果は小さくなる。

3. 明るさの対比が少ない時に、色の対比の効果は大きい。

4. 誘導領域が大きいほど色の対比の効果は大きい。(法則3と4は入れ替わっている場合がある)

5. 明るさが等しいとき、誘導領域の彩度が高い方が色の対比の効果は大きい。

---(ここまで)

Graham, C. H. and Brown, J. L. (1965) Color contrast and color appearance: Brightness constancy and color constancy. In C. H. Graham (Ed.), Vision and visual perception, New York: John Wiley & Sons (pp 452-478). (In this paper, the third and fourth laws are exchanged)

Kirschmann, A. (1891) Über die quantitativen Verhältnisse des stimultanen Helligkeits- und Farben-Contrastes. Phil. Stud., 6, 417-491.

Yund, E. W. and Armington, J. C. (1975) Color and brightness contrast effects as a function of spatial variables. Vision Research, 15, 917-929.

法則3には否定的見解が出ている。
Kinney, J. A. S. (1962) Factors affecting induced colors. Vision Research, 2, 503-525.
Oyama, T. and Hsia, Y. (1966) Compensatory hue shift in simultaneous color contrast as a function of separation between inducing and test fields. Journal of Experimental Psychology, 71, 405-413.
しかし、

「入学式」

灰色で描いたサクラの花びらに、色が付いて見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (March 2)

図にカーソルを載せると、花びらは灰色であることがわかる。


「サクラ」

灰色のグラデーションで描いたサクラの花びらに、色が付いて見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (March 2)


「論語式色の対比」

左右の文字は同じ灰色であるが、左の文字は色が赤みがかって見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (July 7)

テキストは「論語の世界」より借用


「論語式色の対比 2」

左右の文字は同じ灰色であるが、左の文字は色が緑みがかって見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (July 7)

テキストは「論語の世界」より借用


 2. 色の同化 (Color assimilation)

色の同化
(視覚の実験的研究でよく出てくるタイプ)

ある領域に、色の付いた細い線が乗ると、その色味が誘導されて見える現象。赤い領域に青線を乗せると赤紫に見え(左図)、同じ赤の領域に黄線を乗せるとオレンジ色に見える(右図)。


色の同化
(デザインの教科書等によく見かけるタイプ)

等間隔で細い縞模様を描くと、隣合った色相が誘導される。左の赤は青みがかって見え、右の赤は黄みがかかって見える。


「ひまわりとダリア」

同じ赤が青味がかったり、オレンジ色に見える。

Copyright A.Kitaoka 2001


「論語式色の同化」

左右の赤の背景は同じ色であるが、右の方がややオレンジっぽく見える。

produced by Akiyoshi .Kitaoka 2008 (July 7)

テキストは「論語の世界」より借用


「論語式明るさの同化」

左右の灰色の背景は同じ明るさであるが、右の方がやや明るく見える。(暗く見えるような気もするなあ)

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (July 7)


「顔色がよくなる錯視」

顔色がよくなった。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (March 10)


 3. 彩度対比 (Saturation contrast?)

彩度対比

彩度(色の鮮やかさ)の高い色に囲まれた領域の彩度は低く見え(左図)、彩度の低い色の囲まれた領域の彩度は高く見える(右図)。


「絆創膏」

絆創膏(バンドエイドあるいはカットバン)の真ん中の正方形は左右とも同じ色であるが、左の方が鮮やかに見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (January 6)


「論語式彩度対比」

左右の文字は同じ色であるが、右の方があざやかに見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (July 7)


酒井の色対比・・・彩度対比の一種?色の対比の一種?色の恒常性の一種?


