大学院進学希望の学生の皆様へ・私見

北岡明佳

2005/6/3


立命館大学は最近大学院充実を進めるようになってきまして、今後有力国立大学と同様に大学院進学者が増えるものと予想されます。しかし、大学院とは何か、ということがわからず進学する学生が多いようなので、余計なことながらひとこと。大学院はプロフェッショナル養成機関です。具体的な職業を意識して、勉学・研究に励むところです。大学の延長ではありません。下記は心理学専修進学予定者に向けての私見です。


大学院に進学してハッピーな人

コメント・助言
臨床心理士になりたい人。 応用人間科学研究科に進学すること。心理学専修のある文学研究科は博士課程までありますが、それを修了しても臨床心理士になるための受験資格は取れません。
具体的な職業に就くことが念頭にあって、それのために研究をしようと考えている人。 我々は精一杯援助します。
研究者になりたい人。 頑張れ。博士課程進学時に学術振興会の特別研究員をゲットできることが当面の目標です。したがって、修士課程在席時に頑張ることが必要です。立命館大学では大学院生にTAや助手の仕事をまわしてくれますが、そんなものに甘えてはいけません。年限内に課程博士を取るように。そのためには査読(審査)付きの論文が3本必要です。大学発行の紀要(論文集)は査読つき論文とはみなされませんので、そういうところに投稿しないように。現在の国際情勢から判断すると、論文は必ず英語で書くように。もちろん引用件数の多いアメリカやヨーロッパのジャーナルに掲載されることが望ましいですが、日本心理学会発行の Japanese Psychological Research でもかまいません。日本語で原著論文を書くと、よほどすばらしくない限り無視されます。つまり、何も仕事をしなかったのと同じになります。論文の書ける教員に指導を受けるように。自分の指導教員が論文を書けない人であると判断したら、指導教員を替えるように。自分の好きな研究をしたいという動機づけと、指導教員の仕事を手伝って論文を連名で出してもらうという現実的な動機づけをうまく調和させるように。就職状況はたいへん厳しいです。昔とは違って、大学院修了者は年齢順に就職順番待ちではなくなりました。実力で職をもぎ取る必要があります。
大学の先生は寝坊ができて、個人の研究室があって、夏休みや春休みがあってラクそうだからなりたい、という不純な心の持ち主。 動機はそれでもいいですよ。ただ、大学の教員になるということはまずは研究者になるということですから、上の注意事項を参考に。なお、研究所のほとんどと一部の大学は教員も寝坊できません。夏休みは研究する時間ですし、春休みは入試の仕事で見た目ほどヒマではありません。

   


大学院に進学して場違いな人

コメント・助言
もっと勉強したい人。 大学院は、待っていて勉強を教えてくれるところではありません。大学院は大学の延長ではありません。自分が実現しようとする何かのために、自ら選択して勉強するところです。
なんとなく、という人。 学費を遅滞なく払って頂けるのでしたら、何も申し上げることはございません。どうぞごゆっくり。(そういう「お客様」が今後増えると予想されるので、あんまりコケにしない方がいいかな・・・)
修士課程が終わった時点で博士課程に行くかどうか決めようと考えている人。 博士課程は研究者養成機関ですが、そんなことでは研究者にはなれないでしょう。
就職は考えなくてよいから、のんびり研究したい人。 高い学費を払ってわざわざ大学院に来なくても、大学に所属するやり方はいろいろあると思いますよ。それに大学院は講義があるから、その分時間は取られるし、いろいろ損だと思うのですが・・・
大学院を修了すると就職に有利と考えている人。 一般論としては、大学院修了者は年齢が高くなるので、一般の企業への就職は不利になります。年齢が上がった以上にスキルが上がっていることをアピールできなければなりません。

進学予定の皆様の参考になれば幸いです。

大学院への進学が決定してヒマだ、何を研鑽してればよい? という人は今のうちに英語の能力を上げておくのがよいです。もちろん、大学院に進学すると遊ぶヒマがなくなるので、今のうちに精一杯遊んでおくという方針も、長い人生を考えるとプラスでしょう。

東京大学の石浦章一先生の「Q&A 研究者になるには」のページも必見! 「質問3.留学するにはどうしたらいいでしょうか。」「(答)院生の場合は1年程度共同研究で行くことも可能ですが、研究者としては認められません。気休め程度です。」という部分が個人的には好きだなあ。