2025年11月15日(土)14:15-15:30
形の文化会秋のフォーラム
オンライン
錯視によってつくられる形 
立命館大学総合心理学部 北岡 明佳 email
こんにちは。立命館大学総合心理学部の北岡と申します。錯視の研究(視知覚の研究)をしています。

立命館大学大阪いばらきキャンパス B棟(スタバのある建物)5階にある錯視の廊下です。
本日のテーマ
下図のようなデザインのつくりを理解し、制作できるようになる。

「膨らみの錯視」
この画像はすべて正方形でできているが、中央が手前に膨らんでいるように見える。
本講演の構成
1. 古典的な錯視いろいろ
2. 傾き錯視
3. 湾曲錯視
4. 静止画が動いて見える錯視が共存する湾曲錯視
5. ロトレリーフ(立体奥行き効果)について
1. 古典的な錯視いろいろ

古典的な幾何学的錯視の例。(a)ミュラー=リヤー錯視。上下の水平線分は同じ長さであるが、下の方が長く見える。(b)エビングハウス錯視。リングの中の円は左右同じ大きさであるが、大きい円のリングに囲まれた左の円よりも、小さい円のリングに囲まれた右の円の方が大きく見える。(c)ポンゾ錯視。Λや<の頂点に近い方に置かれた対象が大きく見える。具体的には、2本の水平線分は同じ長さだが、上の方が長く見える。2つの円は同じ大きさだが、左の方が大きく見える。(d)ポッゲンドルフ錯視。2つの斜線は一直線上にあるが、右の斜線の方が上方に変位して見える。(e)ツェルナー錯視。垂直より反時計回りに45度傾いた黒い線は互いに平行だが、交互に傾いて見える。交差する短い線との交差角度の過大視の現象である。(f)へリング錯視(湾曲錯視)。水平線分が曲がって見える。上の線分は上に凸、下の線分は下に凸に見える。(g)ミュンスターベルク錯視。白と黒の正方形の列を図のようにずらして配置し、列の境界に線分を描くと、図ではそれらは水平であるが、交互に傾いて見える。本図のように線が灰色の時は、カフェウォール錯視(Café Wall illusion)と呼ばれることが多い。(h)フレーザー錯視。垂直より反時計回りに45度傾いた仮想線に沿って短い斜線の列が描かれているが、列の傾きは短い斜線の傾きの方向に変位して見える。ツェルナー錯視とは逆の錯視である。(i)フレーザー錯視の渦巻き錯視。フレーザー錯視では、傾いて見えるのは線分であるが、傾いて見える対象を円状に配置した時に観察できる錯視である。具体的には、同心円が渦巻きのように見える。
古典的な錯視いろいろの参考書

後藤倬男・田中平八(編)(2005) 錯視の科学ハンドブック 東京大学出版会

北岡明佳 (2010) 錯視入門 朝倉書店

北岡明佳 (2022) だまされる視覚 錯視の楽しみ方 (文庫本版) 化学同人
2. 傾き錯視
真っすぐな線あるいはエッジが本来の方位から傾いて見える錯視

ツェルナー錯視(Zöllner illusion)・オリジナルの模写
黒い垂直のコラムは平行であるが、左から反時計回り、時計回り、反時計回り、時計回り、(以下同様)に傾いて見える。すなわち、斜線との成す鋭角を過大視する方向に黒い垂直のコラムは傾いて見える。
Zöllner, F. (1860) Über eine neue Art von Pseudoskopie und ihre Beziehungen zu den von Plateau und Oppel beschriebenen Bewegungsphänomenen. Annalen der Physik und Chemie, 186, 500-523.

ツェルナー錯視・オリジナル風の斜め配置バージョン
黒くて太い右上から左下方向の斜め45度の線は平行であるが、左下から時計回り、反時計回り、時計回り、反時計回り、(以下同様)に傾いて見える。すなわち、斜線との成す鋭角を過大視する方向に黒くて太い斜線は傾いて見える。

ツェルナー錯視・細い線のバージョン
水平に引かれた線は平行であるが、上から時計回り、反時計回り、時計回り、反時計回り、(以下同様)に傾いて見える。すなわち、斜線との成す鋭角を過大視する方向に細い水平線は傾いて見える。

ツェルナー錯視・被誘導線(主線とも言う)の傾き錯視効果の方位を一定にしたバージョン
水平に引かれた線は平行であるが、すべて反時計回り(左に)に傾いて見える。すなわち、斜線との成す鋭角を過大視する方向に細い水平線は傾いて見える。

