錯視やだまし絵の作品・デザインの「知的財産」に関する北岡の見解

2018年3月16日より


2018年3月16日の著作権侵害案件に関する報道等を聞いて、錯視やだまし絵に取り組む方の中には心配になられる方もいらっしゃると思いますので、私が制作した錯視やだまし絵の作品・デザインの「知的財産」の取り扱いに関する私・北岡明佳の見解を以下に示します。ここでいう知的財産とは、学問的な名誉著作権から構成されるものとさせてください。

1. 錯視自体には著作権はないと考えます。丸や四角のようなものだと思います。

2. しかし、錯視は誰かが発見・指摘・開発・報告等をしたものなので、特定の錯視をデモするデザインを公開する場合は、適切なクレジット*1が必要と考えます。自分が新しく発見したと考える錯視の場合は、自分が発見者であると明示的に主張することがよいと思います。しかし、非明示的なやり方ですが、それらのクレジットを省略することでも、その主張(自分が発見したという主張)をすることができます。逆に言えば、クレジットを省略するということは、自分が発見した錯視であると主張することになります。このため、「よく知らないから」とクレジットを省略して、他者が発見・指摘・開発・報告等をした錯視あるいはそのデザインを自分のデザインに取り込みますと、知的財産の侵害になる可能性があると思います。ただし、それだけでは、学問的な名誉の侵害なのか、著作権の侵害なのかは決まりません。

*1 原典となる文献やウェブサイト等を引用すること、その錯視の発見者の名前等を示すこと、あるいは正式の錯視名や特定の錯視名が知られているならそれを表示すること

3. 作品やデザインには、自然発生的に著作権があります。その権利を発生させるために、どこかに登録する必要はありません。それらがその人が創った新しい著作物であると他者から(究極的には裁判所から)認識されれば十分です。すなわち、錯視の作品やデザイン、だまし絵の作品には著作権があります。インターネットにおいて錯視やだまし絵の作品がクレジットなしで流通しているのをしばしば見かけるからといって、著作権が放棄されたものであるとは限りません。

4. 錯視は何らかのデザインで表現する必要がありますから、その錯視の表現に必要な最小限のデザイン(基本図形)には著作権はないと解釈するべきところと思います。もちろん、基本図形を模写して公開する場合でも、適切なクレジットは必要です。

5. 私は、私の錯視の作品・デザインについては、商業的目的でなければ、適切なクレジットを付ければ、使用料なしで使用して頂いてよいとしております。非営利的目的、すなわち教育目的(学校の授業で使う)、研究目的(研究用の材料・刺激として使う)、個人使用目的(PCの壁紙にする)等の場合はOKです。対照的に、商業的使用の場合は、使用料の交渉を経て、使用許諾をします(使用目的によっては許諾しないことがある)。教育産業で用いたいという場合は、教育目的ではなく、商業的目的として扱います。「教科書の中で取り上げたい」という場合は対応が分かれ、視覚や心理学や神経科学等の学問の材料として取り上げるのであれば教育目的ですが、単にキャッチーなイラストとして採用したいという場合は商業的目的として扱います。

2018年3月16日(金) 立命館大学総合心理学部 北岡明佳


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