立命館大学文学部心理学科

サトウタツヤ 「**を信じるな!」

5 性格の安定性 を疑ってみよう!

ページ名は「性格の安定性を疑ってみよう!」になってますが、 「**を信じるな!」HPの統一の都合上そうなっているだけです。実際には、性格は変化するという主張です。私と畏友・渡邊芳之は主としてW・ミシェルの学説に影響を受けて、いわゆる「性格の素朴実在論」を理論的に否定しています。

 私たちによれば、行動の通状況的一貫性は理論的に否定されるものであり、行動の経時的安定性が「いわゆる性格の不変」を作り出しているのですす。その際、安定性を作り出しているのは環境の安定性と対人認知・自己認知の安定性であり、実際の性格が素朴に実在してそれが変わらない、ということにはならないわけです。

 さて、以下では実際の小学生から寄せられた質問に対して答えてみたいと思います。


質問 

 総合学習で「生きる」というテーマで1年間勉強してきました。私は「生きるにあたっての性格の重要性」というテーマに取り組みました。次のことについて教えてください(まりな・小六女子)。

1 生きるについて性格はどう大事なのか。

2 性格は環境によって、変わると本に書いてありますが、性格は変わらないと思っている人もけっこう多いのではないでしょうか。

回答

お手紙ありがとうございました。まりなさんはとても難しいことを考えていますね。大学生よりも勉強しているのかもしれません。感心しました。

さて、最初の質問への答えは、「必要あるとは言えない」というものです。びっくりするかもしれませんね。しかし、一生けんめいに毎日生きていくことが大事なのです。一生懸命生きていくことで、一生懸命な性格が作られていくのです。

今日、誰かにイジワルしちゃった・・。でも明日はそうしないようにしよう。

今日はとても良い日だった。明日もがんばろう。

という毎日のつみ重ねが、まりなさんらしさを作っていくのではないでしょうか。

2つめの質問に移りましょう。

性格は変わる、という本を読んだようですね。でも、そうは思えない。なぜでしょうか。2つの可能性があります。

1つは「性格が変わらない」ので変わっているように見えない。

もう1つは「性格は変わっている」けれども、変わっているように見えない。

という2つの可能性です。

たぶん、前に読んだ本に書いてあったと思いますが、環境の変化が性格を変化させることはありえることです。しかし、まりなさんやお友達の場合、環境がいつも同じだということがあります。おうちと学校とそのほかいくつかしか行くところは無いですよね。お友達もいつも同じ環境にいるので、性格の変化が分からないのではないでしょうか。ところが、小学校生活が終わって中学校に行けば大きく環境が変わります。その後高校生になればまた変わります。そういう時に、おそらく少しずつではあっても性格が変わっていくのだと思います。

実際に性格が変わっていてもそれがよく分からない、ということもあります。たとえば、今、まりなさんやお友達は背が伸びていると思います。でも、昨日と今日とのちがいはあまり分かりませんよね。でも、去年と比べたらのびていることが分かります。小さな変化のつみ重ねは、自分では分からないものです。身長のようにちゃんとしたモノサシ(物差し)があれば分かりやすいですが、性格だと物差しがないからもっと分からないということになります。

性格が変わらないように見えるからといって「性格は変わらない」と思いこむのはもったいない。一生けんめい色々なことをやっていけばそれについて性格も変わっていくのだと思います。

わかりにくい説明でごめんなさい。不明の点があれば、ファクスで質問してください。

立命館大学文学部心理学科

佐藤達哉

075-466-3311ファクス共


「**を信じるな!」