2021年6月28日(月)4限(14:40~16:10)
2021年度第3回総合心理学コロキウム(オンライン)

並置混色と色の錯視

立命館大学総合心理学部 北岡明佳

since June 23, 2021  


(1)静脈が青く見える錯視


「肌色変換による青いミニ」

左の画像では、青く見えるボディの画素は青くなく、オレンジ色の色相である。右の画像がオリジナルの写真。2021年6月20日(日)に、ローザンベリー多和田(滋賀県米原市)で撮影。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2021 (June 22)



「静脈錯視:腕」

青白く撮れた写真の場合でも、この手の青く浮き出て見える静脈は物理的には青くなく、彩度の低い黄色かオレンジ色であった。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2014 (April 24)


「静脈錯視:手の甲」

この手の青く浮き出て見える静脈は物理的には青くなく、ほぼ灰色あるいは彩度の低い黄色であった。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2014 (April 24)


Vein images show unique histograms of RGB values, in which they lack high or low values.


This histogram resembles that of the color illusion based upon additive color change.

histogram equalization↓  ↑additive color change

The hypothesis of "histogram equalization" proposed by Shapiro et al. (2018) can explain this color illusion. We think that the mechasnim of histogram equalization contributes to color constancy.

Shapiro, A., Hedjar, L., Dixon, E., and Kitaoka, A. (2018). Kitaoka's tomato: Two simple explanations based on information in the stimulus. i-Perception, 9(1), January-February, 1-9. PDF (open access)




「肌色変換による青いミニ」
(色彩学会カラーデザイン作品版)

左の画像では、青く見えるボディの画素は青くなく、オレンジ色の色相である。右の画像がオリジナルの写真。2021年6月20日(日)に、ローザンベリー多和田(滋賀県米原市)で撮影。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2021 (June 22)



(2)同じ色配列が白と黒に見える錯視


「RGBで白と黒」

左の絵の髪と服は白く見え、右の絵では黒く見えるが、同じRGBの縞模様である。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2016 (August 15)

拡大画像


原図


動画表現


cf.

「白と黒」

左の絵の髪と服は白く見え、右の絵では黒く見えるが、同じ輝度の灰色である。左は乗算的色変換(透明変換)、右は加算的色変換(半透明変換)。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2018 (May 28)



(3)色相の錯視であるムンカー錯視

「水色と黄緑の渦巻き」

水色の螺旋と黄緑の螺旋があるように見えるが、どちらも同じ色(r = 0, g = 255, b = 150)である。この色の錯視はモニエ・シェベル錯視に近いと思うが、彼らの理論には合わないのかもしれない。

Copyright A.Kitaoka 2003



「錯視黄光背のハート」

錯視的黄色がハートの周囲に見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2020 (March 28) (uploaded July 10, 2020)




(4)混色には2種類ある

加法混色(左)(ディスプレーなど)と減法混色(右)(印刷など)

加法混色は、「キャンバス」は黒(K)。原色は、赤(R)、緑(G)、青(B)。赤と緑の混色で黄色(Y)が得られ、緑と青の混色でシアン色(C)、青と赤の混色でマゼンタ色(M)が得られる。赤と緑と青を混色すると、白(W)が得られる。

減法混色は、「キャンバス」は白(W)。原色は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(黄色)(Y)。シアンとマゼンタの混色で青(B)が得られ1、マゼンタとイエローの混色で赤(R)、イエローとシアンの混色で緑(G)が得られる。シアンとマゼンタとイエローを混色すると、黒(K)が得られる2

1 白から赤を取り除いた色(シアン)と白から緑を取り除いた色(マゼンタ)を合成することで、白から赤と緑を取り除く効果が得られ、青が見える。
2 現在の印刷では、シアンとマゼンタとイエローを混色した時、しまりのある黒が得られないので、別途黒インクが装備されていることが多い。


(5)モザイクと減色による色彩


モザイク画像の例(1ブロックは、20 pixel x 20 pixel。減色はナシ)