中の正方形の色は同じであるが、左のは灰色に見える。

中の正方形の色は同じであるが、右のは灰色に見える。


左上5列の「灰色」と右下5列の「赤」は物理的には同じであり、右上5列の「灰色」と左下5列の「緑」は物理的には同じである。


左上5列の「灰色」と右下5列の「青」は物理的には同じであり、右上5列の「灰色」と左下5列の「黄」は物理的には同じである。

酒井香澄(「Landの二色法による色再現とBelseyの仮説検証」立命館大学文学部哲学科心理学専攻2002年度卒業論文)の発見をベースにしている。


「あじさい」

斜めに並んだ3個同士は同じ色であるが、右の方が赤味が多く見える。

Copyright A.Kitaoka 2005 (May 26)


「みやびなカメ」

カメには赤、緑、灰色の3種類がいるように見えるが、物理的な色で言えば2種類しかいない。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (January 6)

cf. Snake illusion: Adelson, E. H. (2000) Lightness perception and lightness illusions. In M. Gazzaniga (Ed.), The New Cognitive Neurosciences, 2nd ed. Cambridge, MA: MIT Press. (pp. 339-351).


 4. ムンカー錯視 (Munker illusion)

ムンカー錯視

黄と青の縞の青部分に赤を乗せるとオレンジ色に見え、黄部分に赤を乗せると赤紫がかって見える。緑を乗せるとそれぞれ黄緑と青緑に見える。高空間周波数図形で錯視量が多い。

Munker, H. (1970) Farbige Gitter, Abbildung auf der Netzhaut und übertragungstheoretische Beschreibung der Farbwahrnehmung. München: Habilitationsschrift.

ムンカー錯視のページ


cf. ホワイト効果

White, M. (1979) A new effect on perceived lightness. Perception, 8, 413-416.


ムンカー錯視を用いた作品「赤の渦巻き」↓

赤紫がかった赤い螺旋とオレンジ色がっかった赤い螺旋があるように見えるが、どちらも同じ赤である。

Copyright A.Kitaoka 2002
(c)北岡明佳 2002 「トリックアイズ」 (カンゼン刊)


ムンカー錯視を用いた作品「緑の渦巻き」↓

黄緑の螺旋と青緑の螺旋があるように見えるが、どちらも同じ緑である。

Copyright A.Kitaoka 2002
(c)北岡明佳 2002 「トリックアイズ」 (カンゼン刊)


ムンカー錯視を用いた作品「水色と黄緑の渦巻き」↓

水色の螺旋と黄緑の螺旋があるように見えるが、どちらも同じ色(r = 0, g = 255, b = 150)である。この色の錯視はモニエ・シェベル錯視に近いと思うが、彼らの理論には合わないのかもしれない。

Copyright A.Kitaoka 2003


cf. モニエとシェベルの図

Monnier, P. and Shevell, S. K. (2003) Large shifts in color appearance from patterned chromatic backgrounds. Nature Neuroscience,  6, 801-802.

cf. Howe, P. D. L. (2005) White's effect: Removing the junctions but preserving the strength of the illusion. Perception, 34, 557 - 564.


ムンカー錯視を用いた作品「レモン色の渦巻きとクリーム色の渦巻き」・・・被誘導領域は2つの誘導領域の明るさの中間になくてもよい↓

「レモン色の渦巻きとクリーム色の渦巻き」

渦巻きにはレモン色のとクリーム色のと2種類あるように見えるが、どちらも同じ黄色(R255, G255, B0)である。

Copyright A.Kitaoka 2005 (May 22)


「青と黄の渦巻き・昼と夜」

左の青と黄の渦巻きは鮮やかに見えるが、右のはダルに(鮮やかさが少なく)見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (January 8)


「武田信玄」

薄い黄色と濃い青色の渦巻きがあるように見えるが、左半分は白(R=255, G=255, B=255)と黒(R=0, G=0, B=0)であるのに対し、右半分は黄(R=255, G=255, B=0)と青(R=0, G=0, B=255)である。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (March 12)

「風林火山」

「武田信玄」の白黒黄青と同じであるが、この図では違いがはっきりわかる。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (March 12)


「小家族」

左の鳩も右の鳩も同じ色なのだが、左の方は黄味がかって見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (March 12)


 5. 色の土牢錯視 (Chromatic dungeon illusion)

「犬」

赤い犬は2種類、緑の犬も2種類いるように見えるが、それぞれ同じ赤と緑である。色の土牢錯視である。
別バージョン  別バージョン2

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (January 5)

土牢錯視(dungeon illusion)(Bressan, 2001)とは?