ミュンスターベルク錯視とカフェウォール錯視
白と黒の正方形を交互に水平に配置した列を描き、列を垂直にコピーし、隣合う列は正方形の辺の半分だけずらして配置する。その場合、列の境界に細い線を引くと、それは水平であるが傾いて見える。黒い角この図では、上から反時計回り、時計回り、反時計回り、時計回り、反時計回りに傾いて見える。この錯視は本来はミュンスターベルク錯視と呼ぶべきであるが、細い線が灰色の時はそれが黒の時よりも錯視量が多く、カフェウォール錯視と呼ばれる。
Fraser, J. (1908). A new visual illusion of direction. British Journal
of Psychology, 2, 307-320.
Gregory, R. L., & Heard, P. (1979). Border locking and the Café Wall
illusion. Perception, 8, 365-380.
Münsterberg, H. (1897). Die vershobene Schachbrettfigur. Zeitschrift für Psychologie, 15, 184-188.

カフェウォール錯視・被誘導線(モルタル線とも言う)の傾き錯視効果の方位を一定にしたバージョン
灰色のの水平線はすべて反時計回り(右に)に傾いて見える。

フレーザー錯視(Fraser illusion)
一番上の列で言うと、一番左のひし形の中央には白くて水平から反時計回りに少し傾いた斜線があり、その右隣のひし形の中央には黒い斜線があり、それらが右端まで繰り返されている。斜線の列は水平に並んでいるのであるが、白黒の紐のように知覚される長い線分は水平から反時計回りに(左に)傾いて見える。上から2番目の列ではそれは時計回りに傾いて見え、上から3番目は反時計回り、一番下の列では時計回りに傾いて見える。
Fraser, J. (1908). A new visual illusion of direction. British Journal of Psychology, 2, 307-320.

フレーザー錯視・ねじれ紐(twisted cords)表現
このような描画法のフレーザー錯視を Fraser (1908) は「ねじれ紐」と呼んだ。上から、水平に並んだ斜線の列は時計回り、反時計回り、時計回り、反時計回りに傾いて見える。

フレーザー錯視・背景が縞模様のバージョン
フレーザー錯視にはダイヤモンド状の縁飾りが必須というわけではないことがわかる。上から、水平に並んだ斜線の列は反時計回り、時計回り、反時計回り、時計回りに傾いて見える。

フレーザー錯視・背景が一様なグレーのバージョン
フレーザー錯視にはダイヤモンド状の縁飾りが必須というわけではないことがわかる。上から、水平に並んだ斜線の列は反時計回り、時計回り、反時計回り、時計回りに傾いて見える。

フレーザー錯視・エッジのバージョン
フレーザー錯視の構成要素は線である必要はなく、エッジでもよい。上から、水平に並んだ斜いたエッジの列は反時計回り、時計回り、反時計回り、時計回りに傾いて見える。

フレーザー錯視・線とエッジの混合バージョン
フレーザー錯視の構成要素としては、線とエッジを組み合わせてもよい。上から、水平に並んだ斜線と傾いたエッジの列は、反時計回り、時計回り、反時計回り、時計回りに傾いて見える。

ずれた線の錯視(illusion of shifted lines)
一番上の線列で言うと、一番左の黒のコラムの中では白い水平線分が2つ並んで描かれていて、右側の線分は左側の線分より少し上方にある。その右側の白いコラムの中では黒い水平線分が2つ並んで描かれていて、右側の線分は左側の線分より少し上方にある。その黒いコラムの左側の白い線分は一番左の黒のコラムの右側の白い線分よりも少し下方にある。これらの上方への変位と下方への変位の量は同じである。それらが右端まで繰り返されている。すなわち、これらの線分の列は水平に並んでいるのであるが、白黒の紐のように知覚される長い線分は水平から反時計回りに(左に)傾いて見える。上から2番目の列ではそれは時計回りに傾いて見え、上から3番目は反時計回り、一番下の列では時計回りに傾いて見える。
Kitaoka, A. (2007). Tilt illusions after Oyama (1960): A review. Japanese Psychological Research, 49, 7-19.