27色に減色した例(色はRGBそれぞれ3階調。モザイクはナシ)


125色に減色したモザイク画像の例(色はRGBそれぞれ5階調。1ブロックは、10 pixel x 10 pixel)


オリジナル画像(北海道・相生鉄道公園・2020年10月撮影)



(6)2つの並置混色(原色を用いたモザイク)
並置混色 ≒ モザイク


加法混色画像の例


減法混色画像の例


加法混色画像の拡大図

減法混色画像の拡大図


並置混色における加法混色(左)と減法混色(右)

「1画素」(1つのブロック)は、3つの要素的画素(subpixel)から成る。加法混色では、キャンバス(背景)は黒で、要素的画素は、赤、緑、青である。減法混色では、キャンバス(背景)は白で、要素的画素は、シアン、マゼンタ、イエロー(黄色)である。


(7)並置混色の拡張


Mona Lisa


The elemental colors



Girl with a pearl earring


Enlarged figure of her left eye




Diagram


並置混色三種盛り。左から、RGB加法混色、RGBCMY混色、CMY減法混色。色で言えば、左の画像は、赤から黒、緑から黒、青から黒の色を使った並置混色。中間の画像は、赤からマゼンタ、緑からイエロー、青からシアンの色を使った並置混色。右の画像は、シアンから白、マゼンタから白、イエローから白の色を使った並置混色である。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2021 (May 11)


(クリックすると拡大)

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2021 (May 12)


Copyright Akiyoshi Kitaoka 2021 (May 12)


temporal color mixture
JavaScript-temporal_color_mixture-RGBCMY02.html


「RGBで白と黒」

左の絵の髪と服は白く見え、右の絵では黒く見えるが、同じRGB(赤・緑・青)の縞模様である。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2021 (May 10)


「CMYで白と黒」

左の絵の髪と服は白く見え、右の絵では黒く見えるが、同じCMY(シアン・マゼンタ・イエロー)の縞模様である。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2021 (May 10)


「左右の絵は何かが違います。何でしょう」

拡大してみると、構成している縞の色が異なる。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2021 (May 18)


拡大図


画像をクリックすると、高解像度画像が出ます。

4種類の並置混色

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2021 (May 19)


(8)並置混色の拡張・色の錯視

で赤を表現したい。




「青・黄・黒で赤」

青・黄・黒で赤が表現できる。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2021 (June 4)


「青・シアン・緑・白で赤」

青・シアン・緑・白で赤が表現できる。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2021 (June 12)


「赤く見えるイチゴ」

赤い画素はないが、イチゴは赤く見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2021 (June 12)



(左下のイチゴの先端部の拡大画像)


「赤く見えるイチゴ」

青い画素はないが、イチゴは赤く見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2021 (June 12)



(左下のイチゴの先端部の拡大画像)


「青く見えるイチゴ」

すべてのピクセルは黄色の色相であるが、イチゴは青く見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2020 (December 19)


(9)並置混色の拡張・色の錯視・その2

この勢いで、ムンカー錯視も説明できる。





ムンカー錯視の例。左上のハートは赤紫がかって見え、右上のハートはオレンジ色がかって見えるが、下のハートと同じ色である。


並置混色とムンカー錯視の連続性のデモ

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2021 (June 23)


「錯視的黄色」

右下の円の一部は黄色に見えるが、黒と白の縞模様である。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2021 (June 12)


Illusory yellow is perceived. pic.twitter.com/8jgjQglo0v

— Akiyoshi Kitaoka (@AkiyoshiKitaoka) June 12, 2021



「錯視黄光背のハート」(再掲)

錯視的黄色がハートの周囲に見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2020 (March 28) (uploaded July 10, 2020)


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2021年度第3回総合心理学コロキウム

奨学金授与式
シュレンペル レナ 先生:「オンライン心理支援は専門家への援助要請を促進するか?」
北岡 明佳:「並置混色と色の錯視」

日時:2021年6月28日(月) 4限(14:40~16:10)
場所:以下のZoomのURLから参加が可能