日本心理学会第73回大会(立命館大学)
S009 シンポジウム「遠近法的錯視を考える」
2009年8月27日(木) 9:30-10:30 ・敬学館210

える

立命館大学文学部心理学専攻 北 岡  明 佳

2009年8月23日より


1. 遠近法的錯視とは何か?



「上賀茂神社ポンゾ錯視」

2つの黒い線分は同じ長さであるが、上の方が長く見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2009 (August 22)

2006年11月29日撮影



ポンゾ錯視

2つの対象は同じ大きさであるが、頂点に近い側の対象が大きく見える。



大きさの恒常性の例(北野天満宮)

遠くにいる人物は近くにいる人物よりも網膜像は小さいが、身体が小さいようには見えない。

2005年3月14日撮影



「日心2009お琴ポンゾ錯視」

2つの人物は同じ大きさであるが、左の方が大きく見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2009 (August 11)


ポンゾ錯視やミュラー=リヤー錯視などの遠近法的錯視では、みかけの大きさとみかけの距離は必ずしも相関しない。


2. 見かけの奥行きに依存する錯視群


「目の大きさ錯視」

左右の図の両目は物理的には同じに描かれているが、左の図では自然な感じだが、右の図では不自然に右目が小さく左目が大きく見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2009 (August 17)

これは、みかけの奥行きに依存した大きさの錯視かもしれない。


シェパード錯視
(Shepard illusion or table-top illusion)

Shepard, R. N. (1990) Mind sights: original visual illusions, ambiguities, and other anomalies, with a commentary on the play of mind in perception and art. New York: Freeman. (R.N.シェパード著、鈴木光太郎・芳賀康朗訳 (1993) 視覚のトリック:だまし絵が語る「見る」しくみ 東京:新曜社)

「赤い屋根」 赤い屋根は合同なのであるが、左の屋根は右の屋根に比べて細長く見える。シェパード錯視のバリエーション。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (April 24)

「楕円の錯視」

右の楕円は左の楕円よりも細長く見えるが、同じ形である。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (July 14)


斜塔錯視
(Leaning Tower illusion)

左右の写真は右方向に傾いたように撮影した斜塔であるが、右の写真の傾きが大きく見える(Kingdom et al., 2007)。

Kingdom, F. A. A., Yoonessi, A., and Gheorghiu, E. (2007) The Leaning Tower illusion: a new illusion of perspective. Perception, 36, 475-477.


「岩船寺の三重の『斜』塔」

左の三重塔は右の三重塔よりも傾いて見えるが、同じ写真である。

写真は2008年11月12日、fMRI実験の後、K大のA先生(運動残効研究でも有名)と観光した時に撮影

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (December 22)


「錯視砦の三錯視」

この図には錯視が少なくとも3種類ある。 (1) 左の階段は左向きに、中央の階段は中央向きに、右の階段は右向きに見えるが、3枚とも同じ写真である。これは、ピサの斜塔傾き錯視(Leaning Tower illusion)(Kingdom et al., 2007)のバリエーションと考えられる。 (2) 階段の下の方は左に、上の方は右に傾いて見える。これは、對梨成一氏のゆがんだ階段錯視(skewed staircase illusion)である。 (3) 階段が上昇するように見える。 (ん、そうは見えない?)

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (April 21)


「桜の嵐電」

この嵐電は北野白梅町行きなので、後ろから撮影している。左の嵐電は右に比べてより左の方向に向かっているように見えるが、同じ写真である。

写真は2003年4月10日

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2009 (April 30)


「御室の切り通しの嵐電」

この嵐電は帷子の辻行きなので、後ろから撮影している。上の嵐電は下に比べてより上の方向に向かっているように見えるが、同じ写真である。

写真は2002年9月20日

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2009 (April 30)


「滑走路」

左右同じであるが、右の方が垂直からの傾きが大きく見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (July 14)

ピサの斜塔傾き錯視と同じメカニズム?


「箱傾き錯視」

左右の箱は同じ絵であるが、右の箱の奥は左よりも右に振っているように見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2007 (July 14)


「斜塔錯視反転図形」

開散・収斂の方向が知覚された図の奥行きによって反転する(一番下の図)。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2008 (September 29)


3. 斜塔錯視は新しいか?


グレゴリーのテーブルの錯視

左右の赤い平行四辺形は同じ形であるが、左の平行四辺形は左辺と右辺は上方に開いて見え、右の平行四辺形は左辺と右辺は下方に開いて見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2009 (July 15)

References

"a top-down distortion"

Gregory, R. L. (1998) Eye and Brain, the fifth edition Oxford University Press. (pp. 232)

斜塔錯視は基本的にはグレゴリーのテーブルの錯視のようである。


ネッカーの立方体

奥行き反転図形である。グレゴリーのテーブルの錯視が含まれている。グレゴリーの記述には、ネッカーの立方体で奥に見える正方形は過大視されると読める部分がある。


4. 「後方の過大視」をデモしてみる


「後ろにいるのがおにいさん」

左右同じ大きさの人物であるが、後方に知覚される人物(上図では左、下図では右)の方が大きく見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2009 (August 22)

「ハム」

左のハムが大きく見えるが、左右同じ大きさに描かれている。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2008 (July 16)

「干草ロール」

3つの干草ロールは同じ大きさであるが、左から大・中・小に見える。

Copyright Akiyoshi .Kitaoka 2009 (August 24)

2009年8月21日撮影

「上賀茂神社回廊錯視」

2つの干草ロールは同じ大きさであるが、上の方が大きく見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2009 (August 24)


5. 「両眼立体視による後方の過大視」*との関係は?

*これを大きさの恒常性と呼ぶ場合もある


「両眼立体視による後方の過大視のデモ」

網膜像としては同じ大きさのものでも、相対的に遠くに見えるものは大きく見え、近くに見えるものは小さく見える。

Copyright Akiyoshi Kitaoka 2009 (June 17, 18)


6. 月の錯視との関係は?


すみません。時間なくなりました。


ご清聴ありがとうございました。引き続き、鈴木光太郎先生、藤田和生先生、椎名健先生の話題提供です。


北岡明佳の錯視のページ


S009 遠近法的錯視を考える 27日午前(9:30-11:30)・敬学館210
  企画者 立命館大学 北岡 明佳  
  司会者 立命館大学 北岡 明佳  
  話題提供者 文教大学 椎名  
  話題提供者 京都大学 藤田 和生  
  話題提供者 新潟大学 鈴木 光太郎  
  話題提供者 立命館大学 北岡 明佳  

(大会ホームページからは削除されているが、プログラムには記載されている通り、大山正先生の指定討論(北岡が代行)がある)

スケジュール

9:30-9:45 北岡
9:45-10:10 鈴木先生
10:10-10:35 藤田先生
10:35-11:00 椎名先生
11:00-11:15 大山先生(北岡が大山先生のPPTを代行操作)
11:15-11:30 会場全体でディスカッション