0チョー研のT先生の質問に答えて

2007年6月9日より



「さかさま顔の過大視は正立顔の過小視だった!」

Araragi et al. (2012) によると、正立顔が過小視して見えている。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2014 (May 15)

Araragi, Y., Aotani, T., and Kitaoka, A. (2012). Evidence for a size underestimation of upright faces. Perception, 41, 840-853.


平成21・22年度科学研究費補助金(新学術領域研究 「学際的研究による顔認知メカニズムの解明」・領域代表者 自然科学研究機構生理学研究所・教授 柿木隆介) (研究代表者・北岡明佳) 「顔の錯視の探索的研究」 課題番号21119522 (平成21年度 150万円、平成22年度 110万円)(研究分担者 ナシ)

「顔の錯視の探索的研究」 課題番号2111952
北岡明佳(立命館大学文学部)

 「錯視といえば幾何学的錯視(形の錯視)」であった時代はICT機器の進歩とともに過去のものとなり、色の錯視、明るさの錯視、運動視の錯視など多種多様な属性の錯視が注目されるようになり、運動視の錯視の中でも静止画が動いて見える錯視のような新顔が錯視の代表例であるかのようにデモされる時代に変貌を遂げてきた。その中において、「顔の錯視」はサッチャー錯視やホロウフェース錯視などの現象が互いに関連づけられずに点在して知られているだけであり、研究の飛躍的伸展が期待される未開拓領域である。そこで本研究課題では、まずは顔の錯視という分野を確立することを目的として、新しい顔の錯視の発見に努めるとともに、既に知られているが必ずしも錯視という扱いをされてこなかった現象(例えば、ウォラストン効果)の再検討を行なった。
 本研究課題において、研究代表者とその研究協力者が発見あるいは明らかにした顔の錯視として、「顔ガクガク錯視」(wobbling face illusion)がある。これは、目と口を上下方向にコピー&ペーストして4つ目・2つの口の顔画像を作ると、顔の知覚が不安定に見えるという現象である(Ueda, Kitaoka and Suga, 2011)(図1)。この現象については、「二重顔錯視」(double face illusion)という名称で別のグループから続報も出た(Hancock and Foster, 2012)。顔倒立効果に関する顔の錯視の1つとして、「さかさま顔の過大視」錯視が知られていたが(北岡, 2010)が、横にした顔を含めて比較したところ、実は正立顔が過小視されているのであったという逆転の結果を得た(Araragi, Aotani and Kitaoka, 2012)(図2)。そのほか、視線方向の錯視として、アイシャドーの錯視を発見した(北岡, 2012a)。アイシャドーを付けた側と反対方向に視線が変位して見えるという錯視である(図3)。肌より明るいアイシャドーの場合は、アイシャドーを付けた側と同方向に視線が変位して見える。左右の視線方向にも効果があり、例えば斜視の美容に応用できる可能性がある。
 以上を含む成果をまとめた報告として、「BRAIN and NERVE 神経研究の進歩」誌において、「顔の錯視のレビュー」というタイトルで顔の錯視の俯瞰を行った(北岡, 2012a)。さらに、日本顔学会誌においても同様のレポートを行なった(北岡, 2012b)。本研究課題終了後の現在も、筆者とその研究協力者は、視線方向の錯視を中心に、顔の錯視の研究を続けている(菊池・北岡, 2013)。

文献
Araragi, Y., Aotani, T., and Kitaoka, A. (2012). Evidence for a size underestimation of upright faces. Perception, 41, 840-853.
Hancock, P. J. B. and Foster, C. (2012). The ‘double face’ illusion". Perception, 41, 57-70.
菊地祥子・北岡明佳 (2013). 視線方向の知覚に及ぼす面の傾きと鼻の向きの効果 日本顔学会誌, 13(1), 232.
北岡明佳 (2010). 錯視入門 朝倉書店
北岡明佳 (2012a). 顔の錯視のレビュー BRAIN and NERVE 神経研究の進歩, 64 (7) (増大特集 顔認知の脳内機構), 779-791.
北岡明佳 (2012b). 顔の錯視 日本顔学会誌, 12(1), 9-19.
Ueda, S., Kitaoka, A., and Suga, T. (2011). Wobbling appearance of a face induced by doubled parts. Perception, 40, 751-756.

<May 15, 2014>

図1
図2
図3


「さかさま顔の過大視」

上下の顔の大きさは同じであるが、下の方が大きく見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2007 (February 16)

cf. 上視野の過大視、サッチャー錯視


文献

北岡明佳 (2010) 錯視入門 朝倉書店 pp. 196-197 PDF 

蘭悠久・青谷岳寛・北岡明佳 (2011) 倒立顔の正立顔に対する過大視 日本視覚学会2011年冬季大会発表 2011年1月21日発表 3p09

<2011年5月16日>


さかさまなら、どこに描いてあってもいいの?

この図なら、私は左の方が大きく見えるので、問題ないような・・・


左右を入れ替えると、

この図も今日(2007年6月9日)見たところでは、右の方が大きく見えるような気がするが、昨日は同じくらいに見えていた。


斜め下ではどうかというと、

左下の方が大きく見えるような気はする。しかし、結構微妙な・・・


斜め下のもう一つの配置では、

大きさはあまり変わらないような気がするなあ・・・ あまり離れるとダメとか。


たくさん並べると、

左下の顔が大きく見えたり、右下の顔が大きく見えたり、あるいは全部同じ大きさに見えたりするなあ・・・


これまで、さかさまにする時は180度回転させていたが、鏡面反転では?

さかさま顔が大きく見えるような気がする。


さかさま顔を上に置くという条件を試していなかった。

さかさま顔が大きく見える。


さかさま顔を上に置いて、鏡面反転では?

さかさま顔が大きく見える。


話は変わって、90度倒立顔はどうなのか。

左側が大きく見えるかなあ・・・


この向きでも左側が大きく見えるかなあ・・・


他の顔ではどうか。

下の方が大きく見えるような気がするなあ。


もう1つ他の顔。

下の方が大きく見えるような気がするなあ。ついでにいうと、下の方がしょんぼりしたような顔に見える。


さかさ絵を使うと?

あんまり変わらないような気がする。下の方が大きく見えても、オッサンだし。


男性はあまり描いていないので、さっと描いてみたら、人相の悪いのができた。

それでも、さかさま顔の方が大きくみえるような気がする。


自分の顔ではやらないのですか、というリクエストにお応えして、

仁和寺の仁王様を代理にしてやってみたところ、さかさま顔の方が単純に大きく見えるような気はするけど、正立した像の方がこわくて大きい感じがする。


結論 さかさま顔が過大視される可能性は大きいが、心理学的にデータを取って地道に調べる必要がある。


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