左の「牢屋」の灰色のダイヤモンド形は右のよりも明るく見えるが、物理的には同じ明るさである。

Bressan, P. (2001) Explaining lightness illusions. Perception, 30, 1031-1046.


色の土牢錯視とは?

左の「牢屋」のダイヤモンド形はオレンジ色に、右のは少し紫がかった赤に見えるが、物理的には同じ色である。

引用文献は調査中(ないかもしれない)

色の土牢錯視は雰囲気はムンカー錯視だが、普通に色の同化で説明することも可能だし、ゲシュタルト要因を考えて色の対比というのもあるのかもしれない。

次の犬年は11年後か・・・


「バレンタインデー・錯視ギフトセット」

ピンクのハートとオレンジのハートは実際には同じ色である。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (January 12)

cf. Dungeon illusion: Bressan, P. (2001) Explaining lightness illusions. Perception, 30, 1031-1046.


「水色と黄緑色のハートの絨毯」

水色のハートと黄緑色のハートがあるように見えるが、どちらも同じ色である。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (January 10)

cf. Dungeon illusion: Bressan, P. (2001) Explaining lightness illusions. Perception, 30, 1031-1046.


「水色と黄緑色のハートの絨毯(部分)」

水色のハートと黄緑色のハートがあるように見えるが、どちらも同じ色である。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (January 10)

cf. Dungeon illusion: Bressan, P. (2001) Explaining lightness illusions. Perception, 30, 1031-1046.


「黄色のハートと青のハート」

この図には青紫と橙と灰色しか使っていないのに、黄色のハートと青のハートが見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (January 12)

cf. Dungeon illusion: Bressan, P. (2001) Explaining lightness illusions. Perception, 30, 1031-1046.


「黄と白のハート」

黄色のハートと白のハートがあるように見えるが、物理的には同じ黄色である。*

*物理的には黄色、という表現は、厳密に言えば心理学的ではないなあ・・・

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (January 10)

cf. Dungeon illusion: Bressan, P. (2001) Explaining lightness illusions. Perception, 30, 1031-1046.


「錯視色のハート 2」

実際にはハートは灰色なのだが、水色がかって見えるか、黄緑色がかって見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (March 3)


「ハートのきれ」

ハートはオレンジ色なのだが(R=255, G=200, B=130)、ピンクがかって見えるか、黄色に見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (March 3)


「おひなさまぎらぎらハート」

実際にはハートは青緑色(R=0, G=255, B=150)なのだが、水色がかって見えるか、黄緑色がかって見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (March 3)


 6. 遠隔色対比・遠隔色同化 (Remote color conrtrast and assimilation)

遠隔色対比

赤い線がある程度青い線より離れたところに置かれると、青の補色の黄色味がかって見える。黄色の線の間に置かれると黄の補色の青味がかって見える。

北岡明佳 (2001) 錯視のデザイン学(6)・色彩知覚の知られざる不安定性 日経サイエンス, 31(7), 128-129.


作品「色の分裂」・・・遠隔色対比の誘導図形は線でなくてもよい。↓

青色の正方形のまわりの赤はオレンジ色に見え、黄色の正方形のまわりの赤はマゼンタ色に見えるが、同じ赤である。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2005 (May 27)


遠隔色同化

赤い線がある程度青い線より離れてはいるが近くに置かれると、青味がかって見える。黄色の線に近づくと、黄味がかって見える。

北岡明佳 (2001) 錯視のデザイン学(6)・色彩知覚の知られざる不安定性 日経サイエンス, 31(7), 128-129.


