高大連携協定校プログラム 
文学部 高大連携アカデミックプログラム 「夏期セミナー」
2010年8月2日(月)
敬学館250

「錯覚について考える」
北岡 明佳 (立命館大学 文学部 心理学専攻email HP

2010/7/30より


錯覚とは、対象に関する知識とその対象の知覚のズレが認識されたものである。


金閣
(立命館大学より徒歩10分)



「青い金閣」

金閣の金箔部分は物理的には青みがかった灰色なのであるが、金色に見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2009 (May 1)




元の写真


色の恒常性

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2009 (July 26)

 第8回産学官連携推進会議 「錯視(visual illusion)の実験心理学的研究」 立命館大学研究シーズのブース 京都国際会館 6月20日(土)、21日(日)

<配布プリント>



色彩輝度計


JIS 標準色票 (JIS Z 8721)

例: あざやかな赤なら、5R 4/14 と表す。



<配布プリント>


金閣?


「立命館湖」

立命館大学衣笠キャンパスが水没したように見える。

Copyright A.Kitaoka 2004 (August 14)

ここが水没するようでは京都市街全域水没で~す。もちろん大阪も、神戸も。

実際の風景

<源氏物語絵巻の錯覚>

男性のイメージもほぼ同様である。


末摘花

(明け方、「雪景色を見ませんか」と誘って、とうとう姫の姿を見ることができた光源氏だったが・・・)


 
見ぬやうにて、外の方を眺めたまへれど、後目はただならず。「いかにぞ、うちとけまさりの、いささかもあらばうれしからむ」と思すも、あながちなる御心なりや。

 まづ、居丈の高く、を背長に見えたまふに、「さればよ」と、胸つぶれぬ。うちつぎて、あなかたはと見ゆるものは、鼻なりけり。ふと目ぞとまる。普賢菩薩の乗物とおぼゆ。あさましう高うのびらかに、先の方すこし垂りて色づきたること、ことのほかにうたてあり。色は雪恥づかしく白うて真青に、額つきこよなうはれたるに、なほ下がちなる面やうは、おほかたおどろおどろしう長きなるべし。痩せたまへること、いとほしげにさらぼひて、肩のほどなどは、いたげなるまで衣の上まで見ゆ。「何に残りなう見あらはしつらむ」と思ふものから、めづらしきさまのしたれば、さすがに、うち見やられたまふ。

紫式部著 源氏物語 「末摘花」 より (テキストは、渋谷栄一著(C)「源氏物語の世界」のウェブ版より


紫式部の描写に従って末摘花を描くと (目と眉と口は普通に描いた)


(ガリガリにやせていて、しもぶくれの顔というのは難しいですよ、紫式部先生)


紫式部が不細工な顔立ちとして描写したものを反対にしてみた女性の顔

実に普通な感じになった。


源氏物語は紫式部(11世紀初頭?)著

源氏物語絵巻は藤原隆能(たかよし)(12世紀中葉?)筆?


<自由意志の錯覚>

配布プリントは下記(B4表裏印刷1枚)

佐藤徳(2010)「私」の主はホントに「私」? 心理学ワールド, 50, 5-8.


参考書 →


<物理的錯覚>

「太陽が赤く見える錯覚」

太陽は色温度は6500Kなので白いはずであるが、写真ではオレンジ色に見える。夕日ともいう。朝日でも同様な「錯覚」が起きる。志賀島より撮影。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2010 (August 1)



「拡大鏡で文字が大きく見える錯覚」

文字の大きさは変わらないのに大きく見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2010 (August 1)



「モアレ: エニグマ錯視と主観色付き」

モアレ(干渉縞)は錯視扱いされることがある。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2010 (August 1)



「地磁気」

モアレ(干渉縞)は錯視扱いされることがある。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2010 (August 1)


静止画が動いて見える錯視

「最適化型」フレーザー・ウィルコックス錯視・タイプ II

「蛇の回転」

蛇の円盤が勝手に回転して見える。

Copyright A.Kitaoka 2003 (September 2, 2003)

<配布プリント>


 黒→濃い灰色→白→薄い灰色→黒 の方向に動いて見える錯視である。


「最適化型」フレーザー・ウィルコックス錯視・タイプ III


「影付きの左右に動く蛇」

蛇が左右に動いて見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2009 (June 7)


赤と紫特有の「最適化型」フレーザー・ウィルコックス錯視・タイプ V


「赤い円盤の回転」

赤い円盤が回転して見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (December 18)




最適化型フレーザー・ウイルコックス錯視群


Kitaoka, A. (2007) Phenomenal classification of the “optimized” Fraser-Wilcox illusion and the effect of color. Poster presentation in DemoNight, VSS2007, GWiz, Sarasota, Florida, USA, May 14, 2007.


