お茶の水女子大学生活科学部発達臨床講座
2001年・発達社会文化論・集中講義日記(というよりメモ)
質的心理学の方法と技術(初日の内容)
0 前口上・自己紹介
1 講義の目的
心理学の立場からの発達社会文化論
1−0 心理学とは?
超簡単心理学史(精神物理学→心理学)
1−1 発達心理学領域における知識生産
発達とは?
→時間軸上の生体の変化(概念自体の変化は後述)
心理学とは?
→行動データ・行動の結果データによる心の理解(理論解釈研究とは違う)
知識生産とは?
→事実の発見、問題の解決、概念の創成
∴研究と実践をあわせたような概念
1−2 発達社会文化論の意義
多くの「行動や能力とされる」ものが、実は外界との関係の関数であったことが明らかになりつつある。
例:他者へのアタッチメントが成立しない場合には言語行動が阻害される
養育とは、子どもの発達保障のシステムである
環境配置+栄養補給 = 自発行動の涵養
ただし自発行動には一定の発生的制約(レディネス)がある。
子どもを知ることで教育に役立てることが必要 = 発達心理学の初期の課題
大きな流れ 児童心理学→発達心理学→生涯発達心理学
そもそも心理学の中に児童心理学があるのはなぜか
← 人間概念の拡大と心理学の課題の中での「比較」「発生」的視点
子どもや異民族などとの比較による人間理解が心理学の1つとして成立した。
発達心理学の進展の結果(後戻りできない成果の結果)
→個体内発達説からの脱却(前述) ヒトは何かと関係しながら発達していく。
問い ヒトと何の関係? ヒト、環境、状況、刺激、アフォーダンス、社会、文化、歴史
★お茶大特別話題:発達社会文化論的にみた「血液型性格判断と私たち」
性格を気にするようになったのは近代。血液型と性格を結びつけたのは古川竹二(東京女子高等師範学校教授)
1−3 講義の目的・りふれいん
発達心理学領域の知識生産に関する知識を身につける
最近の認知心理学によれば知識とは以下に2分できる。
宣言的知識 わかるための知識 ○は×である。
手続き的知識 できるための知識 折り紙の折り方。
従って
私たちの知識生産営為(研究すること)についての方法論的理解
知識生産を豊かにするための技術の習得
がこの講義の目的。要するに
∴方法論と技術論
2 方法論編
2−1 方法論とは?
知識生産のやり方を、それが置かれる文脈と関係づけて考えること
→統計のやり方とかは方法論ではなく技術論
2−2 おもしろい研究をしよう
おもしろい研究は「自分で考える研究」
しかし小学校の自由課題研究ではない。
→学問的知見の蓄積を知る
→判断の過誤を組織的・体系的に防ぐ
おもしろい研究(とそれを妨げるもの)
心理学領域における面白い研究とは「常識をくずし、事実に基づき、統一的な説明ができる」研究
例:「神話崩し」 神話・・根拠無く広く信じられている説明体系
菅原ますみ 3歳児神話否定 (データ)
大日向雅美 母性神話否定 (歴史+実態) 子育て不安参照
長谷川・長谷川 少年凶悪化神話否定 (進化論+データ)
大村政男 血液型神話否定 (歴史+データ)
「思いもしなかったこと and/or 何となくわかってたけどってこと」
高野陽太郎 外国語効果
佐々木正人 身振りの機能
箕浦康子 2つの文化の子どもたち
佐藤達哉 CD売上げからみた普及(我田「洪」水なり)
無藤・藤崎 ドリフターズはなぜ面白いか
2−3 個体発達主義からの脱却と方法論の整備
(個人的好みかもしれないが)歴史・社会・文化的要因を組み込むと面白い
実験以外の実証方法とその意義(実際的・認識論的)
マイクロ・エスノグラフィ
現場心理学
社会史
質的研究技法の方法論的意義
→今日の心理学シーンでは、量的にしか扱えない現象のみを対象に留まっていられないことは明らか。
『心理学の新しい表現法に関する論文集』第8号の作成作業(午後3時〜)
無藤隆vsサトウタツヤ「質的心理学研究を考える」(午後6時〜)