ずれたエッジの錯視(illusion of shifted edges)
一番上の列の境界で言うと、一番左のコラムの中では上が黒・下が白の水平のエッジが2つ並んで描かれていて、右側のエッジは左側のエッジより少し上方にある。その右側のコラムの中では上が白・下が黒の水平のエッジが2つ並んで描かれていて、右側のエッジは左側のエッジより少し上方にある。そのコラムの左側のエッジは一番左のコラムの右側のエッジよりも少し下方にある。これらの上方への変位と下方への変位の量は同じである。それらが右端まで繰り返されている。すなわち、これらのエッジの列は水平に並んでいるのであるが、白黒の紐のように知覚される長い線分は水平から反時計回りに(左に)傾いて見える。上から2番目の列ではそれは時計回りに傾いて見え、上から3番目は反時計回り、一番下の列では時計回りに傾いて見える。
Kitaoka, A. (2007). Tilt illusions after Oyama (1960): A review. Japanese Psychological Research, 49, 7-19.

線とエッジの交替の錯視
一番上の列の境界で言うと、左端から右に、上は黒で下は白のエッジ、白の線(上下は黒)、上は白で下は黒のエッジ、黒の線(上下は白)の順に並んでいて、それらが右端まで繰り返されている。すなわち、これらのエッジと線の列は水平に並んでいるのであるが、水平から反時計回りに(左に)傾いて見える。上から2番目の列ではそれは時計回りに傾いて見え、上から3番目は反時計回り、一番下の列では時計回りに傾いて見える。
Kitaoka, A. (2007). Tilt illusions after Oyama (1960): A review. Japanese Psychological Research, 49, 7-19.

ずれた線の錯視、線とエッジの交替の錯視、ずれたエッジの錯視、ミュンスターベルク錯視(カフェウォール錯視)の関係
「奥義」を公開!

この系統の錯視の基本要素
このように組み合わせると右上がりに見える(水平列が反時計回りに傾いて見える)。

線のフレーザー錯視、線とエッジのフレーザー錯視(フレーザーのミュンスターベルク錯視)、エッジのフレーザー錯視

ミュンスターベルク・フレーザー錯視群の一覧
3. 湾曲錯視
真っすぐな線あるいはエッジが曲がって見える錯視

へリング錯視(Hering illusion)
2本の水平線が曲がって見える。上の線は上に凸、下の線は下に凸に見える。
Hering, E. (1861). Beiträge zur Physiologie, I. Zur Lehre vom Ortsinne der Netzhaut. Leipzig: Engelman.

ヴント錯視(Wundt illusion)
2本の水平線が曲がって見える。上の線は下に凸、下の線は上に凸に見える。
Wundt, W. (1898). Die geometrisch-optischen Täuschungen. Abhandlungen der Mathematisch-Physischen Classe der königlich Sächsischen Gesellschaft der Wissenschaften, Leipzig, 24, 53-178.
再掲 cf.

ツェルナー錯視(Zöllner illusion)・オリジナルの模写
黒い垂直のコラムは平行であるが、左から反時計回り、時計回り、反時計回り、時計回り、(以下同様)に傾いて見える。すなわち、斜線との成す鋭角を過大視する方向に黒い垂直のコラムは傾いて見える。
Zöllner, F. (1860) Über eine neue Art von Pseudoskopie und ihre Beziehungen zu den von Plateau und Oppel beschriebenen Bewegungsphänomenen. Annalen der Physik und Chemie, 186, 500-523.

オービソン錯視(Orbison illusion)
Orbison, W. D. (1939). Shape as a function of the vector field. American Journal of Psychology, 52, 31-45.
湾曲錯視の作り方

まず、傾き錯視図を用意する。この図はツェルナー錯視の図で、水平線が2本あるが、上の水平線は反時計回りに(左に)傾いて見え、下の水平線は時計回りに(右に)傾いて見える。この図を左右反転した画像を作り、水平線を接続すると湾曲錯視が観察される。上の線は上に凸に見え、下の線は下に凸に見える。

ミュンスターベルク錯視(カフェウォール錯視)でも同様にしてできる。

灰色の水平線が2本あるが、上の水平線は反時計回りに(左に)傾いて見え、下の水平線は時計回りに(右に)傾いて見える。この図を左右反転した画像を作り、水平線を接続すると湾曲錯視が観察される。上の線は上に凸に見え、下の線は下に凸に見える。

膨らみの錯視
湾曲錯視の2次元バージョンが膨らみの錯視である。

「カフェウォール錯視による膨らみの錯視」
この図はすべて垂直・水平成分でできているが、中央が膨らんで見える。
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2016 (June 26)

「カフェウォール錯視による2次元湾曲錯視図」
図が膨らんで見える。
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2015 (June 4)

「タコ部屋」
灰色の縦横の線は垂直・水平だが外向きに曲がって見える。(カフェウォール錯視による湾曲錯視図)
Copyright Akiyoshi Kitaoka 1999 (update December 14, 2015)