この錯視のわかりやすい説明のある本

北岡明佳著 人はなぜ錯視にだまされるのか? トリック・アイズ メカニズム カンゼン刊

(定価:1,600円(税別) ISBN 978-4-86255-020-0) アマゾンのページ


北岡明佳著 錯視入門 朝倉書店 (2010年7月)  new! 

 もっと情報


Y接合部の錯視

「秋の沼2」

中の領域が動いて見える。垂直・水平のエッジが傾いて見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2003 (corrected April 12, 2006)


Y接合部の錯視の基本パターン


脳内処理時間がわかる錯視

「踊るハート達」

ハートが動いて見える。めがねをかけている人は、めがねを動かすとよく見えるかもしれない。離れたところから見ると、明るくなった時のハートは白のランダムドットより手前に見え、暗くなった時のハートは奥に見える人が過半数と予想される。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (December 20)

<配布プリント>




モノクロでOK


配布物
「踊るハート達」 (MS-Word ファイル)
北岡明佳 (2006) 色が強くなる錯視 A・F・Tジャーナル, 31 (Summer), pp. 01.


文献

Kitaoka, A. and Ashida, H. (2007) A variant of the anomalous motion illusion based upon contrast and visual latency. Perception, 36, 1019-1035. PDF

Kitaoka, A, Kuriki, I. and Ashida, H. (2006) The center-of-gravity model of chromostereopsis. Ritsumeikan Journal of Human Sciences, 11, 59-64. PDF



低輝度→脳内処理時間が長い
cf. プルフリッヒ効果

低輝度コントラスト→脳内処理時間が長い




cf. 踊るハート(fluttering-heart illusion)

(Helmholtz, 1867; Nguyen-Tri and Faubert 2003; von Grünau 1975a, 1975b, 1976; von Kries 1896)


中山(2008)によると、踊るハートは赤が重要。青不要。ピンクはダメ。
中山明子 (2008) 「踊るハート」錯視(1844)と「踊るハート達」錯視(2006)の比較検証 2008年度立命館大学文学部(人文学科心理学専攻)卒業論文

渦巻き錯視

「渦巻きの詰め合わせ」

同心円のリングが渦巻きに見える。ついでに回転して見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (June 13)

Kitaoka, A., Pinna, B., and Brelstaff, G. (2001). New variations of spiral illusions. Perception, 30, 637-646.



フレーザー錯視の渦巻き錯視

同心円が渦巻きに見える。


フレーザー錯視基本図形・・・水平に並べた斜線の列全体が傾いて見える。上から、反時計回り、時計回り、反時計回り、時計回り。


単純化したフレーザー錯視


アンモナイトの化石(本物らしい・北岡蔵・2000円もした)


ちょっと地学・古生物学のお勉強


オウムガイの例 (水生生物雑記帳)



アルキメデスの螺旋

r = a・θ

描画プログラム(Spiral1a.exe) (ウインドウズ専用)


ベルヌーイの螺旋(対数螺旋あるいは等角螺旋ともいう)

r = a・exp (k・θ)

描画プログラム(Spiral1.exe) (ウインドウズ専用)


ベルヌーイの螺旋(等角螺旋)では、螺旋上のある点と中心を結ぶ線分と、その点における接線の成す角度は、すべての点において一定である。

k = 1 / tan (φ)


線パターンによる放射状パターン (φ = 0º)

(radial pattern)

描画プログラム(SpiralGP3b.exe)(ウインドウズ専用)


線パターンによる渦巻きパターン (φ = 65º)

(spiral pattern)


線パターンによる同心円パターン (φ = 90º)

(concentric pattern)


渦巻き錯視は、局所的な傾き錯視による渦巻き検出器の誤動作で起こると考えられる。

Kitaoka, A., Pinna, B., and Brelstaff, G. (2001). New variations of spiral illusions. Perception, 30, 637-646.


