日本視覚学会 2017年 夏季大会
2017年9月6日(水)11:00-11:20
島根大学松江キャンパス
加法的色変換による変換画像の色の恒常性
立命館大学総合心理学部 北岡 明佳 email
2018/9/2 より
実験1 イチゴの色の恒常性錯視

(γ = 1.2, α = .48)

(sRGB, α = .48)
「赤く見えるいちご」
すべてのピクセルはシアン色近辺の色相であるが、イチゴは赤く見える。加法色はシアンで、透明度(アルファ値)は48%の加法的色変換。
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2017 (September 2)

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Copyright Akiyoshi Kitaoka 2017 (March 15)
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Copyright Akiyoshi Kitaoka 2017 (September 2)

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(γ = 1.2, α = .48)

(sRGB, α = .48)
「青く見えるいちご」
すべてのピクセルは黄色の色相であるが、イチゴは青く見える。加法色は黄色で透明度は48%の加法的色変換。
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方法 (口頭で)
結果 (別ファイルで)

(sRGB, α = .15)
Do you see the strawberries of this image reddish?
— Akiyoshi Kitaoka (@AkiyoshiKitaoka) 2017年8月19日
報告者 183人中、174人が赤く見え、9人が赤く見えませんでした。

(参考 α = 50%)


(sRGB, α = .18)

(sRGB, α = .38)
実験2 イラストの目の色の恒常性錯視

(γ = 1.2, α = .48)

(sRGB, α = .48)
「目の色の恒常性(赤)」
イラストの目(虹彩)は赤く見えるが、シアン色の色相である(上の図は R138, G148, B148 で、下の図は R184, G191, B191 である)。加法色はシアンで、透明度(アルファ値)は48%の加法的色変換。

(sRGB, α = .48)
「目の色の恒常性(シアン)」
イラストの目(虹彩)は水色に見えるが、赤の色相である(R191, G184, B184)。加法色は赤で、透明度(アルファ値)は48%の加法的色変換。

(sRGB, α = .48)
「目の色の恒常性(青)」
イラストの目(虹彩)は青に見えるが、黄の色相である(R191, G191, B184)。加法色は黄で、透明度(アルファ値)は48%の加法的色変換。

方法 (口頭で)
結果 (別ファイルで)

(sRGB, α = .13)
目の色は、R240, G240, B101。

(sRGB, α = .17)
目の色は、R225, G137, B225。

考察
1. 加法的色変換による色の恒常性の強さを測定した。その結果、どの色相にも強い恒常性が見られた。色の対比という視点から考えても、これまで報告されたことのない強い錯視ということになる。
2. この色の恒常性は、色相によって強さが異なった。元の刺激が赤と青の場合(誘導色あるいは加法色はそれぞれシアンと黄の場合)に恒常性が強く、元の刺激が緑の場合(誘導色あるいは加法色はマゼンタの場合)に弱かった。
3. これらの色相の差は、原画がイチゴの場合とイラストの目(虹彩)の場合で同様であり、記憶色による影響というよりは、色の知覚そのものの現象と考えられる。
展望

乗法的色変換と加法的色変換

二色法画像

「赤く見えるいちご」
すべてのピクセルはシアン色の色相(一部灰色)であるが、イチゴは赤く見える。
Copyright Akiyoshi Kitaoka 2017 (March 9)
3種類の色の恒常性画像

加法的色変換(アルファブレンディング)による変換画像は、元の画像の色に対して頑健な色の恒常性を示す。変換画像の画素のすべてが反対色の色度になっていても、元の画像の色の恒常性を示すことがわかっている。この現象については、定量的な測定はなされていないと思われる。そこで、アルファ値をパラメーターとして、色の恒常性の強さをその閾値で測定した。刺激として、イチゴの画像を用いた。オリジナルの画像は赤いイチゴであるが、色相の変換を行ない、黄・緑・シアン・青・緑のイチゴの画像も作成し、それぞれの反対色の一様な面とアルファブレンディングを行なった。結果としては、いずれの色の画像でも強い色の恒常性を示した。たとえば、赤のイチゴの画像では、閾値はアルファ値で約15%であった。これは、全画素においてかなり彩度の高いシアン色の色度の画像でも、赤いイチゴが知覚されることを示す。一方、緑のイチゴの画像の閾値が最も高く、アルファ値で約38%であった。それでも、全画素においてマゼンタ色の色度の画像であった。これらの知見を、色の対比や記憶色の視点において考察する。
おしまい

