II

前期開講・水曜1限、教室は敬学館250です。

注・このページは大学の公式ページではありません。公式ページは立命館大学2008年度オンラインシラバスです。

2008年1月17日より

2008年7月23日(水)1限、清心館549号教室にて定期試験が行なわれた。登録者数は189名で、受験者数は179名であった。試験の際に、水曜1限で15週講義になったにもかかわらず全部出席した人は答案用紙にそのように書いておくとほめます、と言ったところ、3名の受講生がすべて出席したと報告しました。すばらしい! パチパチパチ。


心理学を実験心理学(科学)と実践的心理学(教育・臨床)に分けるとしますと、前者の研究の方法を学ぶ授業です。基礎実験などの実習を行なわずに方法を学ぶのですから、かなり面白くないです。しかも、方法を知るためには、その研究分野の知識も必要となります。心理学概論を既に受講されたことと思いますが、よく理解しましたか? 実際には、この心理学研究法IIは「研究の方法という視点から見た実験心理学概論」という感じの講義になります。心理学科の学生は心理学の研究方法を身に付けていないと卒業してからシロウトさんと同じ(基礎的なこと以外の心理学の各論は本を読むだけでもかなりの部分を学べるから)となってしまいますから、この科目は半ば必修なのですが(心理学研究法IやIIIでもよい)、他学科・他学部の学生さんにはつまらない講義かもしれないことを認識して受講して下さい。とは言え、できるだけおもしろい講義を心がけます。 <2008年4月5日>


シラバス(2007年度のものを順次、改変)

講義内容 資料やキーワード
1 心理学研究法の必要性とミニ心理学概論
教科書 → 

ファンツの選好注視法 pp108-111

赤ちゃんの知覚研究法の1つ、選好注視法(中央大学・山口真実研究室のページ)

2 心理学の基礎の確認
心理学概論のミニテストをやります。

問題を出題した概論書→

3 カイ自乗検定(χ2検定)
ある心理学的テーマについて、自ら研究法を考えてもらうという課題を行なう(提出物あり)。「『血液型A型の人はまじめ』という仮説を検証する心理学研究法を考えて下さい」


χ2 の表
自由度(degree of freedom: df)
(νと表記することもある)
5%有意水準 1%有意水準
1 3.84 6.64
2 5.99 9.21
3 7.82 11.34
よく使うのは、自由度1の数値。たとえば、計算した χ2が5.25なら、自由度1の場合は、3.84より大きいので、5%有意水準で差があると結論できる。しかし、6.64より小さいので、1%有意水準で差があるとは言えない。


 配布プリント カイ2乗検定
pp. 184-187

4 カイ自乗検定(χ2検定)・その 2
(よく使われる)2次元のχ2検定

実践例(「蛇の回転」錯視と年齢の関係)

配布プリント(PDF)

5 相関

上記実践例のその後の研究法の変化(相関係数の分析に移行)

質問紙法(questionnaire method)と面接法(interview method)

評定尺度法(rating method)

連関(linkage)と相関(correlation)

信頼性(reliability)と妥当性(validity)

名義尺度、順序尺度、間隔尺度、比例尺度


 配布プリント 相関係数
pp. 70-71, 74-75

6 相関・その2
(p. 190 〜 204)

散布図

回帰(regression)

回帰直線・・・最小二乗法による。

ピアソンの積率相関係数
(単に、相関係数ということが多い)

練習用エクセルファイル (宿題)

相関と因果関係

決定係数

7
相関・その3

主成分分析・因子分析


相関係数の有意性検定

各自由度における r の有意水準
対の数 自由度 5%有意水準 1%有意水準
10 8 .632 .765
20 18 .444 .561
30 28 .361 .463
40 38 .312 .402
50 48 .279 .361
102 100 .195 .254
1002 1000 .062 .081
例えば、40対を調べて r = 0.351という相関係数を得た場合は、5%有意水準で相関があったと言える。


選抜効果あるいは切断の効果(標本抽出に偏りがあると偏った相関係数が得られること)

群合併の効果(異なる群を込みにすることは妥当ではない)

相関比

主成分分析や因子分析などの多変量解析はSPSSやSAS(ともに統計ソフト、立命館では充実している)で分析

配布プリント
1. 主成分分析
2. 葉山・櫻井(2008)心理学研究, 79, 18-26 のうち、pp. 18-21

8
主成分分析・因子分析・その2

論文の書き方


相関があったからといって、因果関係があるとは言えない。

パス解析

偏差を自乗する意味・分散の意味

軸の回転



配布プリント

葉山・櫻井(2008)心理学研究, 79, 18-26. (全部)