文字列が傾いて見える錯視



「初芝立命館傾き錯視」

「初芝」文字列は右上がりに見えるのに対して、「初芝立命館」文字列は右下がりに見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2010 (April 14)


ツェルナー錯視

平行な4本の水平線が、上から右・左・右・左に傾いて見える。


「立命館慶祥傾き錯視」

「立命館」文字列は右下がりに、「慶祥」文字列は右上がりに見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (February 22)

この作品は、立命館慶祥中学校1年生ご一行様大学模擬講義用(2008年3月5日)に作成


「立命館心理学傾き錯視」

「立命館」文字列は右下がりに見え、「心理学」文字列は右上がりに見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (August 7)


「安全工学傾き錯視」

「安全工学」文字列は右上がりに見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (April 15)

少し動いて見えるような気も・・・




ポップル錯視

Popple, A. V. and Levi, D. M. (2000) A new illusion demonstrates long-range processing. Vision Research, 40, 2545-2549.

Popple, A. V. and Sagi, D. (2000) A Fraser illusion without local cues? Vision Research, 40, 873-878


参考

新井先生のページ(文字列が傾いて見える錯視のおそらく最初の研究レポートを含む)


ポップル錯視で説明できる文字列が傾いて見える錯視

「小原のマサナヲ錯視」

「マサナヲ」と繰り返し書くと、右下りに見える。逆順に書くと右上がりに見える。小原(2005)の卒業論文の成果である。

小原未紗 (2005) 文字列が傾いて見える錯視における水平成分の役割 立命館大学文学部(心理学専攻)2005年度卒業論文


文字列が傾いて見える錯視については、

1. 文字列が傾いて見える錯視は2005年の初頭頃から、ネット上で盛んに話題となった。(「アロマ企画」が最初?)

2. この錯視の科学的研究は、東京大学大学院数理科学研究科の先生の論文(新井・新井, 2005a, 2005b)が最初である。

3. この錯視とポップル錯視の関係を指摘したのは立命館大学の大学院生の論文(小原, 2006)である。

といった感じに今のところ私は理解しています。事実と違っていたら、メール下さい。


「小原のマサナヲ錯視」はニュートンでも取り上げられました。

北岡明佳(監修) ニュートン別冊 脳はなぜだまされるのか? 錯視 完全図解 (2007年10月刊行) 

 もっと情報


透明視

「透明に見えるビル」

中央のビル(クリスタルタワー)が透明に見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (May 1)

「透明に見える山」

中央の山が透明に見える。

Copyright Midori Takashima 2007
高島翠さんより, 2007/5/1

(東京都町田市内の小山馬場谷戸公園付近から西の方角を望む)

北岡明佳のコメント: Adelson-Anandan-Andersonのモデルで言えば、bistable transparency (両義的透明視あるいは二値安定透明視あるいは反転可能透明視)である。

なお、「透明に見える山」の報告はこれが初めてではなく、池田(1993)(関西大学『社会学部紀要』第25巻第1号pp.165-168)によると、大阪府吹田市の一角から遠望した山に見えるとして、写真が載っている。その池田によると、Metzger (1953) に既に載っている。


透明視については、以下を参照されたい。

透明視講義用のプリント

Kitaoka, A. (2005) A new explanation of perceptual transparency connecting the X-junction contrast-polarity model with the luminance-based arithmetic model. Japanese Psychological Research, 47, 175-187. Reprint or PDF request to me


関連した錯視写真



「透明に見える川」

川が透明に見える。(実際に透明ぢゃー)

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (May 1)

鴨川の上流の高野川です。清流とまでは言えませんが。


例えば、透明視(perceptual transparency)は普段は錯視扱いされないが、上図のように錯視扱いされることもある。それは、錯覚というものが、「実在する対象の特性とは異なる知覚」 であることによる。対象の実在性は実は自明のことではなく、「錯視刺激」を知覚する時に既に用意されている知識あるいはスキーマに依存する。この点が、錯視の認知心理学的性質である。


