日本視覚学会2005年夏季大会(東北学院大学・7月21日発表)
色立体視における個人差・視距離の影響・新しいモデル「重心説」
Chromostereopsis: individual differences, the effect of distance, and the 'center-of-gravity' model
北岡明佳・栗木一郎・芦田宏
(立命館大学・NTT CS基礎研究所・京都大学)
Abstract
色立体視(chromostereopsis)とは、同じ距離に置かれた刺激でも、特定の色の刺激が手前あるいは奥に見える両眼立体視現象である。進出色・後退色ともいう。一般的には、黒が背景の時、赤が手前に、青が奥に見えるという。20名を用いた実験の結果、赤が手前に青が奥に見える被験者は16名、その逆に青が手前に赤が奥に見える被験者は4名であった。すなわち、色立体視について一般的に言われていることは正しくない。どちらのグループにも視距離の効果が見られ、観察距離が遠いほど相対視差は大きかった。観察距離25cmでは、ほとんど奥行き差は認められなかった。これらのことは、色立体視の説明として有力な軸外収差説(transverse chromatic aberration model)に一致しない。ここでは、軸上収差説(longitudinal chromatic aberration model)を一部取り入れた新しいモデル「重心説」を提案する。
貴邑冨久子・根来英雄 (1999) シンプル生理学(改定第4版) 南江堂 pp. 85
軸外色収差(transverse chromatic aberration)説
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When artificial pupils are placed outside eye balls, red appears to be in fronf of blue.
When artificial pupils are placed inside eye balls, blue appears to be in fronf of red. This phenomenon is generally explained by the transverse chromatic abberation theory.
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http://www.hps.hokudai.ac.jp/hsci/stamps/1913b.htm(北海道大学の科学史の研究室のHP) より拝借(copyright 杉山滋郎 1996)
寺田ら(1935)
テスト刺激図形
山内学 (2004) 進出色・後退色におけるフィルターレンズの効果 立命館大学文学部心理学科2004年度卒業論文
20人に評定させた。赤が手前に見えた人は16人(80%)、青が手前に見えた人は4人(20%)、どちらともいえない人は0人であった。
赤が手前に見える群の錯視量のマグニチュード推定値・・・視距離が増すと錯視量も増す。
青が手前に見える群の錯視量のマグニチュード推定値・・・視距離が増すと錯視量も増す。
軸上色収差(longitudinal chromatic aberration)説
Let's try.
重心説
Kitaoka, Kuriki and Ashida, in preparation
重心説はこれまでの研究知見と矛盾しないが、積極的な証明はこれからである。
Thank you.