他者に影響される位置知覚

福田玄明・植田一博

東京大学大学院 総合文化研究科広域システム科学系

 

   ムービー1をご覧ください.赤いボールが2度移動します.一度目は斜め上方向へ,2度目は斜め置く方向に動くように見えると思います.しかし,実際にはこの2回の移動は全く同じ位置への移動で,ボールの位置,大きさ,テクスチャなどは2回の移動において同一です.ボールのそばに現れる人のようなもののみが異なっています.

 ここでは,他者の指差し行動,視線方向がボールの位置を決定する手がかりとして用いられていることが示唆されます.こレラの手がかりは他者の意図推定,赤ちゃんの言語獲得において,重要な行動といわれていますが,指差し,視線から位置を読み取るだけではなく,我々は指された位置にものを見るという逆の推測もしているのかもしれません.

錯視コンテスト2009

 下に視線方向のみによる,同様のムービーを載せます.ムービー2では,上下方向,ムービー3では奥行き方向にボールが動くのが見えると思います.ボールの動きは二つのムービーで同一です.効果はムービー1よりも弱くなりますが,視線方向だけでも,ムービー1と同様の効果が観察できます.

 我々は,曖昧な情報に対して,他者の行動を参考にしているのかもしれません.

ムービー1

ムービー3

ムービー2