日本視覚学会 2018年 夏季大会
2018年8月2日(木)9:30-9:45
文部科学省研究交流センター(つくば市)

色陰現象、静脈が青く見える錯視、および加算的色変換による色の錯視の同一性

立命館大学総合心理学部 北岡 明佳 email

2018/7/25 より


色陰現象

青い照明に照らされた物体の影が黄色く見える。



Shapiro, A., Hedjar, L., Dixon, E., and Kitaoka, A. (2018). Kitaoka's tomato: Two simple explanations based on information in the stimulus. i-Perception, 9(1), January-February, 1-9. PDF (open access)

北岡明佳 (2017) 加法的色変換による変換画像の色の恒常性 日本視覚学会2017年夏季大会 島根大学・2017年9月6日(水)11:00-11:20 Presentation (html) (口頭発表) 

イチゴの色の恒常性錯視(加算的色変換)


(γ = 1.2, α = .48)

「赤く見えるいちご」

すべてのピクセルはシアン色近辺の色相であるが、イチゴは赤く見える。加法色はシアンで、透明度(アルファ値)は48%の加法的色変換。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2017 (September 2)


Copyright Akiyoshi Kitaoka 2017 (September 2)


Copyright Akiyoshi Kitaoka 2017 (September 2)


Copyright Akiyoshi Kitaoka 2017 (September 2)



(γ = 1.2, α = .48)


(sRGB, α = .48)

「青く見えるいちご」

すべてのピクセルは黄色の色相であるが、イチゴは青く見える。加法色は黄色で透明度は48%の加法的色変換。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2017 (September 2)


Copyright Akiyoshi Kitaoka 2017 (September 2)


Copyright Akiyoshi Kitaoka 2017 (September 2)



イラストの目の色の恒常性錯視(加算的色変換)


(γ = 1.2, α = .48)

「目の色の恒常性(赤)」

イラストの目(虹彩)は赤く見えるが、シアン色の色相である(上の図は R138, G148, B148 で、下の図は R184, G191, B191 である)。加法色はシアンで、透明度(アルファ値)は48%の加法的色変換。




1. 加法的色変換による色の恒常性の強さを測定した。その結果、どの色相にも強い恒常性が見られた。色の対比という視点から考えても、これまで報告されたことのない強い錯視ということになる。

2. この色の恒常性は、色相によって強さが異なった。元の刺激が赤と青の場合(誘導色あるいは加法色はそれぞれシアンと黄の場合)に恒常性が強く、元の刺激が緑の場合(誘導色あるいは加法色はマゼンタの場合)に弱かった。

3. これらの色相の差は、原画がイチゴの場合とイラストの目(虹彩)の場合で同様であり、記憶色による影響というよりは、色の知覚そのものの現象と考えられる。


乗法的色変換と加法的色変換


3種類の色の恒常性画像






静脈錯視

静脈は青く見えるが、画素は青くない。
Veins appear to be bluish, though the pixels are not.

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2018 (May 3)

静脈錯視



Copyright Akiyoshi Kitaoka 2017 (January 24)



Kitaoka, A. (2015). Color constancy and the vein color illusion. 38th European Conference on Visual Perception (ECVP) (Liverpool), Poster 2P1M060, August 25, 2015. Presentation (html) --- Poster (doc)



(After)

(Before)



色陰現象again

青い照明に照らされた物体の影が黄色く見える。

 → 
(histogram equalization)

Shapiro, A., Hedjar, L., Dixon, E., and Kitaoka, A. (2018). Kitaoka's tomato: Two simple explanations based on information in the stimulus. i-Perception, 9(1), January-February, 1-9. PDF (open access)


(Before)


(After)



画像のRGB値のヒストグラムの比較


普通の画像では、RGB値は0%から100%まで分布。


結論: 色陰現象、静脈が青く見える錯視、および加算的色変換による色の錯視は、錯視が似ているだけでなく、画像の色の分布の様子も類似している(RGB値それぞれが0%から100%まで分布していない)。 → これらは共通したメカニズムによる錯視ではないか?


 

い 

色陰現象を観察するには、2つの照明で物体を異なる方向から照らす。一つは色の照明光で、もう一つは白色光(蛍光灯や野外の明かり)である。こうすると、色の照明光が物体に遮られてできた影の部分が反対色に色づいて見える。影の部分といっても白色光で照らされているので真っ暗ではなく、無彩色であるか、あるいは色の照明光がわずかに回り込んで色の照明と同じ色相となる。すなわち、色陰現象が観察されるのは、照明色の彩度が低い部分である。一方、皮下静脈は青く見えるが、多くの写真画像ではいわゆる肌色の色相(オレンジ色の色相)で、かつ彩度が低い。さらに、赤いイチゴの画像に反対色であるシアン色を加算的色変換して作成する色の錯視画像では、画素としては赤くないのに赤いイチゴが知覚される。それらの画素はシアン色で、かつ彩度が低い領域である。これらの符合は偶然ではないと考える。


北岡明佳の錯視のページ