学際的研究による顔認知メカニズムの解明
平成22年度班会議@沖縄県那覇市・沖縄県市町村自治会館
2010年12月23日(金)あるいは24日(金)発表

研究
しい

立命館大学文学部心理学専攻 北 岡 明 佳

2010年12月12日より  抄録 ハンドアウト


要約:アイシャドーとアイラインによる視線方向の錯視を発見した。


1. アイシャドーによる視線方向の錯視

1.1 暗いアイシャドーによる視線方向の錯視(視線方向対比)

左上の顔は上向きの視線に、右上は下向き、左下は向かって左向きの視線に、右下は向かって右向きの視線に相対的に変位して見える。すなわち、視線方向は付けたアイシャドーとは反対の方向に変位して見える。



この錯視を起こすためにはベタ塗りでよい。グラデーションに描かなくてもよい。



上下両方あるいは左右両方にアイシャドーを付けると、この錯視はキャンセルされる。



両眼にそれぞれ上下にアイシャドーを付けると、どこを見ているかわからない顔になる。一方、両眼の耳側にアイシャドーを付けると寄り目に見え、鼻側に付けると開散した目に見える。目の相対的位置が変わって見える幾何学的錯視も起きる。



「メガネ」の位置を操作することでジョヴァネッリ錯視やミュラー・リヤー錯視の仲間の幾何学的錯視(位置の錯視、大きさの錯視)を示すことができる。しかし、視線方向は変わって見えない?



「メガネ・ウォラストン錯視」・・・目に対するメガネの相対的ズレの方向に視線方向がズレて見える(かも?)



「メガネ・ウォラストン逆錯視」あるいは「メガネの枠の中の黒目の位置の効果」・・・目に対するメガネの相対的ズレと反対方向(目に近いフレームの方向)に視線方向がズレて見える。



(もう一度確認)

1.1 暗いアイシャドーによる視線方向の錯視(対比的効果)


1.2 明るいアイシャドーによる視線方向の錯視(同化的効果)

左上の顔は上向きの視線に、右上は下向き、左下は向かって左向きの視線に、右下は向かって右向きの視線に相対的に変位して見える。すなわち、視線方向は付けたアイシャドーの方向に変位して見える。


1.3 暗いアイシャドーと明るいアイシャドーによる視線方向の錯視の合成

左上の顔は上向きの視線に、右上は下向き、左下は向かって左向きの視線に、右下は向かって右向きの視線に相対的に変位して見える。すなわち、視線方向は暗いアイシャドーとは反対方向に、明るいアイシャドーとは同方向に変位して見える。

肌と白目の間の輝度コントラストが相対的に低い側に視線方向が変位して見える錯視であるとも言える。


2. アイラインによる視線方向の錯視

2.1 暗いアイラインによる視線方向の錯視(同化的効果)

左上の顔は上向きの視線に、右上は下向き、左下は向かって左向きの視線に、右下は向かって右向きの視線に相対的に変位して見える。上下は筆者には弱い同側変位だが、左右は反対側変位と一貫していない。


2.2 明るいアイラインによる視線方向の錯視(対比的効果)

左上の顔は上向きの視線に、右上は下向き、左下は向かって左向きの視線に、右下は向かって右向きの視線に相対的に変位して見える。上下は筆者には弱い反対側変位だが、左右は反対側変位に見えたり、同側変位に見えたりする。


2.3 暗いアイラインと明るいアイラインによる視線方向の錯視の合成

左上の顔は上向きの視線に、右上は下向き、左下は向かって左向きの視線に、右下は向かって右向きの視線に相対的に変位して見える。


2.4 アイシャドーとアイラインによる視線方向の錯視の合成

左上の顔は上向きの視線に、右上は下向き、左下は向かって左向きの視線に、右下は向かって右向きの視線に相対的に変位して見える。すなわち、上2つの図では、視線方向は暗いアイシャドーと明るいアイラインとは反対方向に、明るいアイシャドーと暗いアイラインとは同方向に変位して見える。下2つの図では、視線方向は暗いアイシャドーと暗いアイラインとは反対方向に、明るいアイシャドーと明るいアイラインとは同方向に変位して見える。


2.5 アイシャドーによる錯視は実はアイラインによる錯視かもしれないことを示唆する図

上図: アイシャドーのせいで目の輪郭に暗いアイラインを描いたのと同様の視線方向の錯視(アイラインと同側に寄る)となっている。下図: 目の輪郭を取ると、視線方向の錯視が減少する?



上図: アイシャドーのせいで目の輪郭に明るいアイラインを描いたのと同様の視線方向の錯視(アイラインと反対側に寄る)となっている。下図: 目の輪郭を取ると、視線方向の錯視が減少する?


オマケ

3. その他の視線方向の錯視いろいろ

3.1 目の枠の中の黒目の位置の効果

あたりまえと言えばあたりまえ


3.2 虹彩の中の瞳孔の位置の効果


3.3 プルキンエ・サンソン像の位置の効果


3.4 顔の向きの効果(ウォラストン錯視)

(目は4顔すべてで同じに描いてある)


3.5 白目の輝度勾配の効果(充血錯視)


3.6 渡辺錯視

特定の位置関係においては、視線は目の枠の中心と黒目を結ぶ線上からずれて見える。基礎生物学研究所の渡辺英治准教授が2010年に発見。


とうざいした。


 北岡明佳の錯視のページ

北岡明佳 (2010) 顔の錯視について 日本顔学会ニューズレター, 43, 2. new!

Kitaoka, A. (2010) Face illusions. Talk in the symposium "Multiphasic approaches to elucidate face perception", Japanese Psychological Association, the 74th Conference, September 20, 2010, 15:30-17:30, Osaka University. Presentation (html) new!

北岡明佳 (2009) 「顔の錯視研究の最前線?」 (文部科学省科研費新学術領域「学際的研究による顔認知メカニズムの解明」・2009年度第1回心理班研究会・「錯視と顔認知」・立命館大学衣笠キャンパス・恒心館729教室・2009年12月13日(日)発表) 発表に使用したウェブページ

北岡明佳 (2009) 「顔の錯視の探索的研究」 (新学術領域研究「学際的研究による顔認知メカニズムの解明」】・平成21年度第1回領域班会議 ウェルシティ札幌・2009年8月19日(口頭)・20日(ポスター)) 発表に使用したウェブページ