遠隔色対比と遠隔色同化を用いた作品「赤いメガネ」↓

左右のメガネの赤は同じであるが、違った色に見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2005 (April 18)


遠隔色対比と遠隔色同化を用いた作品「花屋さん」↓

同じ赤がオレンジ色やマゼンタ色に見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2002
in Trick Eyes, 2002


 7. 「第3の」強力な色相の錯視

遠隔色対比と「色の逆同化」の組み合わせによる色の錯視表現


基本図形

cf. ムンカー錯視と色の土牢錯視


「色の逆同化」

左の赤はやや青みかがって見え、右の赤はやや黄みががって見える。


「論語式色の逆同化」

左右の文字は同じ色であるが、左は水色、右は黄緑色に見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (July 7)


「論語式色の逆同化 2」

左右の文字は同じ橙であるが、左はより赤く、右はより黄色く見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (July 7)


「論語式色の逆同化 3」

左右の文字は同じ青であるが、右は彩度が低く見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (July 7)


「4枚カード問題」

カードの内側のグリッドが水色と黄緑に見えるが、同じ色である。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (July 7)


「ぐるぐる 7」

それぞれの同心円の内側の4つのリングは同じ色であるが、違う色に囲まれると異なって見える。画面から離れてみた方が効果が大きい。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (January 15)

「ぐるぐる」という絵本がある。

  鈴木亜弥(絵)・安井智草(文) 「ぐるぐる」 新風舎 ISBN4-7974-5595-0 (定価1000円 + 税)


「ぐるぐる 6」

それぞれの同心円の内側の4つのリングは同じ色であるが、違う色に囲まれると異なって見える。画面から離れてみた方が効果が大きい。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (January 15)


「ぐるぐる 3」

それぞれの同心円の内側の4つのリングは同じ色であるが、違う色に囲まれると異なって見える。画面から離れてみた方が効果が大きい。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (January 15)


 8. 色の補完

ネオン色拡散

色の十字の周りがパッチ状に同色に色づいて見える。

Varin, D. (1971) Fenomeni di contrasto e diffusione cromatica nell'organizzazione spaziale del campo percettivo. Rivista di Psicologia, 65, 101-128.

Van Tuijl, H. F. J. M. (1975). A new visual illusion: Neonlike color spreading and complementary color induction between subjective contours. Acta Psychologica, 39, 441-445.

Redies, C. and Spillmann, L. (1981). The neon color effect in the Ehrenstein illusion. Perception, 10, 667-681.


「ネオン色拡散による針差し格子錯視」1)

一様な白い背景上を縦横に水色の線が走って見える。「クモの巣の糸」(Spinnwebfäden)2)あるいは「色の筋」(colored street)3)と呼ばれたものと同じと考えられる。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2001

1) 北岡明佳 (2001) 錯視のデザイン学(7):工学的にはとらえきれない幻の光知覚 日経サイエンス, 31(8), 66-68.

2) Prandtl, A. (1927). Über gleichsinnege Induktion und die Lichtverteilung in gitterartigen Mustern. Zeitschrift für Sinnesphysiologie, 58, 263-307.

3) Redies, C., Spillmann, L. and Kunz, K. (1984). Colored neon flanks and line gap enhancement. Vision Research, 24, 1301-1309.


「色光線錯視2」1)

一様な白い背景上を黄色の線が斜めに走って見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2001

1) 北岡明佳 (2001) 錯視のデザイン学(7):工学的にはとらえきれない幻の光知覚 日経サイエンス, 31(8), 66-68.


「色光線錯視3」1)

一様な白い背景上を緑色の線が斜めに走って見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2001

1) 北岡明佳 (2001) 錯視のデザイン学(7):工学的にはとらえきれない幻の光知覚 日経サイエンス, 31(8), 66-68.


「黄ばみ錯視」

格子の中央部分が黄ばんで見える。しかし、これらの図には黄色は使っていないし、輝度条件から考えるとネオン色拡散が起こる位置が逆である。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (September 18)

cf.

Van Tuijl, H. F. J. M. (1975). A new visual illusion: Neonlike color spreading and complementary color induction between subjective contours. Acta Psychologica, 39, 441-445.

Sohmiya, S. (2005) Explanation for neon color effect in achromatic line segments on chromatic inducers based on the multiple interprertation hypothesis. Perceptual and Motor Skills, 101, 267-282.