9 論文の書き方・その2
学術論文とはどういうものか

教材は、 葉山・櫻井(2008)心理学研究, 79, 18-26

10 論文の書き方・その3
 文献の探し方

  CiNii (サイニイ)(国立情報学研究所) ・・・日本語の論文や研究抄録を探す。
                              クズ文献を拾う可能性に注意。

  PsychINFO (心理学専攻が購入) ・・・ 英語論文を探す。英語アブストラクトのある日本語論文も探せる。
                             学外からはアクセスできない(と思う)。

  PubMed (パブメド)(NIH) ・・・知覚心理学や神経生理学の英語論文を探す。研究者には必須。
                          ただし、高次の心理現象を扱う論文は検索に引っかからない。
                          もちろん、日本語論文も検索されない。

  Find e-Journal (立命館大学) ・・・立命館大学が契約していてダウンロードできる論文を
                               ジャーナル名から探す。日本語ジャーナルもOK。

  心理学関連リンク (心理学専攻) ・・・ いろいろなリンクがあって便利。

  Webcat (ウェブキャット)(国立情報学研究所) ・・・ 全国の図書館のジャーナルや本の所蔵状況がわかる。

  RUNNERS (ランナーズ)(立命館大学図書館) ・・・ 学内の蔵書がわかる。

  Google (グーグル) ・・・ かなりレベルの高い検索をしてくれる。ただし、クズ文献を拾う可能性も高い。

  Google Scholar ・・・私が使ってみたところでは、まだまだ完成度が低い。Google検索の方がマシ。

11
統計検定の考え方


データを取って、図にする。

平均と標準偏差はなぜ必要か。

平均と標準偏差の求め方

アクセサリーの電卓を活用
エクセルを活用

正規分布

統計検定をやる理由


(正規分布が仮定できる場合の)統計検定の選び方


z と Z の違い

偏差値


配布プリント
 正規分布表 1枚
 第一種の誤差・第二種の誤差 1枚
 「現代を読み解く心理学」 心理統計学 pp.82-97 4枚
 

12
統計検定の考え方・その2


大山正先生(教科書の著者)が、6月28日(土)の「心理学史」(佐藤達哉先生)(1限)の講義にご登場! (清心館 548)

統計検定の基本的考え方→「天才は普通でない!」

一つの平均値を調べるt検定

13 分散分析(ANOVA)

t検定と分散分析


北岡の学会発表(2003年)
「渦巻き錯視の定量化」
抄録(Abstract)
発表ポスター
データと分散分析表は下に示した。

被験者間要因と被験者内要因

主効果
交互作用
多重比較

14 反応時間
単純反応時間測定プログラム

そのソースプログラム(Borland Delphi)

Windows の TimeGetTime 関数の説明

心理学専攻では、反応時間は、AVタキストスコープ(刺激制御用専用ボードの入ったパソコン) かSuperLab(心理実験用パソコンソフト)を用いることが多い。

ストループ効果の簡易実験プログラム

心的回転

遅延見本合わせ・遅延非見本合わせ

Go/No-go 課題

プライミング

ひとつだけしかない絵がある。どれであるか、なるべく早く見つける課題。

特徴検出課題
(簡単)

結合探索課題
(時間がかかる)





(試験範囲外 信号検出理論 d´(ディー プライム))


参考 2002年度の心理学統計法講義用の全ファイル



15
心理量の測定
マグニチュード推定法・評定尺度法


ミュラー・リヤー錯視の測定プログラム(調整法)

調整法
極限法
恒常法
キャンセル法
マグニチュード推定法
評定尺度法
(以上、基礎実験で使用中のもの)


明るさの対比実験プログラム(調整法)


ウェーバーの法則・フェヒナーの法則・スティーブンスの法則


「渦巻き錯視の定量化」のデータと分散分析表


教科書
(教科書ではあるが、この本に沿って講義するわけではない。ただし、この本の内容は試験範囲に入る)


