科学茶房「絵のはずなのにグルグル回って見える!?錯視の不思議」

北岡明佳(立命館大学総合心理学部) 2024/4/21 静岡科学館る・く・る 配布物


こんにちは。北岡です。錯視の研究(知覚心理学)をしています。

写真は、立命館大学大阪いばらきキャンパスB棟5階の錯視の回廊です。



「るくるくるくるくる」

同心円の円盤が歪んでみえるとともに、回転するようにも見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2014 (October 9)


「るくるくるくるくる」は、3つの錯視からできています。①静止画が動いて見える錯視の一種「シマシマガクガク錯視」、 ②渦巻き錯視、③ピンナの錯視です。


① 静止画が動いて見える錯視の一種「シマシマガクガク錯視」

少なくとも、2014年に私は心理学に導入しました(Kitaoka, 2014)。もっと以前の研究がある可能性があります。

「凧」
(シマシマドリフト錯視)

内側の領域が跳ねるように動いて見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2016 (May 2)





「床屋のポールの回転」

リングが回転して見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2012 (May 12)


シマシマガクガク錯視はなぜ起こるのか。

反転現象の一種


同じ絵の間に空白のフレームを入れるだけで、何かが回転する感じが現れる。


(オマケ)
同じ絵の間に入れるフレームを円の縞模様にすると、何かが回転する感じが強くなる。


動画に使用した画像


② 渦巻き錯視

1908年にイギリスのフレーザーがフレーザー錯視の渦巻き錯視として心理学に導入しました(Fraser, 1908)。同心円パターンが渦巻きに見えます。





フレーザー錯視・・・短い斜線群は平行に並べられていますが、右上がりに見えます。



「水の渦」

同心円が渦巻きに見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2009 (March 3)


「重力波の渦巻き 2018」

灰色の波線は同心円なのだが、左に回転して中心に向かう渦巻きに見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2018 (June 7)


波の位相を±90度ずらすと、渦巻き錯視の方向が反転する。灰色の波線は同心円なのだが、右に回転して中心に向かう渦巻きに見える。



フレーザー錯視・・・短い斜線群は平行に並べられていますが、交互に傾いて見えます。


交互に方向を変えた渦巻き錯視


「ほつれ錯視」

同心円がこんがらがつて見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2019 (May 1)


「薔薇ディスク」

同心円がこんがらがって見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2020 (April 22)


<再掲>


「るくるくるくるくる」

同心円の円盤が歪んでみえるとともに、回転するようにも見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2014 (October 9)


市松模様錯視の一形態。水平に描かれた列が交互に傾いて見えます。「るくるくるくるくる」の傾き錯視の基本形です。



(参考資料。英語ですが)


③ ピンナの錯視の一つ(scintillating lustre)

9つのパターンの中央のドットがギラギラして見えます。



「エイの回転」

外側のエイは時計回りに、内側のエイは反時計回りに泳いで見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2004 (6/12)


「Thank you 回転」

リングが回転して見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2018 (August 14)



「歯車」

歯車が回転して見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2016 (February 3) (original 2006)


「たくさんのどんぐるりん」

どんぐりの円盤が回転して見える。

Copyright A.Kitaoka 2015 (September 24)



「プラスチック ローラー」

ローラーが回転しているように見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (August 14)


「月の回転」

図が時計回りに回転して見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (January 12)


「蛇の回転」

蛇の円盤が勝手に回転して見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2003 (September 2, 2003)


最適化型フレーザー・ウィルコックス錯視・タイプIIa


「『蛇の回転』 工作セット」

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2015 (July 8)




台紙 (クリックで高解像度ファイルをダウンロード)



「ボート」

(リメーク版)

リングが回転して見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2005 (April 14)



「ボートの回転2014」

リングが回転して見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2014 (February 16)