顔の錯視いろいろ

「さかさま顔の過大視」

上下の顔の大きさは同じであるが、下の方が大きく見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (February 16)

cf. 上視野の過大視、サッチャー錯視


「ウォラストン錯視(視線方向の錯視)」

向かって左の顔はこちらを見ているように見えるが、向かって右の顔は向かって右の方向を見ているように見える。しかし、絵としては、両者とも同じ目である。この錯視を視線方向の錯視(Wollaston, 1824)という。なお、原画は若いお兄さん

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (December 20)

Wollaston, W. H. (1824) On the apparent direction of eye in a portrait. Philosophical Transactions of the Royal Society of London, B114, 247-256. (下記山口先生の解説から孫引き)

山口真美 (2006) 乳児に視線はどう見えるのか? 心理学ワールド, 34(特集・視線とコミュニケーション), 5-8.







ホロウフェース錯視(凹面顔錯視)


Gregory, R. L. (1970) The Intelligent Eye. London: Weidenfeld and Nicolson. (グレゴリー著・金子隆芳訳 インテリジェント・アイ みすず書房 1972年刊)

Schröder, H. (1858) Ueber eine optische Inversion bei Betrachtung verkehrter, durch optische Vorrichtung entworfener physischer Bilder. Annalen der Physik und Chemie, 181, 298-311.


不可能図形


「無限無限階段」

上がり続けるか、下り続けるかの階段に見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2009 (March 13)

不可能図形のページ


「最少の無限階段」

無限階段の簡略版。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2009 (March 11)



「本当に最少の無限階段」

無限階段の簡略版。階段という感じではなくなるが。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2009 (March 15)


ペンローズの三角形(Penrose's triangle)


ペンローズの三角形の基本構造


その他
(時間調整用)


ところで

変化の見落としは錯視か?



「変わったのはどこ?」

2枚の画像が切り替わるたびに、1箇所だけ変化する。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (May 24)




ステレオフューズすれば一発でわかる(該当部分が視野闘争する)。




それでもわからない人向けの動画


変化の見落としは錯視扱いされる傾向にある。 なぜ?


"Change blindness is the striking failure to see large changes that normally would be noticed easily" (Simons and Rensink, 2005)



ところで

「不変化の見落とし」は錯視か?








「変わらないのはどこ?」

2枚の画像が切り替わるたびに、8つのうち1つだけ変化しない。それはどこ?

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (May 26)










ブランクなしならすぐわかる。


「不変化の見落とし」は錯視扱いされる傾向にはない。 なぜ?


 観察者が変化の検出を容易であるはずだと認識している場合、変化の見落としは錯視ということになる(実際の知覚としては容易でないから)。一方、「不変化の見落とし」という刺激条件を観察者はあらかじめ想像しないため、錯視扱いされにくい。



話かわって、

オバケは錯視か?

「瞬間移動2」

瞬間的に移動したように見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 ( February 16)

これは岡部望氏(アニメーター)のいうところの「本当のオバケ」のテクニック


Apparent movement with speed lines (motion lines)

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (March 2)


「高速どんぐるりん」

どんぐりの輪が高速に回転して見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (February 16)

普通の「どんぐるりん」↓

+


「蛇のフィギュアスケート」

円盤が高速で回転しているように見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (February 22)


 不自然な画像なら、オバケも錯視扱いかもしれない。



勉強するなら国語と英語


新聞も読もう。


い 

ご清聴ありがとうございました。


錯視の参考書

今井省吾 (1984) 錯視図形-見え方の心理学- サイエンス社
大山正・今井省吾・和気典二(編) (1994) 新編 感覚・知覚心理学ハンドブック 誠信書房
後藤倬男・田中平八(編) (2005) 錯視の科学ハンドブック 東京大学出版会
北岡明佳 (2005) トリック・アイズ グラフィックス カンゼン
北岡明佳 (2007) だまされる視覚 錯視の楽しみ方 化学同人
北岡明佳(監修) (2007) Newton別冊 脳はなぜだまされるのか? 錯視 完全図解 ニュートンプレス
太田光・田中裕二・北岡明佳 (2008) 爆笑問題のニッポンの教養 この世はすべて錯覚だ 知覚心理学 講談社
北岡明佳 (2008) トリック・アイズ メカニズム カンゼン
北岡明佳 (2010) 錯視入門 朝倉書店


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