氏名: 福地健太郎 所属: 明治大学総合数理学部 連絡先: kentarofukuchi.org 「静止摩擦錯視」 回転する図形にノイズ画像からなるテクスチャを貼る。背景をやはりノイズ画像にした際、テクスチャが一方向にずれ続けている間は図形の回転運動は通常どおりに知覚されるが、テクスチャが静止したとたん、回転が遅くなったり、カクカクした動きになっているかのように見える現象を発見した。テクスチャの静止にともなって図形の動きが阻害されているように見える様子が、静止摩擦を思い起こさせたので、これを「静止摩擦錯視」と仮称する。 回転運動が遅くなったり止まって見えるようになる原因がどこにあるのかは今後詳しく調べる必要があるが、仮にこれが時間経過の知覚と強く関連があるとすると面白いのではないかと筆者は考えている。ただの連想だが、ぱっと時計を見ると秒針がなかなか動き出さないように見える、などといった現象とどこかでつながっているかもしれない。また、Harrison らによる、プログレスバーの動きがテクスチャの動きによって異なるように知覚される現象[1]とも通底していそうだ。 テクスチャの動きによって図形そのものの動きが異なって知覚されるという特性は、例えば鏡面反射する物体の移動速度を見誤るといった現象を引き起こしている可能性がある。あるいは、迷彩効果への応用が考えられる。 付記 1: 本効果は点滅するノイズ画像を背景とすると強い効果が得られるのだが、動画像として圧縮をかけると激しく劣化するため、投稿動画には盛り込んでいない。 付記 2: 本動画は、動画像のどこで一時停止しても、一様なノイズ画像に赤丸が一つあるだけの画像になってしまうため、これぞというスクリーンショットを作れないという欠点がある。 [1] Harrison, C., Yeo, Z., and Hudson, S. E. 2010. Faster Progress Bars: Manipulating Perceived Duration with Visual Augmentations. In Proceedings of the 28th Annual SIGCHI Conference on Human Factors in Computing Systems CHI '10. ACM, New York, NY. 1545-1548.