「フレーザー錯視による膨らみの錯視」
中央が膨らんで見える。
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2016 (June 26)

「ずれた線の錯視による膨らみの錯視」
この図はすべて垂直・水平に置かれた正方形でできているが、中央が膨らんで見える。
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2016 (June 26)

「ずれたエッジの錯視による膨らみの錯視」
この図はすべて垂直・水平成分でできているが、中央が膨らんで見える。
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2016 (June 26)

「ツェルナー錯視による膨らみの錯視」
縦線・横線は垂直・水平なのだが、中央が膨らんで見える。
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2016 (June 26)

「四色錯視の膨らみの錯視」
図が膨らんで見える。
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2015 (June 4)

四色錯視の基本図形
「奥義」を再掲

この系統の錯視の基本要素
このように組み合わせると右上がりに見える(水平列が反時計回りに傾いて見える)。

「ドットの四色錯視の膨らみの錯視」
図が膨らんで見える。
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2015 (June 4)

ドットの4色錯視の基本図形

「Flying squares」
すべて垂直・水平に配置された正方形でできているが、図は膨らんで見える。
Copyright Akiyoshi Kitaoka 1998 (update December 18, 2015)
膨らみの錯視のつくり方
下図を作ってみよう。

「膨らみの錯視」
この画像はすべて正方形でできているが、中央が手前に膨らんでいるように見える。

市松模様錯視
すべて垂直水平に配置された正方形でできているが、水平の境界が時計回りに(右に)傾いて見える。


「奥義」を再掲

この系統の錯視の基本要素
このように組み合わせると右上がりに見える(水平列が反時計回りに傾いて見える)。



「奥義」を再掲

この系統の錯視の基本要素
このように組み合わせると右上がりに見える(水平列が反時計回りに傾いて見える)。


「奥義」を再掲

この系統の錯視の基本要素
このように組み合わせると右上がりに見える(水平列が反時計回りに傾いて見える)。

このパーツを組み合わせるだけ!

これを作ろう。
まずは簡単なものから

縦は垂直だが時計回りに(右に)、横は水平だが反時計回りに(左に)傾いて見える。
↓

このままでも、膨らんで見える。
↓

ギャップを埋める。
↓

適宜整形して完成!
応用作品

「フジツボ」
すべて正方形でできているが、傾きが感じられる。
Copyright A.Kitaoka 2004 (6/15)

「吸い込みの錯視」
奥行き的に中央が引っ込んで見える。
「パウンドケーキ」
垂直の境界が、左半分は左に凸に、右半分は右に凸に曲がって見える。

「クッション」
垂直・水平に配置した正方形と長方形だけでできているが、クッションのように膨らんで見える。

「パウンドケーキの詰め合わせ」
すべて正方形か長方形でできているが、カーブが感じられ、凹凸があるように見える。
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (November 6)

「アトランティス」
すべて正方形でできているが、膨らんで見える。動きの錯視もある。
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2006 (February 24)
波の錯視
波打ったような奥行き感のある錯視である。

↑

波の錯視においては、傾き錯視を組み合わせて下図のようなパターンになるよう制作する。

4. 静止画が動いて見える錯視が共存する湾曲錯視
北岡の人気作品
No. 1 in popularity

"Rotating snakes"
Disks appear to rotate.
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2003
Kitaoka, A. (2017). The Fraser-Wilcox illusion and its extension. A. G. Shapiro and D. Todorović (Eds.), The Oxford Compendium of Visual Illusions, Oxford University Press, pp. 500-511. PDF --- Figures --- PDF (scanned copy)
No. 2

"Primrose field"
The image appears to wave.
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2002
No. 3
"Green and blue spirals"
There appear to be spirals of light green or light blue. Actually, they are identical (r = 0, g = 255, b = 150).
Copyright A.Kitaoka 2003
No. 4

"A bulge"
The floor appears to bulge out, though this image consists of only squares.
Copyright A.Kitaoka 1998

"Cushion"
This image appears to bulge out, though it consists of squares and rectangles aligned vertically or horizontally.
Copyright A.Kitaoka 1998
No. 5

"Hatpin urchin (pink)"
The image appears to wiggle in the radial direction.
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2013 (November 19)
No. 6

"Drifting Emboss illusion"
(sine type)
The inset appears to move.
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2016 (February 15)
Recently popular 1
"Illusory reddish coke can"
The Coca-Cola can appears to be reddish, though it consists of black and white stripes.
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2021 (October 13)
Recently popular 2

