(進出色・後退色)

人にもよるが、1メートル以上離れて見た方が効果が大きい。6割の人は、黒背景で赤(長波長)が手前に見え、2割の人は青(短波長)が手前に見え、2割の人には色立体視は起こらないか、あるいは赤が手前に見えたり青が手前に見えたりするようである。教科書などによく書いてある「赤は進出色だから手前に見え、青は後退色だから奥に見える」という記述は、必ずしも正しくない。

2005年4月6日より


この項は色立体視などの基本図形特集です。
(下記説明を理解した上でなら、コピーライト表示がないものについては、描き手が北岡であることを表示の上、商業的利用可)

色立体視
chromostereopsis

赤い円形領域が青い周辺領域よりも手前に見える人が多い(6〜7割)。しかし、2割程度の人は逆に見える。1メートル以上離れて見た方が効果が大きい。なお、これはステレオグラムと同じ両眼立体視に依存しているので、両眼視をしていない人(片目が弱視の人など)にはこの効果は起きないと考えられる。色立体視を進出色・後退色と呼ぶこともあるが、どちらかというと進出色・後退色は心理学や視覚工学の用語ではなく、アートやデザインの用語あるいは日常用語であり、色立体視以外に単眼性の立体視現象を含む広い概念である。膨張色・収縮色と混同されることもある。色立体視は眼の光学系における光の屈折率の違いが原因と考えられるので、可視光線の波長の最も長い赤色光と最も短い青色光を組み合わせて刺激図形を作ることが普通である。 解説(英語論文) 関連した学会発表

produced by Akiyoshi Kitaoka 2006 (Aprl 13)

色立体視
chromostereopsis

黄色の円形領域が青い周辺領域よりも手前に見える人が多い(6〜7割)。しかし、2割程度の人は逆に見える。黄色光は赤色光よりも波長が短く、屈折率が青色光に近くなるから、色立体視の効果が減少するはずであるが、必ずしもそうならないのは、色立体視の刺激図形に混入することの多い単眼性の立体視の効果が増強されるためと考えられる(下記参照)。

produced by Akiyoshi Kitaoka 2006 (Aprl 13)

輝度コントラスト依存の立体視

輝度コントラストの高い部分が、低い部分よりも手前に見える現象。この図では、白い四角形でてきた円形領域は背景が黒のためコントラストが高く、周辺の暗い灰色は背景の黒とのコントラストが低い。このため、中央の円形領域が手前に見える。

produced by Akiyoshi Kitaoka 2006 (Aprl 13)

輝度コントラスト依存の立体視

背景が白でも同じである。輝度コントラストの高い部分が、低い部分よりも手前に見える。すなわち、黒い円形領域のコントラストが高いので、明るくてコントラストの低い周辺よりも手前に見える。

produced by Akiyoshi Kitaoka 2006 (Aprl 13)

Egusa, H. (1977). On the color stereoscopic phenomenon. Japanese Psychological Review, 20, 369-386 (in Japanese).

(江草浩幸(1977) 色の進出後退現象について 心理学評論, 20, 369-386.)
pp.375 「図と地の分化は、両領域の明るさの差が大きいほど明瞭となる。」

Egusa, H. (1983) Effects of brightness, hue, and saturation on perceived depth between adjacent regions in the visual field. Perception, 12, 167-175.

pp. 68 "Thus, the object having the greater contrast with the background would appear nearer to the observer."

Farnè, M. (1977) Brightness as an indicator to distance: relative brightness per se or contrast with background? Perception, 6, 287-293.

pp.287 "The result shows that the target having the higher contrast with its background is perceived as the nearer."

Mount, G. E.,  Case, H. W., Sanderson, J. W. and Brenner, R. (1956) Distance judgments of colored objects. Journal of General Psychology, 55, 207-214.

もっと多くの論文があります。

謝辞 東工大の澤田君ありがとうございました。

膨張色・収縮色

黄色の正方形が青色の正方形よりも大きく見えるが、実際は同じ大きさである。このように、黄色(あるいは赤色)が膨張色、青色が収縮色と呼ばれることが多い。この概念は日本のアートやデザインでは一般的であるが、日本国外ではあまり聞かれない。

produced by Akiyoshi Kitaoka 2006 (Aprl 13)

「逆」膨張色・収縮色

背景を白に変えると、逆に青色の正方形が黄色の正方形よりも大きく見える。つまり、膨張色・収縮色は色特有の現象ではなく(Oyama and Nanri, 1960)、光滲現象(irradiation)(下記)か、輝度コントラストが高いものが大きく見え、低いものが小さく見える現象によるものと考えられる。

produced by Akiyoshi Kitaoka 2006 (Aprl 13)

Oyama, T. and Nanri, R. (1960) The effects of hue and brightness on the size perception. Japanese Psychological Research, 2, 13-20.

光滲現象
irradiation

白の正方形が黒の正方形よりも大きく見える。明るい領域が暗い領域に進出するように知覚される現象として昔から知られている。

produced by Akiyoshi Kitaoka 2006 (Aprl 13)

北岡明佳のコメント: 一般には、進出色・後退色、膨張色・収縮色、暖色・寒色といった用語が混同して使われることが多いが、よく観察するとそれぞれかなり違うカテゴリーであることがわかる。


「色立体視のウインドウ」

黒いランダムドットが青いランダムドットよりも手前に見える人が多い。しかし、その逆に見える人も少なくない。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2005 (December 8)

cf.
Faubert, J. (1995) Colour induced steropsis in images with achromatic information and only one other colour. Vision Research, 35, 3161-3167.
Faubert, J. (1994) Seeing depth in colour: More than just what meets the eyes. Vision Research, 34, 1165-1186.


「白い格子と黒いディスク」

格子がディスクの手前に見える人が多分多い。格子の交点の白い雲状の部分に黒い点が見えるのは、きらめき格子錯視(scintillating grid illusion)あるいはバーゲン錯視(Bergen illusion)である。ついでに言うと、まばたきを続けるときらめき格子錯視が見えない! 白い線が黄色く見えることもある(遠隔色対比?)。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2005 (11/18)

まばたきのやりすぎには注意して下さい。まばたきは網膜に振動を与えることになるので、例えば網膜剥離や眼底出血の危険因子を持っている人には危険です(強い近眼の人、高血圧や糖尿病の人は要注意)。


「赤い標的」

赤い丸が手前に見える人が多い。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2005 (6/30)


「ハゴロモギク」

花びら先端が手前に見える人が多いと予想される。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2005 (4/6)


「宇宙語会話装置」

リングの縁が手前に見える人が多いと予想される。目を動かす(サッカードする)たびに、中の霧のようなものが動いて見える錯視あり。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2005 (4/6)


「古代生物」

リングの中央部分が手前に見える人が多いと予想される。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2005 (4/6)


色立体視1


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