以下、類似図形。


「黄ばみ研究C」

同心円の内部がドーナツ状に黄ばんで見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (September 27)

「黄ばみ研究B」

同心円の内部がドーナツ状に黄ばんで見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (September 27)

「黄ばみ研究A」

同心円の内部がドーナツ状に基盤ではなくて黄ばんで見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (September 27)

「黄ばみ研究S」

同心円の内部がドーナツ状に黄ばんで見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (September 27)


「謎の水彩錯視」

回廊部分が薄い黄色に色づいて見える。しかし、これらの図には黄色は使っていないし、輝度条件から考えると水彩効果が起こる位置が逆である。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (June 23)

水彩効果(watercolor effect)あるいは水彩錯視(watercolor illusion):

Pinna, B., Brelstaff, G., and Spillmann, L. (2001) Surface color from boundaries: a new ‘watercolor’ illusion. Vision Research, 41, 2669-2676.



下図は水彩錯視いろいろ


 9. 図地分離による色の錯視

A と D、B と C が同じ感じに見えるが、物理的には C と D が同じである。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2005 (August 12)


「馬」

黄色の馬と赤色の馬が描かれているように見えるが、物理的にはどちらも同じ色の馬である。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2005 (August 18)

(CorelDRAW 9 のクリップアートを使用)


「月とブラックホール」

円内は上下とも同じパターンであるが、上は月に見え、下はブラックホールに見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (August 25)


「サーチライト」

黄色のサーチライトが当たっているように見える。各縦列の円の中の色グラデーションは同じであるが、上2つは黄色の円に見え、下2つは青の円に見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2005 (December 7)


「満月と夕日」

円内は左右で同じパターンであるが、左は満月に見え、右は夕日に見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (August 21)


Color phantoms


 10. 色収差による錯視 (Chromatic abberation-dependent illusion)

色立体視(進出色・後退色) (chromostereopsis)

赤が青より手前に見える人が過半数を占めるが、青が赤よりも手前に見える人も20%程度いる。


「青い穴」

青い穴が開いているように見える。離れて見ると効果的。孔の周囲のドットが赤紫に見えるが、その外側の赤と同じ色である。

Copyright Akitaoka Kitaoka 2007 (March 9)


「カマボコ」

赤い部分がカマボコ形の頂点に見える、という見え方をする人が多いと推定される。

Copyright A.Kitaoka 2003


色収差による色ずれの作品「色収差錯視チェッカーボード」・・・めがねの人専用↓

「色収差錯視チェッカーボード」

近眼で眼鏡をかけている人は、顔を右に向けて目は左でこの図を見ると、上半分のそれぞれの正方形の左側は鮮やかな水色、右側は黄色(あるいはオレンジ色)に見える。この時、下半分の正方形の両側は緑色に見える。顔を左に向けた場合はその反対。遠視あるいは老視の眼鏡をかけている人は多分逆。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2005 (October 9)


色収差による色ずれの作品「額がガクガク」↓

青い線の正方形が赤と緑の境界のところでずれているように見える。作者にはそう見えるが、理論的にはそう見えない人もいると思われる。そのほか、ヘルマン格子錯視や色の同化が見られる。

Copyright A.Kitaoka 2003 (June 16, 2003)


 11. 主観色 (Subjective color)

「宇宙線とオーロラ」

モノクロ画像なのに主観色が見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (June 5)

cf. Luckiesh, M. and Moss, F. K. (1933) A demonstrational test of vision. American Journal of Psychology, 45, 131-139. (I do not know the appropriate reference of this type of subjective color)


ベンハムのコマ(フェヒナー色)

回転すると色が見える。


色が変わる錯視の作品「2つの輪」

内側のリングは縮小して見え、外側のリングは拡大して見える(最適型フレーザー・ウィルコックス錯視)。中心を見ながら図に目を近づけたり遠ざけたりすると、リングがお互いに反対方向に回転して見える(回転オオウチ錯視)。また、中心を見ながら図に目を近づけると内側のリングが赤味を増し、目を遠ざけると外側のリングが赤味を増す。1つの図で3つも錯視が楽しめるおトクな錯視デザイン。

