2023年9月20日(水)16:00-16:15
日本視覚学会2023夏季大会・あわぎんホール(徳島市)

色空間における色の錯視画像の画素の分布の検討

since September 11, 2023  補足資料1 --- 補足資料2 


本発表は、「イチゴは赤く見えるが、画素は赤くない」という色の錯視画像青いイチゴでもできますについての検討である。加算的色変換による色の対比的錯視の例である。



Plotted into the CIE xy chromaticity diagram. '+' shows the white point (D65). There are no reddish pixels.


cf.


"Histogram equalization" (Shapiro et al., 2018) による説明

加算的色変換による色の対比的錯視の説明としては、そういう画像は画素のRGBのヒストグラムのレンジが偏っている。それらを最少値から最大値までのレンジに分布するように引き伸ばせば、元の画像が復元できる(histogram equalization)。錯視的な色は、このようにして復元した画像の色を知覚しているのかもしれない。

Shapiro, A., Hedjar, L., Dixon, E., and Kitaoka, A. (2018). Kitaoka's tomato: Two simple explanations based on information in the stimulus. i-Perception, 9(1), January-February, 1-9. PDF (open access)

最近の参考資料 SARMAC2023講演


本研究の目的

1. 色空間内において、色の錯視画像の画素の色の分布を調べる。

2. histogram equlization に相当することを色空間でできないかを検討する。


イチゴの色の錯視画像を xyY空間にプロット


色立体の表面の色のセットを用意します。

RGBcolors256x256x3_and_its_reversed.png

The color solid


検討用の色空間の選択




ここでは、垂直軸は輝度(Y)の直立したRGB色空間(リニアスケール)を選択(シンプルなので)


(value = Y (輝度) × 100)



RGB色空間(リニアスケール)


(俯角をつけてある)


直立したRGB色空間


垂直軸は輝度(Y)の直立したRGB色空間

上記色空間を選択して、加算的色変換による色の対比的錯視について検討する。



イチゴの画像


(1)全ピクセルの色において輝度を半分にした画像(50%の乗算的色変換)


RGBcolors256x256x3_and_its_reversed-MK50.png

Darkened color solid (transformed with multiplicated color change at the 50% level of black)




(2)全ピクセルの色において白との50%加算的色変換(半透明変換)をした画像


RGBcolors256x256x3_and_its_reversed-AW50.png

Lightened color solid (transformed with additive color change at the 50% level of white)




Images of transparent (darkened) transformation (left) and of translucent (whitened) transformation (right)

The white part of the left image is the same luminance as the black part of the right image.

On-line color checker


(3)色付きの透明変換の画像(シアン色50%の乗算的色変換)


RGBcolors256x256x3_and_its_reversed-MC50.png

Cyan-biased transparent (cyan-filtered) color solid (transformed with multiplicative color change at the 50% level of cyan)




(4)色付きの半透明変換の画像(シアン色50%の加算的色変換)


RGBcolors256x256x3_and_its_reversed-AC50b.png

Cyan-biased translucent color solid (transformed with additive color change at the 50% level of cyan)



参考(xy 色度図)


この色空間(輝度(Y)が垂直軸のリニアのRGB色空間)では、色立体のアフィン変換で histogram equlization と同じことができそうである。


垂直軸(輝度軸)を Y (0 ≦ Y ≦ 1)、横軸(赤・シアン軸)を A (-1 ≦ A ≦ 1)、縦軸(黄緑・紫軸)を B (-1 ≦ B ≦ 1) とする。


(1)暗くする変換(明るさの透明変換)の場合

対象の透明度を α とする(0 ≦ α ≦ 1)(透明度が高いほど暗くなる)と、



この逆行列を求める。こうなる。→


α= 0.5



(2)明るくする変換(白を一定にしての変換、明るさの半透明変換)の場合

対象の透明度を α とする(0 ≦ α ≦ 1)とする(透明度が高いほどコントラストが下がるとともに明るくなる)と、



 この逆行列を求める。こうなる。→


α= 0.5



(3)色フィルターの変換(色の透明変換)の場合

対象のRのみの透明度を α とし(0 ≦ α ≦ 1)、GとBの透明度は0とする(Rの透明度が高いほど画像のシアン色味が強くなる)と、

(行列式作成はギブアップ)


α= 0.5



(4)加算的色変換(色の半透明変換)による色の錯視の場合

対象のRGBの透明度を α として(0 ≦ α ≦ 1)、GとBの加算量を α とすると(この場合 α≧ 0.5 で錯視となる)、



Ycyan は、シアン色の輝度。この逆行列を求める。こうなる。→


α= 0.5


考察

この色空間を採用すると、色立体のアフィン変換で加算的色変換による色の対比的錯視の説明ができる。


解決できていない問題
1. 色空間が神経系に実装されているのかどうかわからない。
2. 仮に実装されているとして、どういう色空間なのかわからない。
3. 「この色空間では、色立体のアフィン変換で加算的色変換による色の対比的錯視の説明ができる」と言っても限界がある。色立体の圧縮の程度が一定以上に大きいと元の色を知覚的に再現できない。色相によっても錯視の強さが異なる。これらの限界の要因をモデルに組み込む必要がある。 (参考 https://twitter.com/AkiyoshiKitaoka/status/1702916857408426203)

補足資料1 (他の色空間にプロット)

補足資料2 (2色化した画像の話)



JavaScript programs


Akiyoshi's illusion pages







2023年9月20日(水) 色空間における色の錯視画像の画素の分布の検討 日本視覚学会2023夏季大会・あわぎんホール(徳島市)
色の錯視には色の対比的なものと同化的なものがある。本発表では、色の対比的な錯視(ターゲットの色が周囲の色の反対の色に色づいて見える現象)について取り上げる。強力な色の対比錯視としては、加算的色変換による色の錯視と、二色法による色の錯視がある。いずれも、色の恒常性現象として位置づけることができるが、透明視という観点から考えると、前者は半透明視的画像であり、後者は透明視的画像である。自然な画像の画素は、sRGBの色立体の全体に(偏りはあっても)分布しているが、これら2種類の色の錯視の画像の分布は、それぞれ特定の領域に押し込められているかのような形状となる。これらの知見の意味するところを検討する。