"Bamboos"
Columns appear to move.
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2014 (January 5)
Recently popular 3
"Entangling illusion"
The two concentric rings appear to be entangled.
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2019 (May 1)
傾き錯視と同居する静止画が動いて見える錯視

縞模様コードの錯視(illusion of shifted cords)
黒と白の縞模様の線は水平に描かれているが、反時計回りに(左に)傾いて見える。
Kitaoka, A. (1998). Apparent contraction of edge angles. Perception, 27, 1209-1219.
Kitaoka, A., Pinna, B., and Brelstaff, G. (2004). Contrast polarities determine the direction of Café Wall tilts. Perception, 33, 11-20.
Kitaoka, A. (2007) Tilt illusions after Oyama (1960): A review. Japanese Psychological Research, 49, 7-19.

縞模様コードの錯視・静止画が動いて見える錯視との同居
内側の領域では、垂直に配列した縞模様の線列は時計回りに(右に)傾いて見え、左右の領域では反時計回りに(左に)傾いて見える。印刷した図やスマホを上下に動かすとか、めがねを上下させるなどして網膜像が垂直方向になめらかにスリップさせると、中央の領域は左右に動いて見える。

2次元縞模様コードの錯視・静止画が動いて見える錯視との同居
「縞模様コードの錯視工作セット」

ポスターカラーマーカーを使用
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2015 (May 30)
以下、参考
Kitaoka, A. (2007). Tilt illusions after Oyama (1960): A review. Japanese Psychological Research, 49, 7-19. PDF available (open access) --- https://doi.org/10.1111/j.1468-5884.2007.00328.x

Y接合部の錯視・静止画が動いて見える錯視との同居

Y接合部の錯視・基本図形
星は水平に並んでいるが、右上がりに見える。
Explanation of the illusion of Y-junctions


(Takeuchi's four-stroke motion)


左上は1枚目の画像。右下は2枚目の画像をネガポジ反転させたもの。右下の画像では、左上の画像に比べて、左のリングは2度反時計回りに回転し、右のリングは2度時計回りに回転させている。右上と左下の画像は、左上と右下の画像の差分の画像である。

左のリングは反時計回りに、右のリングは時計回りに回転して見える。(200 ms / frame)
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2021 (February 22)

「扉を開けたまま走る電車」
停車中の電車が右に走行するように見える。
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2021 (February 9)

Kitaoka, A. (2010). The Fraser illusion family and the corresponding motion illusions. Perception, 39, Supplement, #61, p. 178.
北岡明佳 (2022). 「傾き錯視と同居する静止画が動いて見える錯視の探求」 (2022年3月2日(水)15:20-16:00 明治大学「現象数理学」研究拠点共同研究集会『第16回錯覚ワークショップ』) Presentation (html)
Y接合部の錯視の波の錯視

「座布団・使用前と使用後」
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2011 (May 21) (Original 1999)

「ババロア」
垂直・水平成分が傾いて見え、プヨプヨした感じ。
Copyright A.Kitaoka 2002
再掲

「サクラソウの畑」
背景の市松模様はすべて正方形だが、波打って見える。
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2002

「秋の沼」
中の正方形領域が動いて見える。
Copyright A.Kitaoka 2000, 2003, 2007, 2010

「神経回路」
中心を見ながら目を近づけたり遠ざけたりすると環状の星の配列がお互いの反対方向に回転して見える。
Copyright A.Kitaoka 2000
5. ロトレリーフ(立体奥行き効果)について
(時間があれば)

(mp4)
北岡 明佳1、櫻井 研三2 (1立命館大学総合心理学部、2東北学院大学人間科学部) ロトレリーフの展開的研究 日本心理学会第89大会@東北学院大学(2025年9月5日~7日)・小講演 2025年9月5日(金) 10:10 〜 11:00 第9会場(L506)

ご清聴、ありがとうございました!
おしまい


錯視とは、2次元平面上に描かれた絵なのだが、その物理的なパラメーターから予想されるものとは異なって見える知覚のうち、不思議なもの、おもしろいもの、目が釘付けになるものをいう。本講演では、幾何学的錯視(形の次元の錯視)に分類される傾き錯視の中からミュンスターベルク錯視(Münsterberg
illusion)とフレーザー錯視(Fraser
illusion)を用いた三次元のような造形と、運動視差から形成される反転性のある奥行き知覚(立体運動効果(stereokinetic
effect)あるいはロトレリーフ(rotorelief))を用いた作品について取り上げる。