Copyright A.Kitaoka 2005 (April 1)

トリック・アイズ グラフィックスに掲載


色が変わる錯視を説明する仮説・・・処理速度説↓

刺激イメージが網膜上で動いた場合、長波長の刺激の視覚処理が早く、短波長の刺激の視覚処理が遅いと考えると説明できる。図では矢印の先の赤が増加して見え、後方に残る青は黄色と打ち消しあって無彩色に近くなる。


 12. 色の残像 (Color afterimage)


色の残像

一方の十字をしばらく(10秒以上)眺めて、もう一方の十字に目を移すと、色の陰性残像(反対色)が見える。


「赤いハートとピンクのハート」

左の図形をしばらく見つめ、右の空白に目を移すと、その赤いハートとピンクのハートが見える。左のハートは水色と黄緑に見えるが、実際には同じ色(R=0, G=255, B=151)なので、同じ色が違う色の残像を生じさせるわけである。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (June 5)



「ピンクのハートとオレンジのハート」

左上と右下のハートは黄色く見え、右上と左下のハートは青白く見えるが、どちらも背景と同じ白である。このハートの陰性残像は、それぞれピンクのハートとオレンジのハートである。左の十字を目を動かさず10秒以上眺め、右の十字に目を移すと、短時間見える。「陰性残像」(negative afterimage)とは反対色に見える残像という意味なので、将来、用語を変更する必要が出てくるかもしれない。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (May 25)


「赤い玉と黄色い玉」

左の十字を10秒以上見つめ、右の十字に目を移すと、その上下に色の付いた円が見える。上は水色の背景の上に赤色の円が9つ、下は青の背景の上に黄色の円が9つ見える。左側の順応刺激の9つずつの円は灰色(30%ブラック、あるいは、R=178, G=178, B=178)であるから、無彩色の残像として有彩色が見えたことになる。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (May 22)


「武田信玄の顔色変化」

この動画は、2枚の静止画から成っている。1枚目(下図「風林火山」)は6秒間提示され、2枚目(下図「武田信玄」)は1秒だけ提示される。どちらの画像も、左側は白と黒の渦巻きで、右側は黄と青の渦巻きである。どこか同じ場所を見つめながら眺めていると、6秒間提示される1枚目は「正しく」見えるが、1秒間だけ提示される2枚目は、左側は黄と青の渦巻きで、右側は白と黒の渦巻きに見える。この錯視は、「錯視残効」 というものに違いない(そんなカテゴリーは今までなかったと思うが)。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (November 27)


下図は6秒間提示

「風林火山」

渦巻きの色は、下図「武田信玄」の白黒黄青と同じであるが、この図では違いがはっきりわかる。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (March 12)


↓↑


下図は1秒間提示

「武田信玄」

薄い黄色と濃い青色の渦巻きがあるように見えるが、左半分は白(R=255, G=255, B=255)と黒(R=0, G=0, B=0)であるのに対し、右半分は黄(R=255, G=255, B=0)と青(R=0, G=0, B=255)である。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (March 12)


ご清聴ありがとうございました。





オマケ

錯視の分類
1. 形の錯視(幾何学的錯視) カタログ 専門書
2. 明るさの錯視  カタログ 
3. 色の錯視  カタログ(配布資料) 
4. 動きの錯視  静止画が動いて見える錯視のカタログ

(5. 立体視の錯視)
(6. 視覚的補完の錯視) カタログ
(7. だまし絵) 解説
錯視のカタログのページ
錯視のカタログのある本
関連する知覚心理学の本
北岡の「だまされる視覚 錯視の心理学」(2007年)
ニュートンムック「錯視 完全図解」(2007年)
他の錯視に及ぼす色の効果
   
色が動く錯視に及ぼす効果(ロレアル賞受賞記念講演)
参考 色彩学会2005年シンポジウムの発表

北岡明佳の錯視のページ