大山正・岩脇三良・宮埜壽夫 (2005) 心理学研究法−データ収集・分析から論文作成まで サイエンス社


心理学の概論書(参考書)・その1

北岡明佳著 現代を読み解く心理学 丸善出版 2005年 (ISBN4-621-07544-6) 定価2100円

この本の第8章「心理統計学」を用いる。コピーを配布するが、この程度の本は全体を通読することが望ましい。

もっと情報

通読できます。臨床心理学、性格心理学、認知心理学、教育心理学、・・・といった章立てとなっています。ただし、講義内容を本にしたものなので、毎回出席する人にはなくてもいいかもしれません。著者の専門は知覚心理学のため、錯視図形が豊富に載っています。とりあえず心理学を概観したいという初学者向きです。


心理学の概論書(参考書)・その2

松田隆夫編 心理学概説 培風館 1997年 (ISBN4-563-05612-X) 定価1900円

良書です。心理学の広い範囲をていねいに網羅しています。概論書としては分量が多いのが難点かもしれませんが、1章1章は平易です。おもに立命館大学の先生方が執筆しています。内容の豊富さに比べて値段がかなり低目に設定されています。


心理学の概論書(参考書)・その3

鹿取広人・杉本敏夫 (編) 心理学 [第2版] 東京大学出版会 2004年 (ISBN4-13-012041-7) 定価2400円

わかりやすく、分量も適切な良書です。通読も可能かもしれません。構成の美しい、スタンダードな教科書です。伝統ある高木貞二著「心理学」の現代版であるという位置づけも風格があります。5章「感覚・知覚」(下條信輔先生執筆)などすばらしい。買って眺めただけで勉強できたような気にさせてくれるこの美しさが難と言えば難。


心理学の概論書(参考書)・その4

今田寛・賀集寛・宮田洋(編) 心理学の基礎 [3訂版] 培風館 2003年 (ISBN4-563-05670-7) 定価1700円

しっかりした概論書です。硬派の教科書という感じなので、心理学を文系と誤解している人には向かないかもしれませんが、自然科学としての心理学の使命感がビシビシ伝わってくる教科書です。おもに関西学院大学の先生方が執筆しています。値段が低く設定されています。


心理学の概論書(参考書)・その5

リタ・L・アトキンソン、リチャード・C・アトキンソン、エドワード・E・スミス、ダリル・J・べム、スーザン・ノーレン=ホークセマ(著)、内山一成(監訳) ヒルガードの心理学 ブレーン出版 2002年 (ISBN4-89242-681-4)  定価19950円

定評あるアメリカの心理学概論書の翻訳です。1500ページもあります。内容は平易で、具体的な実験のことなどもわかりやすく書かれています。分厚いだけに何でも書いてあるわけですが、必要なところを探し出すのは大変です。辞書的に使えます。値段の高さに難があります。


心理学の概論書(参考書)・その6

長谷川寿一・東條正城・大島尚・丹野義彦・廣中直行(著) はじめて出会う心理学 改訂版 有斐閣 2008年 (ISBN978-4-641-12345-8) 定価は本体2000円+税


研究法の参考書

1800円 + 税

この教科書を必ずしも買わなくてもよいですが、必ず他の書物で補ってください。プリントをかなりたくさん配りますが、全部は配りません(全部コピーして配ったら、著作権法違反です)。生協に置いてあります。もしなかったら、注文してください。注文することは面倒くさいことですが、黙っていたら次はいつ入荷するかわかりませんよ。

心理学実験指導研究会編 実験とテスト=心理学の基礎・実習編 培風館 1985

研究法の参考書

2816円 + 税

この本を買うと、私の講義の組み立てがわかります。やや出版年が古いですが、まだまだ大学学部での心理学の基礎教育には十分です。

心理学実験指導研究会編 実験とテスト=心理学の基礎・解説編 培風館 1985


心理学の辞書

中島義明・子安増生・繁桝算男・箱田裕司・安藤清志・坂野雄二・立花政夫 心理学辞典 有斐閣 1999年 (ISBN4-641-00259-2)  定価7140円

最新の用語もしっかり網羅した心理学の辞典の定番です。心理学の辞書・辞典にはいろいろありますが、迷わずこれを選びましょう。できれば購入していつも手にしておくのが望ましいです。7000円を超える値段は決して高くない。パラパラと眺めるだけでも勉強になります。文献まで完備していて、将来専門家になるようなことがあっても使い続けられます。


配布した正規分布表の本

ギリシャ文字

ギリシャ文字アルファベット対応表

ギリシャ文字の筆順


2007年度の心理学研究法 II のページ


北岡明佳の2008年度の講義のページ