中心ドリフト錯視

コントラストの低い方から高い方に動いて見える。暗→明の方向に動いて見える錯視(上図)の方が、明→暗の方向に動いて見える錯視(下図)よりも効果が大きい。CWは時計回り(右回り)、CCWは反時計回り(左回り)。




「トゲトゲドリフト錯視の回転錯視」

中心を見ながら図と目を近づけると、内側のリングは左回りに、外側のリングは右回りに回転して見える。離れる時はその逆。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2014 (August 2)


「トゲトゲドリフト錯視」

内側の正方形領域が動いて見える。内側の正方形領域が菱形に(垂直は右に、水平は左に傾いて)見える。

"Drifting spines illusion"

The inset appears to move. The inset is a square but verticals appear to tilt clockwise and horizontals appear to tilt clockwise.

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2010 (July 6)



「エンボスドリフト錯視」
(サイン波型)

内側の正方形領域が動いて見える。

"Drifting Emboss illusion"
(sine type)

The inset appears to move.

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2016 (February 15)


静止画が動いて見える錯視と傾き錯視が同居して見える錯視

北岡明佳 (2022) 「傾き錯視と同居する静止画が動いて見える錯視の探求」 (2022年3月2日(水)15:20-16:00  明治大学「現象数理学」研究拠点共同研究集会『第16回錯覚ワークショップ』) Presentation (html)




「オオウチ錯視の回転錯視」

中心を見ながら図と目を近づけると、リングは左回りに回転して見える。離れる時はその逆。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2014 (August 2)


オオウチ錯視


オオウチ錯視とシマシマガクガク錯視の連続性


床屋のポールの錯視と窓枠問題の解決法


窓際問題:狭い窓を通して縞模様の運動を見ると、正確な運動の方向がわからないこと


窓枠問題の解決という考え方で説明できる錯視図



窓枠問題の解決という考え方で説明できない錯視図



「回転エネルギー」

灰色のリングの中を何かが回転して見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2005 (June 8)


エニグマ錯視



「お宝を狙う4匹のネズミ♀」

回転して見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (March 20, updated September 17)


「赤い蛇の回転のトンネル」

それぞれのリングがひとりでに回転して見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (March 19)


「カメの回転」

カメの集団が回転して見える。そのほか、左右に動いて見える錯視や、垂直・水平に並んだエッジが傾いて見える錯視もある。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2006 (June 19)


「オニヒトデ」

図が拡大・回転して見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2009 (January 17)



「黄と黒の円盤の回転」

左の円盤は反時計回りに、右の円盤は時計回りに回転して見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2014 (January 17)


最適化型フレーザー・ウィルコックス錯視・タイプI



「四角の回転」

内側は反時計回りに、外側は時計回りに回転して見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2021 (January 12)


「ベクション部屋」

内側の正方形2つは反時計回り、外側の正方形2つは時計回りに回転して見える。逆に見えることもある(暗い場合)。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2021 (January 22)


「白と緑のひし形のリングの回転」

内側のリングは時計回り、外側のリングは反時計回りに回転して見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2021 (January 28)



最適化型フレーザー・ウィルコックス錯視・タイプIII


「赤と紫の円盤の回転・いろいろ」


optimized Fraser-Wilcox illusion Type V 標準形式

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2013 (February 6)


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色立体の回転いろいろ(錯視ではないが)


「無限回転」

静止画4枚の繰り返しでできているが、リングは時計回りに回転して見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2021 (February 10)



(縞バージョン)



(円盤回転バージョン)
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2021 (February 11)




(100 ms / frame)



青は黒、黄は白、赤と緑は灰色に相当する。じゃがりきん氏の錯視作品を説明する原理である。ただし、じゃがりきん氏の作品では、色はなめらかに推移する。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2021 (February 22)


北岡明佳 (2021) 「輝度変化による運動錯視(リバースファイなど)の再検討」 (2021年3月2日(火)15:40~16:20・第15回錯覚ワークショップ(Zoom Webinar)) Presentation (html)